筑波山(つくばさん)日の出の景色を目指してナイトハイク
筑波山は茨城県にある山で日本百名山になります。日本百名山の中ではいちばん低いところになりますが、独立峰で山頂からの大展望が期待できたり林道の巨木や奇岩があるため、他の山には簡単に負けない魅力を持っています。
古来、筑波山には男性と女性の集う場所がありました。歌を交し合うことで恋の相手を見つける歌壇が開かれていたのです。筑波山には山頂が2つ存在し、歌壇を由来に男体山と女体山という名前がつけらています。各標高は男体山871mで女体山877mになり、標高差も625mになります。
2017年に入り、ナイトハイクの人気が上昇しています。テレビでは高尾山のナイトハイキングについて特集される番組が多くなってきました。単純かもしれませんが、自分もテレビを見てからナイトハイクをしたくなったのです…。今回は、筑波山を選んで日の出に合わせて山頂を目指してみました。
車で筑波山神社の駐車場へ4:00に到着し、4:30にスタートしました。スタート時の気温は、奥多摩に比べるとそれほど寒さを感じませんでした。
筑波山神社の鳥居を抜けて本殿・拝殿に到着すると、4:30には本堂の照明がついて係員が扉を開けていました。この作業は朝早くに力を要するのか、お坊さんではなく専門職のような方が安全におこなっていました。
筑波山神社の本殿の手前を左側に進むと、登山道入口とトイレがあります。トイレに接近すると自動的に照明がつくため、懐中電灯でトイレ内に入るわけではありません。
懐中電灯ですが、本格的なナイトハイクではヘッドライトを使用します。今回は、首にかけるライトを試しに使用してみました。小さくてもLEDのため意外と明るくて20時間も連続して使用できるため、使いやすさと安心感はヘッドライトに負けませんでした。ヘッドライトは自分が向く方向へ照明がついていきます。首にかけるライトは、顔の動きに左右されずに自分の足元から手前を照らし続けます。この2つを組み合わせると安定したナイトハイクができると考えられます。
最初は中ノ茶屋跡を目指して歩きました。昔は茶屋があった場所で知られ、今ではケーブルカーが近くで上がっていくポイントとして人気スポットになっています。筑波山は奇岩で有名なため、コースにはたくさんの岩があります。それを上がっていくためにはどうしても歩幅が大きくなってしまうため、バランスが崩れて転倒リスクが高くなってしまいます。
家の中でも暗い中をトイレに行く際は歩幅が狭くなるはず。しかし、少しも周囲の光源がない環境で歩幅を大きくすることは恐怖感が大きくなります。急斜面が多く段差が高いため、初級の山の中ではレベルが高い方になります。
2つ目は御幸ヶ原を目指して歩きました。御幸ヶ原は男体山と女体山の真ん中に窪む平らな場所。そこにはトイレや展望広場や休憩・食事所があります。筑波山ケーブルカーを使用すればここまで8分で上がることができます。御幸ヶ原は2つの山の分岐地点になりますが、最初は男体山を登ってから御幸ヶ原に戻り、その後に女体山に登ってつつじヶ丘へ下山するのがお勧めコースになります。
男体山の頂上には御本殿があり参拝できるようになっています。この景色を見て分かるように、まだ日の出まで時間はあるため、このまま女体山の頂上を目指しました。
男体山の頂上から女体山の頂上までは30分もあれば到着します。女体山に到着したときは6:40で、上の写真のとおりご来光は過ぎていませんでした。山でしばらく待機…。他にも20人程度の登山客がご来光の撮影に来ていました。山頂は雨や風に対して無防備なポジションにもなるため、寒さの中で待機するためには十分な対策がなければなりません。
ご来光の時間がやってきました。霞ヶ浦の湖に太陽が綺麗に反射していました。なかなかご来光のタイミングを把握するのは難しいのですが、周囲の景色に変化が出てくる時間を楽しんでいると日頃のストレスが吹き飛んでいきます。
女体山からは、男体山と関東平野を望むことができます。時間があったため、周りの登山客が撤収しても山頂で景色を堪能していました。周囲もすぐに明るくなってきました。
