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交流分析 杉田峰康

2021.07.13 14:56

http://www.koryubunseki.com/category/%e4%ba%a4%e6%b5%81%e5%88%86%e6%9e%90%e7%94%a8%e8%aa%9e%e9%9b%86/%e5%9f%ba%e6%9c%ac%e7%9a%84%e6%85%8b%e5%ba%a6/ 【CATEGORY ARCHIVES: 基本的態度】より

三つのP 3P’s

脚本分析において、クライエントが再決断を行い、治療契約を達成するのを援助するにあたって、有能な治療者が用いる次の三つの基本的な治療概念をいう。 

1. Permission(許可):クライエントに幼時の禁止令を放棄…

2. Protection(保護):ラケット、ゲーム、脚本を捨てた後の恐怖や混乱からクライエントを守る。

3. Potency(能力):禁止令に優る効力をもって許可を与え、困難な治療状況に対応する力を示す。

→許可、保護、能力

スタンプ stamps

「これだけ怒りをがまんしたのだから、お前を殴るのは当たり前だ」といった例のように、自分の行動を正当化するために溜め込む感情をいう。

スタンプとは、もともと米国のスーパーマーケットが客にサービスする色つきの小さな景品券(シール)で、それを貼ったノートが一杯になると現品に交換できるものをいう。

日本ではこの種のスタンプ集めは日常化していないので、銀行や郵便局の積立預金が満期になるのを考えるとわかりやすい。しばらく積み立てられて、後日、行動化される感情は、

1.不快感情(ラケット感情)

2.良い行動

の2種類に交換される。前者は冒頭の例のようなゲームの結末感情であり、後者は定年退職後、やっと短い旅行に出かける人などに見られる。スタンプは否定的な構え(not OK)を持ち、自分の行動に責任をとろうとしない人によって集められる


自他否定 I’m not OK,You’re not OK.

基本的構えの一型で、人生は無価値なもので、何ら良いことはないと諦めている人がとる構えである。 

この構えに伴う感情は絶望感や虚無感で、自殺、他殺、精神病などに至る可能性を秘めている。

発達的に見て、人生のごく早期に親の愛情や注目を感じ取る感覚にかけていたり、あるいは、そのような素質はなくても、手痛い愛情剥奪の体験などから、基本的信頼感に大きな欠陥が生じる場合などに、この構えができるとされている。


自他肯定 I’m OK,You’re OK.

基本的構えの一型で、交流分析が目指す人生態度。 自分の価値と他人の価値を認め、様々な問題の解決にあたって、“一緒にやっていこう”という姿勢でのぞむ。

この構えをとっている人は、ストレスを解消するために閉鎖的になったり、他人を排除したり、あるいは自殺したりはしない。

ともにいると安心感を覚える人である。この構えは、人が成長過程で必然的にたどりつく状態ではない。個人が意識的な決断のもと、自己を訓練することによって体得するものである


自己否定・他者肯定 I’m not OK,You’re OK.

基本的構えの一型で、劣等感に悩んだり、憂うつになりやすい人がとる構えである。この構えをとる人は、自己卑下の気持ちや消極的な態度のために、自らを「OKである」とする人々といることが苦痛になり、そこから逃避するのが特徴である。

他の行動様式としては、他人の中に陰性の感情を挑発することによって、自分がOKでないことを相手に確認させる。

また、自分のストロークの欲求を満たす手段として、P的な人を求めて生きる人もいる。

この立場をとる人が演じる代表的なゲームは、「キック・ミー」である。


自己肯定・他者否定 I’m OK,You’re not OK.

