ECC Venezia国際建築展(5月~11月Veneziaにて)に参加して
株式会社 鎌倉設計工房
藤本 幸充
(ECC国際建築展は大学や会社、個人のアーティストが対象、国単位で開催されるベネチアビエンナーレの一環として、同時に開催されている)
http://timespaceexistence.com
https://www.instagram.com/ecc_italy/
そもそもECC Italy(ECC―European Cultural Centre)とは、馴染みがなく、一昨年、招聘の案内を受けたときは戸惑った。
参加するにしても準備や費用、コロナ渦での開催有無など、決断が必要だった。
決め手となったのは以下の招聘理由
「鎌倉設計工房の場合は添付の様な建築が ECC チームから注目されました。(現在Veneziaで展示中の画像,添付のもの)
また、べんがら顔料の使用や日本の伝統+現代のミックスもとても興味深いポイントと考えられます。
今年の展覧会では特に持続可能性、斬新的な素材、そして自然環境との相互関係が課題にもなっています。藤本様のアプローチは私たちが企画している展覧会に適していると評価されました。
鎌倉設計工房の建築スタイルや素材は外国人の観賞者の興味を引き、ベネチアの国際建築展にて是非とも紹介させていただければと考えております 」(原文のまま、記名の招待状は英語)
そうか、そういえば、私たちのクライアントには、海外での生活体験が長かった方や、ご夫妻のどちらかが外国の方であることが度々ある。海外の方の方が日本の文化を深く見、美意識を育んでいるのでは? と思うことが度々あった。
そのように感じ始めたのは北鎌倉に古民家を移築再生した北鎌倉古民家ミュージアムにかかわった2000年以降のことである。
和風の感覚であれば木部は素木(塗装をしない木)のままにするのだが、この時は古材と色感を合わせる為、新材にはべんがらを塗った、天井一面塗りたくったところもある。
すると移築前の古民家時代の縄文的な力強さが現れていた。
べんがらをたどると学生時代にかつてのべんがらの産地、岡山県吹屋を訪ねているし、30年前には陶芸家の住まいで顔料のべんがらを漆喰に混入し赤い壁を作っていた。
赤いべんがらに墨を混ぜ木部に塗ると、独得の陰影を持つ濃い紫となる。
決してなじみがなかったわけではないが、今更ながら光の当たり具合で変化するその魅力に取りつかれた。弊社のホームページ(https://www.kamakobo.com)を見、果たしてECCも魅力にきずいたのだろうか?!
思うに伝統的素材べんがらの使用は木造の魅力を引きだすことにある。
通常は壁や天井の中に隠れてしまう柱や梁、細かな根太、屋根組の母屋や垂木など、そのまま見せてべんがらを塗ると、柱や梁の角がシャープに見え、光の当たる面の裏側におぼろげな影ができる。光によって杢目が浮き上がる幽玄味もある、まさに「モダニズム+伝統のミックス」である。その点が木造である事とともに持続可能性と映る。
べんがらに焦点あて、今の感性で空間を構成してきた。今後も日本の力強い美を掘り起こし、空間に反映してゆく事に力を注いでゆきたい。その事によって、自らの持続可能性を示すことも大事にしたい。