耐久性に優れ、耐震性も向上 粘土瓦
耐久性が高く施工性に優れる
「粘土瓦」は重厚感があり、意匠性や耐火性、耐久性の高さなどから、以前は、住宅で最もよく使われている屋根材でした。瓦寿命が約50年以上と他の屋根素材より優れている上、塗装の必要が無く、メンテナンスコストを抑えられるメリットがあります。
粘土瓦には大きく分けて、表面に釉薬(うわぐすり)をかけた「釉薬(ゆうやく)」瓦(陶磁瓦)と釉薬のない「無釉薬」瓦に分かれ、釉薬瓦が主流です。釉薬瓦は、釉薬を塗ることで光沢(つや)のある表面とさまざまな色があり、和洋問わず合わせやすい瓦です。通常の釉薬瓦の製法とは異なり、還元焼成によって銀色に光らせる還元瓦も釉薬瓦の中に含まれます。無釉薬瓦は、表面に釉薬を塗らない瓦のことで、代表的なものに「いぶし瓦」があります。いぶし瓦は、和風建築で見られる最も一般的なタイプです。その名の通り、最終工程でいぶすことで“いぶし銀”の風合いを生み出しています。そのほかにも、生地をそのまま焼き上げる素朴な「素焼瓦」や、原料粘土に発色材料を練り込んだ「練込瓦」があります。
粘土瓦は、もし、ヒビなどの割れが発生しても一般的な瓦はJIS規格品なので、1枚からでも交換可能です。
商品選びのポイント
類似のセメント瓦とコンクリート瓦に注意
釉薬瓦と無釉薬は粘土の原料、形状、焼成(しょうせい)温度が変わらないため、焼き上がりの性能も変わりません。違いは瓦の表面の仕上がりとなります。また現在は販売されなくなりましたが、同じ瓦形状をしたセメント瓦やコンクリート瓦があります。これらは粘土瓦とは違い、定期的な塗装メンテナンスが必要ですが、傷みがあると塗装も難しくなります。
1分間で理解する粘土瓦
チェック1 瓦にはどんなタイプがある?
チェック2 代表的な瓦の形状
【J形(和形)】
昔ながらの日本瓦の定番。台風や地震災害にも強く、低価格と軽量化が進んだ。
【F形(平板)】
J形と比較して厚みがあり、表面も凹凸がある為に屋根面としては段差が協調されて華やかなデザインとなる。
【S形】
西洋建築とともに移入し、アレンジされた形状で、「S」はスパニッシュに由来する。洋風独特の屋根の凹凸感が魅力。
トレンド
瓦屋根は地震や台風被害が多いと言われてきましたが、全日本瓦工事業連盟では、「ガイドライン工法」(平成13年策定。瓦1枚1枚を固定する方法)で施工することで、震度7クラスの巨大地震でも安全であり、瓦が重いから家屋が倒壊するということはないという科学的な検証結果を公表しています。1枚1枚がかみ合う形状の「防災瓦」が普及するなど、瓦の耐震性能は向上しています。一方、台風による瓦のめくれやズレ落ちにもこの工法が有効であるとしています。
リフォマガ2021年2月号掲載