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超人ザオタル(22)草原の家

2021.07.12 00:12

私はそのまま夜が明けるまで眠った。

朝方に目が覚めると、焚き火の炎が見えた。

その向こうにアルマティが座って目を閉じている。

着ている薄青の服が優しく映った。


アルマティが私に気づいた。

立ち上がって私のそばに来ると怪我の様子を確かめた。

「ほとんど頭の血は止まっているようですが、まだ腫れていますね。

足もかなり腫れていますし、他にも怪我しているところがあるかもしれません。


まだ動かない方がいいです。

私ひとりではどうしようもないので、村に帰って助けを呼んできます」

頭の布を解いてそう言うと、またそれを丁寧に巻き直した。

「このままここで待っていてください」


「余計な世話をかけてしまってすまんね、アルマティ」

私はそう言ったが、小さくボソボソとした声になっただけだった。

アルマティはそんな私を見て心配そうにうなずくと立ち上がって去っていった。

私は明けていく空を見上げて、そして目を閉じた。


どのくらいの時間が経ったのかは分からない。

数人の男たちの声が聞こえた。

私は抱えられ、何かの台に乗せられた。

身体が揺れて、荷車か何かで運ばれているのを感じた。


私の意識は薄っすらとしたままで覚めることはなかった。

感じたことはそれだけだった。

私はまた意識を失って、深い眠りの中に落ちていった。

次に気づいたとき、私は家の中のベッドに寝かされていた。


太陽の香りのする寝具に安心感を覚えた。

まだ、身体のあちこちから痛みを感じる。

それでもかなり回復しているのが分かった。

それにも増して空腹の苦痛が私を襲った。


ゆっくりと上半身を起こしてみる。

身体は固くこわばっていて、節々から痛みを感じる。

それでも動かせないほどではなかった。

少しずつ確かめながら身体を動かして、ベッドの縁に腰掛けた。


そのとき、部屋の扉が開いてアルマティが入ってきた。

「目が覚めたのですね、ザオタル。

気分はいかがですか」

アルマティは少し安堵した表情でそう言った。


「重ね重ね礼を言わなければならん。

手当をしてくれてありがとう。

本当に助かった、アルマティ」

私はそう言って、片手を胸に当てて頭を下げた。


「いいえ、大したことはしてませんから。

それに怪我をしている旅人を見つけたのなら、それを助けるのは私の務めです。

お腹が空いているでしょうから、いま食事を持ってきます。

それから、ここはパルティアの西にある私と妹のタロマティの家になります。


どうぞ気を使わずにおくつろぎください、ザオタル」

アルマティは笑顔で小さくお辞儀をすると部屋を出ていった。

その後姿を見て、それにしてもと私は思った。

誰にもすれ違うことなどなかったあの草原でこんなことがあるのか。