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交流分析‐人生脚本と脚本分析-その1

2021.07.13 13:56

facebook・医療法人FLATS ヒルサイドクリニック投稿記事より

交流分析‐人生脚本と脚本分析-その1

1.人生脚本

交流分析では、人が強迫的(自分で止めようと思っても不可能なこと)に演出する人生のプログラム、無意識のうちにつくりあげる人生計画を人生脚本と呼びます。

つまり、「 その人が親から獲得したり自分で感じて決めたりして作り上げた、その人だけの生き方(人生)のルールは、一生を左右するシナリオ(脚本)として描かれている 」ということを意味しています。

脚本分析では、ある種の筋書き通りに生きる人々が対象になります。親子二代(時には三代)にわたっての事故死、倒産、薬物依存、離婚などを繰り返す人々などがその例です。こうした運命強迫的なできごとも、客観的にみると、幼少期の外傷体験(トラウマ)など、親を中心とする周囲の影響のもとで生じ、その後の対人関係や他の人生体験によって強化された人生のプログラムであることがわかります。

人の心は、まったくその人だけの世界で、どのようなルールが隠されているのか詳しく分析するまで誰にもわかりません。この人生脚本は、その持ち主である本人にも意識できない深い無意識に書き込まれたものです。

つまり、人生脚本とは幼少期に、親や周りの人間とのコミュニケーションを通して「人生を、このように生きよう」と、思い込みも含め、自分で決めたパタ-ンのことです。幼児が自分の心の中や周囲に起きていることを、自分なりに解釈をして、自分で自分の生き方を決める=「幼児決断」に基づく、「人生の計画」、生き方のことです。そして、この幼児決断は年齢2、3歳から5、6歳までの間になされると考えられています。

そして、人生脚本は大きく、『勝者の脚本』『敗者の脚本』『平凡な脚本』の3つに分類されます。

『勝者の脚本』とは、自己実現へと向かう脚本のことです。

『敗者の脚本』とは自己実現がなされず、 悲劇的な結果に終わることが多い脚本です。

『平凡な脚本』は悲劇的な結果には終わらないが、成功もしない、まさに平凡な脚本をいいます。 自己を実現できず、優秀でも、「縁の下の力持ちを演じたり、一生うだつが上がらない形で、自分の持てる力をフルに発揮せずに人生を終える脚本です。

『勝者の脚本』にどのように書き換えて行けるかが脚本分析の課題になります。

良く事例として取り上げられるものとして、マリリンモンローの人生脚本(敗者の脚本)があります。

彼女は、映画界では、代表する女優として成功者でありながら、実生活では「 幸福になってはいけない。愛を持続させてはいけない。 」という人生脚本通りに、人生に幕を引きました。本人は、死に物狂いで幸せになろうとしたにも関らず、人生脚本には強力な支配力があって、その人の人生を決定する、という実例といえます。

2.脚本分析

自分らしいよりよい人生を目指すために、人生脚本を分析していく作業を『脚本分析』といいます。

脚本では、幼少時に親の○Cから子どもの○Cへの言語的あるいは非言語的に伝えられた脚本の基礎メッセージを『禁止令』と呼びます。例えば、親から「お前がいるから、お母さんは離婚できないのに(お前さえいなければ)」と聞かされたりし、息がつまるほどの虐待を受けて育ったとすると、子どもは「依存するな(甘えてはいけない)」、あるいは「生きていてはいけない」という破壊的なメッセージを受けることになります。これを受けて、子どもが「私はいつか死のう。そうすれば、母は私を愛してくれるだろうから」といった決意をすると、親の禁止令は子どもの人生全てに支配力を発揮することになると考えられるのです。(親の禁止令らを元に幼児決断がなされます)

2‐1.禁止令

12の禁止令があるとされています。これはグールディング夫妻(再決断療法の創始者)によって交流分析の禁止令が臨床的に研究され、まとめられました。

12の禁止令とは以下のとおりです。

①存在してはいけない:「お前なんか産まなければ良かった」「消えてしまえ」等、親より存在を否定され続けますと、大人になるにつれ、自殺願望が強かったり、強い自己否定感より社会生活、対人関係が築けず、ひきこもってしまうこともあります。社会、家庭における居場所、安心して存在出来る場所がないのです。

②成長してはいけない:過保護の場合です。何でも先回りしてしまう親がいると子dもは自発的に考え、体験することが出来ません。子どもは何もせず親の言いなりになっている方が親も喜ぶので、成長しないでおこうと幼児決断をします。

また、「成長するな」と「何々するな」は似ています。

それは、成長するには様々な体験が必要であり、何々するなというものを持っていますと、当然何も人生体験をせず、結果として成長しないことにつながるのです。

③男(女)であってはいけない:親が望んだ性と違う性で生まれた子どもに対して与えられます。男子には女の子の格好、女子には男の子の格好をさせたりと、また、親が自分の性とは逆の性行動をすると喜ぶので、大人になった時、自分の性を受け入れられなくなってしまうかもしれません。

④子どものように楽しんではいけない:子ども時より年齢相応以上の態度行動を求められた場合です。兄弟の面倒をみること、家事手伝い等を要求され、子どもからのびのびする自由を奪ってしまいます。大人になっても能力以上にガチガチに頑張ってしまったり、自由なのびのびとした心を失ったままです。