基本的構えの一型で、支配的で疑い深い人がとる構えである。この構えの著しい特色は、自分の肌に合わぬものを排除しようとする傾向である。

日常生活では、自分の配偶者や子供を無知だとあざ笑ったり、他人の欠点をことさら取り上げたりする人にこの構えが見られる。

また、相手をOKでないと見なして、押しつけがましい援助の手を差し伸べるケースもこれである。心理学的には、この構えの特色は投射である。

当人は自己の欠点を見ることを拒否し、都合の悪い出来事が起こると、他者を悪者に仕立てることが多い。


基本的構え basic positions

幼少時に親との間で体験したストロークが主体になって培われた自己と他人に対する態度をいう。

人は、一度ある基本的な構えをとると、それを強化することによって、自己の世界を予測可能な状態にしておこうとする。

そのうち、否定的な(OKでない)構えを確認しようとする行動がゲームとなる。基本的構えは、「基本的立場」とも呼ばれ、次の四つがある。

1.私も他人もOKである(自他肯定)

2.私はOKでなく、他人はOKである(自己否定、他者肯定)

3.私はOKだが、他人はOKではない(自己肯定、他者否定)

4.私も他人もOKでない(自他否定)


構えへの欲求 structure-hunger

交流分析では、人が自分自身と他人について、どう感じ、どんな結論を下しているか、ということを「基本的構え」と呼ぶ。このような基本的構えの正当性を生涯にわたって立証したいという欲求をいう。

基本的構えは「人生の立場」あるいは「人生態度」とも呼ばれ、OKまたはOKでないという言葉で表現される。構えへの欲求は、刺激への欲求、構造化への欲求とともに三つの欲求として、人が交流を求める目的と考えられている。

OK牧場 OK corral

基本的構えの四つの交流の様式に関連させて、アーンスト,F(Ernst,F)が作成した図をいう(図)。

人は子供時代に身につけた基本的構えを、成人後の生活の中で特定の交流様式として反映する、という考え方がもとになっている。

人は実際にこの一つの立場に24時間とどまっているわけでなく、四つの間を移行するものである。

したがって自分のAを駆使して、自分が望む交流様式を選ぶことができるのである。


http://www.koryubunseki.com/category/%E4%BA%A4%E6%B5%81%E5%88%86%E6%9E%90%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86/%E8%84%9A%E6%9C%AC%E5%88%86%E6%9E%90/ 【 脚本分析】より

リペアレンティング re-parenting

クライエントを発達段階のごく初期まで退行させて依存的状況(anaclitic situation)をつくり、共生的関係のなかで母親的ケアを与え、再び各発達段階を通過することによって人格の再統合をはかる治療法をいう。

TAの領域ではシフ,J(Sciff,J)が患児とともに生活したり、養子にとる方法で実践している。

本邦では、1960年代に、九州大学精神科において西園昌久が、薬物療法と精神分析療法を併用した「依存的薬物精神療法」(anaaclitic pharmaco-psychotherapy)を開発し、医師・看護婦のチームによるアプローチによって見るべき成果をあげ、内外に報告されている。

主要な治療機序は患者による治療者のとり入れと考えられている。


幼時決断 early decision

幼時に自分、他人、世の中について、子供が出す結論をいう。

人生脚本に深く関係する幼児決断は、主として非言語的レベルで行なわれ、次のような特徴をもつ。

1.親の破壊的な力の元で生き残るための妥協(例:親のストロークを保持する)

2.具体的で魔術的な思考に基づく(例:死ぬと愛してもらえる)

3.全体的で大ざっぱな内容(例:二度と誰も信じない)

再決断派によると、脚本のもとになる禁止令は親の「子供の自我状態」(C)から子供のCに発信されるが、子供がそれを受け入れる(決断する)ときだけ、重要な意味をもつという。

また、子ども自身が自分で禁止令を与え、それを選択、決定することもある。

幼時決断を探って明確にした後、それを放棄して新たな問題解決方法を創造していくのが、再決断療法である。


「無計画」式の脚本 The “open end” script

Pの指示を忠実に守って、義務を果たすことだけを目的に生きてきた人が、その後、どのように生活時間を構造化したらよいかわからなくなるケースに見られる脚本。

子育てが終わったり、定年退職を迎えた人が、生きる目的を喪失して、うつ病に陥る場合など。


ミニ・スプリクト(ミニ脚本) miniscript

数分間、ときには数秒間のような短時間に起こる一連の行動で、人生のパターン(脚本)を強化する結果になるもの。

このうち、非建設的な脚本と連携するタイプは次の四つを含むもので、ドライバーを始点として図のように動く。

1.D:ドライバー(対抗禁止令)

