「スーパー・プライベートⅥ-母の唄-」/2021.4
【制作年/2021】
【発表/グループ展「声の棲み家/貸し民家プライベイト(東京)】
1階玄関 映像① 人工衛星
2階階段 映像② 母の唄
3階階段 映像③ UFO出現
+パフォーマンス
展覧会という形式によって制約された作品に求められるのは、不動と反復だ。鑑賞者を意識し、あまねく観客へ同じ体験をもたらすべく、平面や立体は不動のものとしてそこに鎮座し、機械は正常な動作を反復する。そしてまさに、ホワイトキューブよりも「プライベイト」、、この会場のような民家こそが、そのような時のあり方を生身の人間に求めてきたのだ。
日々階段を軋ませ、換気扇から外の空気を取り込み、少量のガスの気配を欲する。扉の開閉を得ては金属音を響かせ、通りを車が走れば中の人間ごと全身をぶるぶると揺する。埃をつもらせては拭き取らせ、髪の毛を溜めては掃き取らせ、台所では床から水滴を染み込ませ、浴室では蒸気を壁に含み、カビを生やしてはそれらの除去を促す。そして寝静まった人間を外気から遮断し抱き抱えては、再び朝が来るのを待つ。明日もまた、そこに建ち続けては、今日と同じ循環を渇望する。
複数の部屋は複数の人間を欲し、それらに家の形に適った連帯をもたらすことで家族を形成させ、住まうものたちの反復するパフォーマンスを司ってきた。家が家であるために。
貸スペースとして生まれ変わった現在でも、この家は、好意的に多くの人を招き入れては、いつも最後に一人残る私に呼びかけてくる。定住しろ、巣を固めよ、家族を持ち、己の役割を演じよと。
今日、この家に満ちる気配は家主によるものではない。入れ替わり出入りをする、外界の他者が形成したものである。それが膨れ上がることで、家の形をした磁場が脈打つのだ。
かつてのこの家の家主は、ここではない場所で歌を唄う。親密圏を見つめてきたまなざしのままに声を響かせ、他者との出会いの契機を生出する。
私は家に語る。貴方は最早、従来の共同体のためのそれではない。個と個が突然に対峙する、新しい棲み家だ。