大阪の迷走ー❶都市モデルの喪失
大阪はランドリーやフロリダの「創造都市論」の後追いで“バルセロナ”や“ロンドン”など都市モデルを目標にするのではなく、100年後、200年後を見据えてオランダの“アムステルダム”を射程に据え、日本のプレゼンスを世界に発信するインディペンデントな文化を形成すべきである。
パビリオンでの展示されるー
「人類の健康・長寿への挑戦」の滑稽
大阪府が誘致をめざす2025年の国際博覧会(万博)について、政府は東京五輪・パラリンピック(20年)後の経済活性化策として立候補の検討に入った。かつて東京五輪から大阪万博への流れは高度経済成長に弾みをつけた。大阪府の基本構想素案によると、万博は「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマに、25年5月から10月、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催する。3千万人の来場者を見込み、経済波及効果は約6・4兆円としている。
菅義偉官房長官は会見で「日本の魅力を世界に発信する絶好の機会だ」と前向きな姿勢を示した。誘致方針が正式決定すれば、来春にも博覧会国際事務局(BIE)に立候補を届け出る。パリとの争いになるとみられる。
「東京が2度目の五輪なら、大阪も2度目の万博を」。アクセスなどインフラを整備して、万博後の夢洲にIR(統合リゾート)の誘致をもくろんでいる。過去の乱脈政治の負の遺産である夢洲という遊休地の有効活用という目的は理解できるが、ここはもう損切りで万博やカジノなどに頼らなくても大阪の経済や都市再生の方法論はいくらでもある。
そもそも大阪万博など無意味だ。万博は19世紀後半に産業革命以降の技術文明の見本市として始まったが、今どき、パビリオンで展示を競うのは、もはやジョークとしか思えない。
大阪府市、関西経済三団体の悲願ー
周回遅れの統合型リゾート(IR)
IR誘致の経済効果試算では、年間7600億円、
9万8千人の雇用が創出されるとされている。
関西は、行政、経済界が、経済の地盤沈下、東京一極集中の傾向に流れに歯止めをかけるという課題意識を強く共有する。
大阪府市は、夢洲にIRと大阪万博の両方を誘致し、それらを連動、運命共同体として、夢洲および周辺の交通・都市インフラの整備を推進する考えだ。 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の夢洲(ゆめしま)=大阪市此花区=への誘致が実現した場合、経済効果は年間約7600億円、雇用創出効果は約9万8千人-とする試算を関西経済同友会が取りまとめ発表した。
世界で断トツの「賭博大国」ー日本
ギャンブル依存症という言葉が知られて久しいが、日本におけるギャンブル産業の状況は世界のどの国と比べても異常に思える。世界にはギャンブルマシンが約724万台あり、そのうち約460万台は日本にあるという。6割以上が日本に集中しているのである。現状でも日本は世界的にも突出した「賭博大国」であり、これ以上新たなギャンブルを増やすことなどあり得ない。カジノを導入するならパチンコの規制とのコインの表裏でなければならない。また、最も重要なマネーロンダリングの懸念は経済的な成長戦略以前に、国家の存立を脅かす大問題なのである。
「パチンコで換金が行われているなど知らない」
賭博が禁止されている日本において、なぜか平然と立ち並ぶパチンコ店。街中の至る所で見かけるパチンコ店。今や全国で10,000以上の店舗数を抱えており、経済規模はなんと30兆円とも言われている。
パチンコは現在、風営法で取り締まられており、特別法で認められた公営ギャンブルではない。従って、金銭を賭けることは禁じられており、現金や有価証券を賞品として提供することはできない。しかし、実際には出玉を“特殊景品”と交換し、それをパチンコ店の近くにある景品交換所で買い取ってもらうという換金行為が可能となっている。この換金方法は「三店方式」と呼ばれており、いわゆるグレーゾーンとして警察も黙認している状態だ。パチンコ業界と警察は天下りで癒着しており、もはや切っても切れない仲になっている。
大阪の役割は「猥雑なエンターテインメント都市」を目指すべき
大阪のIRなど必ず失敗する。そもそも220haという余りにも広大な開発用地が大阪IRの導入候補地となったのは、そこに有り余る需要があるとした「誤った想定」に基づくものである。「統合型リゾート」といっても、ホテル・劇場・ミュージアム(博物館・美術館)・展示や会議などのコンベンション会場・憩いのための公園などは所詮カジノ誘致のための隠れ蓑に過ぎないからだ。本気でやるのであれば、ストリップやセクシーダンス、ポールダンスやキャバレーなどのエンターテインメントなショービジネスや世界に誇る日本の文化である『風俗』も加えて、『夢島新地』として猥雑なエンターテインメントを目指した方が極めて合理的である。
