塗装の工程
外装リフォームの教科書 Vol.5
塗装の工程
塗装の工程は現場の状況や施工範囲、また施工会社によっても違いがあります。例えば高圧洗浄を下地補修の前にする現場と後にする現場があります。下地の劣化で屋内に水が入る心配がある場合は補修を先に行って洗浄水の浸入を防ぐ必要があるからです。このように現場の状況を考慮した上で工程を組むことが望ましく、クレーム回避にもつながると言えるでしょう。
塗装工事の所要日数は屋根塗装を含めると実働10日から15日程度だが、雨天を見越したゆとりある工程を計画しよう。塗装職人は1日に2人入るとして計画するのが一般的だ。1人の作業では日数がかかる上、万が一事故があった場合に気付く人がいないので危険だ。かといって人数を多く入れるとかえって邪魔になり、作業効率が落ちることもある。現場の状況やシーリング工事との兼ね合いなどで現場によって工程が前後、または同時進行することもあるが、乾燥時間を有効に活用するなどして効率的な計画をたてるようにしたい。
【高圧洗浄】
屋根塗装も含む場合は屋根と壁を一緒に洗浄する。サッシは鍵をかけてもらうが、塗装する雨戸は動かしながら洗浄するため鍵をかけない。壁の深いヒビやシーリングの切れ目には内部に水が入らないよう注意が必要だ。先に補修やシーリング打ち替えを行う場合もある。作業時間は壁のみの場合半日程度、屋根を含むと1日弱だが、カビやこけが多い現場ではもう少し時間がかかる。乾燥時間は季節によっても違いがあるが、乾燥を十分にしてから塗装をする。
【下地補修】
外壁のひび割れ、ふくれ、剥がれなどの処理をすること。先に高圧洗浄をする場合は、洗浄をしながら下地の不具合を確認できるというメリットがある。鉄部の塗装がある場合はケレンをしてサビを落としておく。古い塗膜を剥がす場合は表面をざらざらにして塗料がつきやすい状態にする。サイディングの場合はシーリングをこのタイミングで打ち替えることが多い。さらに下地調整時に外装材が水分を含みやすい状態かどうか確認しておくと、下塗り材の必要量をチェックできる。
【養生】
塗装工事でいう「養生」は、塗らない部分に塗料がつかないように、開口部などをビニールで覆いかぶせる工事のことをいう。風でバタバタ音がしないようにビニールをぴんと張ることがポイントだ。またビニールを固定するテープの貼り方は塗装の仕上がりに影響するので気を付けたい。養生を下地補修の前にするか後にするか、また面ごとに同時進行で行うかは着工後に変更しないようにしたい。開口部の養生をすると窓が開かなくなるため、予告なく予定変更すると施主に迷惑をかけてしまう。
▲養生をする主な箇所
【下塗り】
下塗り塗料の役目は主に3つ。ひとつは中塗り・上塗り塗料を外装材に定着させる役目。2つ目は塗装前の外装材は水分を吸い込みやすいため、予め下塗り塗料を吸い込ませて状態を安定させる役目。そうすることで中塗り、上塗り塗料の表面がなめらかに仕上がる。3つ目は外装材の色を隠す役目。下塗り材を塗ると下地が白く仕上がるため、下塗り塗料で上塗り塗料の色をきれいに出すことができる。特に水性塗料で塗装する場合、下塗り塗料の役目は大きい。また下地に合わない下塗り塗料を使うと膨れや剥がれの原因となるので注意したい。
【中塗り・上塗り】
中塗りと上塗りの塗料は同じ塗料だ。同じ塗料を2回塗るのは、1回だけでは壁面の凹みにまで塗料が行きわたらず、塗りムラになってしまうから。2回塗ることで綺麗に仕上げる。また1度では紫外線などから建物を守るために必要な厚みをもつことができない。中塗り、上塗りと2度塗ることで長期間建物を保護できるほどの厚みを持つことが出来る。屋根も外壁同様に中塗り・上塗りをする。建物の大きさにもよるが、一般的に中塗り1日、上塗り1日で進むことが多い。
【付帯部塗装】
建物に付随する細部塗装のことを指す。アルミで出来たものは塗っても剥がれてくるリスクが高いため注意を。屋根塗装をする時は棟板金の塗装も必要だ。
【検査・手直し】
塗装終了時の検査は職人と一緒にチェックをして、不具合があればその場で手直しをすると補修忘れもなく効率的だ。検査の時には、不具合を見つけた時に貼り付けるための養生テープを持参しよう。
検査は養生シートを外したあとに行い、サッシなどに塗料が付着していないか、また養生がきれいにはがれているかという点にも注意しよう。
また、サイディングのシーリング部分に足場を固定している場合は解体時に足場業者が補修することになるので、残った塗料は不要と言われても、足場を解体するまで補修する分を残しておこう。
リフォマガ2021年1月号掲載
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