子どもであるなという禁止令ではありますが、常に相応以上に頑張らなければならない等の~べき論でもあります。

⑤健康であってはいけない:子どもが普通に健全に過ごしている時には親は構いませんが、病気等になった時は熱心に世話をします。子どもからすると病気の時だけ親から大切にされるので、健康でない方がメリットがあることとなってしまいます。疾病利得。

⑥重要な人物になってはいけない:いつも抑えつけられて、自己主張が許されない家庭。「お前にそんなむずかしいことができるものか」などと、さまざまな形で値引きされて育つ子。

⑦成功してはいけない:「お前は何をやってもダメだな」「そんなに遊んでばかりいると、お父さんみたいな(うだつの上がらぬ)人になるわよ」など。このほか、何事も貫徹せずに中途で投げ出してしまうとか、不用意に事業を進め結局失敗する、といった親の姿を何度も見ながら育った子どもら。

⑧みんなの仲間入りしてはいけない(=所属するな):「ああいう人たちと口を聞いてはいけません」「あんな子をうちに連れてくることは許しません」「運動部なんかに入ったらいい大学に入れませんよ」など。最近、成績のいい子の中に、友人ができないから勉強に励んでいる子がいることに注意しましょう。一番になれば、みんなの注目を集め、友人ができると思っているのが本音です。親が非社交的な場合も、この禁止令が入ってゆきます。

⑨愛してはいけない(信用してはいけない=親しくしてはいけない):日頃愛情表現がほとんど見られない家庭。離婚、別居、交通事故、病気などで幼いころに親を失う体験。養育者が何にも変わって、たらい回しにされて育った子ども。「男はみなケダモノよ」といった教育など。

⑩実行してはいけない:「いじってはだめよ。お前は必ずこわすのだから」「危ないからナイフで鉛筆をけずるのはいけません」など、試行錯誤や冒険的な行動を全て禁止する場合。また親も有限不実型の評論家で口は出すが手は汚さない、といった態度を取る場合。将来、子どもが石橋どころか、鉄の橋まで叩いて渡るような消極的な人間になっても不思議はありません。

⑪考えてはいけない:自分の発言や考え方を無視されたことによります。そのため、自分で考えて決めることができずに、他者に依存します。

⑫自然な感情を表してはいけない:感情表現を制限されたことにより、人が本来持っている基本的な感覚や感情すら、認識・表現が困難になります。

2-2.拮抗(きっこう)禁止令の中の「5つのドライバー」

①他人を喜ばせろ(自分の要求を後にせよ)

②一生懸命にやれ(満足するな、楽しむな)

③急げ(自由であるな)

④強くあれ(感情を表にだすな)

⑤完全であれ(ありのままであるな)

「禁止令」が前面にでてしまうと、生きることが難しいので、「禁止令」を打ち消す作用のある「拮抗禁止令」(T.ケーラーによる)というものがあります。禁止令の場合は「~するな」でまとめられていますが、拮抗禁止令は「~しろ」といった命令形でまとめられます。

これは、言葉を話すようになった子どもが養育者(親)からの命令を受けて身に付けたものです。その中で脚本に強く影響して「なぜかいつもこうなる」というような行動させるものを「ドライバー」と呼びます。

子どもは12の禁止令によってさまざまなことを否定されても、5つの拮抗禁止令を守っている限り存在を許されていると判断します。

それは、努力し続けることが自分自身の証明だと思い込んでしまうことに繋がり、大人でもその影響がみられる人は少なくありません。

子どもは、養育者(親)に無視されたくない、良いストロークがほしいということから行動が形成されます。禁止令の中に「存在するな」というものがあります。

これは養育者が「こんな子いらなかった」「この子がいなければ…」など、口では言わなくても思いとか態度で子どもが感じ取ってしまう禁止令です。

たとえばこの禁止令があり、それを拮抗するためのドライバーが「強くあれ」であったとします。「存在するな」が無意識の中にあり、生活の中で泣いたりせず、強くある事で親に認められるという経験を繰り返しします。そうすると「強くあれ」が強化されて、感情を表に出すことができなくなります。

そのようにして成長していき、何かの大きな局面で「強くあれ」だけで感情を出さず頑張り、それが社会で認められなかった時、「存在するな」の禁止令が前面にでてきてしまい、

「自分は生きていてはいけない」という気持ちになってしまうというのです。

この分析をし、5つのドライバーを楽なものに変えて人生脚本を書き換えていくように援助していくのです。

敗者・平凡な人生脚本から脱出するには、①「脚本チェックリスト」などに従って自分の生育歴を系統的に調べ、親からの禁止令やドライバーを『許可書』に書き直す方法があります。また、②親の禁止令に対して自分が幼児に決断(=幼児決断)した状況を再現し、今より建設的な生き方を選択する『再決断療法』などがあります。次回は、敗者・平凡な人生脚本からのこれらの脱出方法を取り上げていく予定です。

参考文献『人生ドラマの自己分析』杉田峰康著(創元社)、『交流分析のすすめ 人間関係に悩むあなたへ』杉田峰康著(日本文化科学者)