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しのろ駅前医院

元気な高齢者、ACP(人生会議)はいつどうやって開始する?

2021.07.12 21:23

 今後の資料として保存しておきます。健康診断の結果説明の時にもそういった話し合いはできるのですね。勉強になりました。看護師の協力も得ながら、患者さんの価値観、人生観、死生観などを少しずつ把握していけるようになったら良いですね。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/jpca/202107/570939.html?n_cid=nbpnmo_fbed&fbclid=IwAR1WqnD_TJ-zVFeGOg_7BRIny-_5c-z2AwyH3S26iODlTD7p0TMAPh4mdAw


エンディングノートとして「国診協版 生きて逝くノート」を紹介されています。https://www.kokushinkyo.or.jp/Portals/0/Report-houkokusyo/H25/H25%E7%B5%82%E6%9C%AB%E6%9C%9F_%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88.pdf

(無料でダウンロード可能)



まとめ

 今回は、ACPに関して、元気な高齢者の価値観を確認する場面を紹介しました。

 ACPは、年齢、健康状態にかかわらず、成人が自身の価値観や、人生の目標、将来希望する医療やケアについて理解し、共有することをサポートするプロセスと定義され、その目標は重篤な疾患や慢性疾患を患った際に、患者の価値観や目標、希望に合った医療、ケアを受けられるようにすることとされています1)。

 ACPはいつ、どのように開始したらよいのでしょうか。一般的に、患者の希望は時間とともに変化するため、早すぎる時期に「延命治療をどうするか」といった詳細な話し合いをすると、患者の真の希望を正確に把握できない恐れがあったり、逆に遅すぎるとACPを行う前に意思を表明できなくなる可能性があることから、患者の考えや状態を考慮した上で、タイミングを逃さずにACPを実施する必要があるとされています2)。

 ACPの実践モデルとしては、図1が提唱されています3)。患者が健康あるいは病状が安定している段階では、患者の希望が変化しにくく、患者への侵襲性が高くない事項、つまり代理意思決定者を選定したり、「もし、自身の余命が短いことを自覚したとしたら、どのようなことが最も大切か、してほしいこと、してほしくないことは何か」といった患者の価値観について、理由も含めて話し合うとよいとされています。本症例では、後期高齢者健診の結果説明の際に、患者から「いやだわー、まだ長生きするのかしら……」と言われたことをきっかけに、三嶋医師は患者の価値観を確認し、ACPを開始しました。なお、延命治療といった終末期の希望に関する詳細な話し合いは、生命に関わる疾患を患っているなど、人生の最終段階について考えておくべき時期に実施すべきと言われています。

図1 ACPの実践モデル(文献3)より)

サプライズクエスチョン:「この患者が1年以内に亡くなったら驚くか」を医師が自身に問う予後予測ツールで、「驚かない」場合は緩和ケアなどを開始すべきとされている。



「国診協版 生きて逝くノート」は、自身が大切にしているものや好きなものなどのプロフィールや人生の歩み、自分に何か起こった場合の医療や介護に対する具体的な希望などを書き込み、最後に大切な人へのメッセージを残す形式となっています。無料でダウンロードできることもあり、筆者はかかりつけ患者と対話する際によく利用しています。

 日本老年医学会の「ACP推進に関する提言」に「ACPは人生の様々な過程に寄り添うプロセスである。そのため、本人の長年にわたる健康状態を把握し、家族や住み慣れた地域の医療・介護の状況について精通する『かかりつけ医』は、ACPの中心的役割を担うことが期待される」と書かれている通り、ACPの実践は総合診療医、家庭医の腕の見せ所だと言えます。読者の皆さんも、日常臨床において、多職種と協力して、患者の価値観を聞き取ることからACPを実践してみてください。

【参考文献】

1)Sudore RL,et al. J Pain Symptom Manage.2017;53:821-32.

2)Billings JA,et al. JAMA Intern Med.2014;174:620-4.

3)木澤義之 緩和ケア 2019;29:195-200.