#115.とりあえずやっちゃう練習
以前「個人練習について考える その3『根性練習は危険!』」と題した記事をここに書いたことがあります。
そこでは、何度も何度もできるまで繰り返すだけの根性練習は、時間も精神も体力も削がれてしまうのでやめましょう、とお話ししました。
ただ、この記事では、「では効率的な練習方法とはどういったものか」についてまでは触れずに終えてしまったので、今回はそのお話しをしたいと思います。
効率的な練習方法
効率的な練習方法はひとつではありませんので、今回のはあくまでも考え方としての一例をご紹介します。
その前にまず、私の知っている範囲ですが、多くの方が練習の進め方を次の2通りのどちらかになっているように感じています。
[1.じっくり丁寧積み重ねタイプ]
ひとつは、丁寧にじっくりと少しずつ少しずつ積み重ねていく地道な練習をするタイプです。これはとても大切な練習に対する向き合い方で、必要な方法ではあるのですが、丁寧なぶんとても時間がかかってしまうために、演奏する曲が多かったり、練習時間が思うように確保できないと、譜読みができない箇所が出てくるなどムラができる可能性があります。また、最初は意気込んで丁寧に行っていたけれど、モチベーションが保てなくなり、途中で面倒になる可能性もあります。「練習って時間がかかるからめんどくさいんだよなあ」と練習そのものにたいして嫌気がさしてしまうのは避けたいところです。
また、この練習は傾向として慎重になるため、実はちゃんとできていても、何らかの原因で少しミスとしたら「まだダメだ」と根性モードに突入し、自分を認められず、こだわりすぎてなかなか前に進めなくなる可能性もあります。
[2.ただ音を出すだけタイプ]
もうひとつは、目的や目標が曖昧で、楽譜のアタマから最後に向けてただ吹いているだけの時間です。完成へのストーリーが構築されていないので、できることろは(やらなくても)最初からできるし、できないところは一向にできない、という結果になってしまいます。「うーん、できないあ、まあいっか」では練習になっていません。
みなさんはいかがですか?どちらかに当てはまりますか?
そして、もっと効率的な練習とはどういったものでしょうか。
とりあえずやっちゃう練習
「とりあえずやっちゃう練習」は今テキトーに思いついたネーミングなのであまり気にしないでください。
これは、私のレッスンの中でも用いていまして、例えばトリプルタンギングとダブルタンギング、フィンガリングが難しい音階とか半音階など、速い動きを求められた時に多く実践しています。
具体的には、できるとかできない関係なく、いきなり最終的な速さ(目標値)のテンポでいきなり演奏してしまうわけです。
しどろもどろになったりと、多分完璧には演奏できないと思いますが、それでOKです。注目したいのは、意外にも演奏できてしまっている部分も結構ある点です。これが重要。
「こんな速いパッセージできないよ!」と思ってしまうのは実は当たり前ですが「出来ない箇所があるから」です。この練習で大切なのは、そのできない原因を極めて狭い範囲で具体的に「どこが」「なぜ」を見抜くことです。それは指が上手く動かせないなどのピンポイントでてくにかるな部分かもしれないし、「冷静じゃないから」とか「豊かなフレーズ感を持っていなかった」「演奏前の呼吸や準備が安定していない」など、根本的なことかもしれません。それらの原因は一箇所かもしれないし、たくさんあるかもしれません。派生して関連しているかもしれません。
ですから、これは経験が必要ではありますが、「なぜ難しいのか」「なぜできないのか」を見抜ける力は必要になります。
そして原因を解決する練習(いったんそこから離れて教則本で徹底した練習を行うなど)を行い、再び目指す速さでチャレンジすると、演奏できている、という流れです。このほうが短時間で済むのです。
ただし、できていない原因を見つけられたとしても、それを解決するための方法が見抜けないと、最初はなかなか次へ進むことが難しいかもしれません。そこはやはり音楽を専門とする人にアドバイスをもらうことが最も的確だと思います。
最初はわからなくても、自分の苦手とすることや、つい陥りがちなパターンは同じであることが多いので、徐々に自分ひとりでも解決まで道ビルことができるようになると思います。
ぜひ「とりあえずやっちゃう練習」を実践し、具体的にどこが、何が原因でできないのかを見抜く力と習慣を持つようにしてください。
それではまた次回!
荻原明(おぎわらあきら)
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