論文|看護教育者のEBP実装の経験 (2018)
EBP教育の充実には、看護教育に携わる教育者自身がEBPを理解していることが基盤となります. 2018年に、南アフリカ大学のMthiyane先生らによる "The experiences of nurse educators in implementing evidence-based practice in teaching and learning" という論文が発表されました (Mthiyane, et al. 2018).
この論文では、12人の nursing educatorを対象に2017年に実施された半構造化面接の研究結果が報告されました.
・研究の目的:教育・学習でのEBP実装における看護教育者の経験を検証することでした
- Improving quality care for patients
・インタビューの分析から明らかになった themes and categoriesTheme 1. Challenges with implementation of evidence-based practice in teaching and learning
- Time constraints
- Lack of and poor access to relevant resources
- Current teaching approaches
- Lack of knowledge and skills by nurse educators
- Student characteristics
Theme 2. Benefits and/or values of EBP in teaching and learning
- Keeping up to date with current information
- Preparing student nurses to engage in EBP
- Reducing health care delivery costs
”nurse educator自身が研究を行う立場でもある場合は、自身の教育実践や学生への教育において、最新のエビデンスの必要性をより認識しやすい”といった傾向があるのかもしれません.一方で、nurse educatorが認識しているEBPの阻害要因は、臨床看護師が認識する阻害要因と共通する部分がみられました( - Time constraints, Lack of and poor access to relevant resources).
また、臨床看護師の場合、患者・家族がクライアントとなりますが、nurse educatorの場合、教育実践の対象は学生になります.例えば、nurse educatorにとっては、看護学生に対してEBPの知識スキルの習得を目指した学習の機会を提供することは、学習目標やカリキュラムと密接に関わります.一方で、"学生が研究に対して前向きに捉えていないといったEBPへのネガティブな態度が、教育・学習にも影響する"といった要因( - Student Characteristics)は、この分野の文脈ならではのカテゴリといえるでしょう.
日本では、看護教育に携わる人を対象としたEBP研究は、医中誌で調べる限りは報告されていない(2021年7月13日時点).EBP思考を育む機会の拡大と充実を目指すうえでは、本記事で紹介したような看護教育に携わる人を対象とした研究も重要です.
Reference.
・Mthiyane GN, et al. The experiences of nurse educators in implementing evidence-based practice in teaching and learning. Health SA. 2018 Nov 29;23:1177. doi: 10.4102/hsag.v23i0.1177. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6917461/