「大阪は観光するに値する街ではない。」「大阪はヤクザという巨大な犯罪都市の中心地。」
海外のガイドブックなどを見ても大阪は人気の高い京都や神戸と逆に「大阪は観光するに値する街ではない。」「騒々しくて公害が多くごみごみした街。」「大阪はヤクザという巨大な犯罪都市の中心地。」などその評価は散々で、観光都市のイメージとしては深刻である。
過去大阪都構想においても、「梅田に森」や「大阪城にモトクロス場」「道頓堀にプール」などの話題づくりの企画や、ハコものを中心とした個別・小規模な環境整備から広がるまちづくりではバルセロナモデルなどに代表されるようなヨーロッパ都市再生のコラージュを超えることができず、「地域の壁」や「縦割りの壁」を打破し、道州制の実施を念頭に、大阪が中核的な役割を果たし、この国の在り方を根本的に変えようという発想がない。
「みみっちい」議論はやめて、
議論のダイナミックな構図を形成することが重要
まず人間には必ず欲望がある。日本では幾つかの欲望に対する市場の需要がありながら、法律ではそれを否定する。それに対して、オランダなどではそれを認めた上でそれを制度化していっている。
たとえば性欲に関していうなら性的サービスを提供する場は日本に驚くほど存在する。しかしそのほとんどは厳密な意味で未許可の不法営業である。
オランダではマリファナも同様で、居酒屋に行ってビールを飲むような気軽さで購入し嗜むことが出来る。合法的に輸入され、品質が高いマリファナを適正な金額で安全に購入できる。日本でマリファナの売買の全てがブラックマーケットになり、警察が多大な摘発費用を支出している事実を踏まえると、政府がマリファナを非合法にすることで失っている金額は計り知れない。
人間の欲望を禁じるのは簡単であるが、それは問題の根絶にならないばかりか、闇を増大させるだけだ。禁止しても売春もマリファナも決してなくならない。ならば政府はそれを合法化し、表商売として制度的にしていった方が合理的だという考え方も決して間違いであるとは言えない。
『アムステルダムは、買春、ドラッグ、安楽死、すべて合法化されている。
アムステルダムの社会では、人間の負の部分を抑圧することなく 、きちんと向き合わせる、つまり社会そのものが〈バッド・エデュケーションの場〉となっているといえる。』
欲望を抑圧することなく肯定する。大阪の「下衆なお笑い文化」や「風俗・ギャンブル」についても、エンターテイメントとして、正々堂々とテーブルに乗せて、「猥雑なエンターテインメント都市」を目指すべきなのである。
創造都市のシティ・イズ・ビューティフル
から、湧活都市のシティ・イズ・ヒューマニズムへ
つまり、エンパワーメントだ。
シティプランニングという英語を都市計画と翻訳し、日本ではじめてその語を使用したのは、当時大阪市長であった關一だ。 当時、大阪市は東京都東京市を上回る日本で最も人口の多い都市であり、世界でも6番目の大都市でもあった。当時の内務大臣から「都市計画の範を大阪に求める」と言わしめ、大阪城天守閣の再建。御堂筋、地下鉄御堂筋線の建設など、大大阪の発展に力を尽くした。その隆盛の名残りは、今も市内に多く残る美しい近代建築に見ることができる。
『大大阪の亡霊』ーいくらレトリックを駆使しても創造都市・〝大大阪〟には無理がある
オリンピック誘致を当て込んだ無秩序な湾岸開発や 「世界都市・大阪」を夢見てバブル経済期に建設された ワールドトレードセンターなどの経営も破綻し,第 3セクターの債務超過問題などが大阪市の財政を再生不能状態に陥れていた。 「大阪破産」に直面した大阪市役所は身の丈改革と称して,企業の減量経営張りの徹底した行財政のスリム化を図る一方,長期の経済停滞と巨額の財政危機に悩む大阪市も, 2003年に大阪市立大学に社会人大学院創造都市研究科を開設し,創造都市の担い手の養成に取り掛かるとともに,2006年には創造都市戦略の策定を開始した。
これから世界で起こる「都市間戦争」は、
IRやミュージアムなどではなく、「家」と「地区」の再構築である。
バルセロナやモントリオールなど世界の創造都市においても,いずれも,深刻な都市危機がその都市ビジョン の転換の出発点であった。創造都市の呪縛から湧活都市への転換に成功するか否かは,思い切った都市ビジョンや都市政策への転換が出来るのか,市民一人 ひとりの湧活を引き出して,新産業や雇用の創出をも たらすことができるのか,社会から排除されたホームレスや失業者をエンパワーとして,NPOや社会的企業によって社会の底辺から包摂していくことができるのか注目される。
湧活(エンパワメント)とは一般的には、個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになることである。広義のエンパワメント(湧活)とは、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させることと定義される。