2.S:ストッパー(禁止令)

3.VC:Cの反撃(ACの反抗的部分)

4.FMP:最終結末(自他否定的な構え)

ミニ脚本は、脚本を一つの行動システムととらえ、その誘因、原因、持続因、結果の各因子の相互関係をあきらかにしたものである。

とくに、対抗禁止令が禁止令の引き金、あるいは誘因の役割を果たすという考えが、理論の中核となる。


「…まで」式の脚本 the “until” scrpt

苦労性の人が演じる脚本で、あることを達成するまでに幸福になるまい、という類の幼時決断に従って生きているもの。

「親を楽にさせるまでは…」とか、「子供が結婚するまでは…」といった条件を自分に課して、本当の自分を生きようとせず、真の自己実現を回避しているもの。


ホットポテト hot potato

イングリッシュ,F(English,F)がエピスクリプトの内容を示すのに使った用語。

ゆでたてのジャガイモを手に持ったとき、熱いのですぐに隣の人に渡してしまうと、その人がまたこちらにジャガイモを手渡してくる、という繰り返しが行なわれる。

エピスプリクトもこれに似て、親が避けたい脚本のメッセージを、何代にも渡って暗に子供に受け継がせていくことが多い。


防衛機制 defense mechanism

防衛とは、交流分析的に言えば、ストローク(愛、承認)の飢餓、自己価値(肯定的構え)の低下、「批判的な親」(CP、超自我)の非難、また、それらがもたらす不快感情(ラケット感情)など、心の危機を防衛するために、自我が活動的に戦っていることをいう。

防衛機制は、心の危険を払いのけるために自我機能が用いる方法である。

精神分析では10ないし15の防衛機制を識別しているが、交流分析ではそれらをP、A、Cを用いて記述することが可能となる。

ファンタジー(空想、幻想) fantasy

人が想像の中で行なう願望充足の一つの方法で、ふつう白昼夢の形をとる。

意識的なファンタジーの内容とセックス、復讐、失敗、償い、暴力、破壊行動、大成功、名声、承認などが代表的で、精神分析では快感を呼ぶ感覚と、他者との経験の記憶とが結びついた結果として起こると考えられている。

また、ファンタジーには無意識なものがあるが、それは主に精神・性的発達段階に発言する本能衝動や、その防衛に関連した空想的なシナリオや表象である。

交流分析・ゲシュタルト療法でもファンタジーは重視されており、内的にシンボルを用いる精神的活動とされる。パールズ,Fは、ファンタジーは、いわば縮図の上に現実を再現して理解の手がかりとする精神的活動であるという。

例えば、人が何らかの問題に遭遇したとき、空想をめぐらして行動を決める手がかりとする。

その場合、「て(・)こ(・)の原理」に似て、わずかな内的エネルギーの消費で、結果的に効率のよい、大きなエネルギーを生み出すことができるのである。

再決断療法の過程では、楽しい空想(FC)を駆使して問題解決を図る「イメジャリー法」が用いられている。


非常口(抜け穴) escape hatch

耐え難い状況にあるとき、「子供の自我状態」(C)の順応した子供(AC)が講じようとする最後の解決策をいう。

もし事態が最悪になれば、Cは、

1.自殺あるいは自傷

2.他殺あるいは傷害

3.正気を失う(精神障害を起こす)

のいずれかに逃げ道を求める。これらの危険な非常口は悲劇的な結末を迎える脚本に至るので、クライエントはそれを防止するために、三つの口をすべて閉ざす必要がある。


敗者 loser

自分のゴールを達成することができず、思うようにならないと責任をよそに転嫁する人。

敗者の顕著な特色は、“今、この場”という時点を生きようとせず、過去の記憶や未来への不安に心を奪われていることである。

また、当人にとって、これという理由もなく、非建設的行動をくり返したり、病気で苦しんだりする。敗者の脚本は、当人の親の中の歪んだCから発進された禁止令を受け入れることによって形成される。