女体山よりもご来光を先に紹介していました。その女体山は標高877mで筑波山の中でいちばん高くなります。やはり、こちらも御本殿があり参拝できるようになっています。
男体山は西・南の眺めがいい場所になります。一方で、女体山は北・東の眺めがいい場所になります。女体山からは、富士山がうっすらと見えました。
女体山から下山する際は「つつじヶ丘」を目指して東側に降りて行きますが、岩が大きくて急角度を降りることになるためポケットに手を入れて歩くことは不可能。しかし、たくさんの奇岩を見ることができます。それらを少し紹介していきます。
〈ガマ石〉男体山側に雄龍石があり、女体山にも雌龍石があります。この場所でガマの油売り口上という名前が付けられ、ガマ石と呼ばれるようになったようです。
〈セキレイ石〉この岩上に鶺鴒(せきれい)が留まり、その鳥が男女の道について教えていたとされています。
〈大仏岩〉見てのとおり、大仏が座っているかのように見えるところです。15mもある大きな岩です。
〈屏風岩〉素戔嗚尊(スサノオノミコト)を祀っており、そそり立つ屏風を例えてこの名がつけられました。
〈北斗岩〉天空に輝く北極星を例え、決して動かない岩として名づけられました。
〈裏面大黒〉大きな袋を背負った大黒様の後ろ姿に見えると言われてきました。苔も生えてるし、かなり苦労してそうな後ろ姿に見えます。
〈出船入船〉元来、「熊野の鳥居石」と言われ船玉神を祀り、石の姿が出船と入船が並んでいるように見えることから付いた名前です。
〈陰陽石〉高さ10m以上の巨大石が二つ並んでそびえ立ち、陰陽寄り添っているようにみえることからこの名前が付けられえました。
〈母の胎内くぐり〉筑波山修験の行場のひとつになります。岩を抜けることで生まれた姿に立ち返ることを意味しています。
〈弁慶の七戻り〉古来の石門で、聖と俗を分ける門でした。弁慶は、この頭上にある岩に恐怖を抱き、七戻りをしたことからこの名前が付けられています。弁慶の七戻りの先には弁慶茶屋跡があります。女体山からそこまでは約60分で到着できますが、降り方を間違えると大きな外傷を負う危険性がありますので、ゆっくり安全性を第一に考えて降りることをおすすめします。
日本の中でいちばん低い百名山とはいえ、歩いてみるとすごくインパクトの強い山です。岩や角度に対して驚きをもつような場所が多く、ナイトハイクの方がきつさを感じないで登山できるかもしれません。
弁慶茶屋跡を過ぎると、もう一度霞ヶ浦や関東平野の景色を見ることができます。
カエルさんに手を振って下に降りると、まさかこんなものがあるとは…ゲコッ。
大きな滑り台でつつじヶ丘まで降りることになっています。なかなか滑らないしリュックをこすりたくない…。そんなことからゆっくり降りるしかありませんでした。
ガマ洞窟…?ご来光を見てからここに降りているため、ここら辺の店はまだ準備中。おそらく、ガマ洞窟の中も準備中だったと思う。一体、どんな場所なんだろ…。
筑波山の登山では、このつつじヶ丘をゴール地点にする人も多くいます。今回は、車で来ていたため、ここをゴールにするわけにはいきません。スタート地点は西側の筑波山神社なので、つつじヶ丘から歩くことになりました。
ちなみに、この写真の正面がつつじヶ丘からの筑波山入口になります。じつは、この左側(西側)にも林道入口があり、そこは筑波山神社まで行くための下り林道になります。
林道に入ると、イノシシの足跡がありました。イノシシは夜行性のため、ナイトハイクでは足跡や草むらからの音に対して緊張が高まります。この写真の足跡からはそれほど土の乾燥が進んでいないため、時間経過が長くないことや近くにいることが分かります。
林道はこのように歩きやすい状態が下まで続きます。私は夜中に家を出発して睡眠不足になっていたため、ここを歩きながら眠りそうになったくらいです。歩きながら睡眠と覚醒の間を彷徨って歩いていました。それでも転んだりケガをしないくらい歩きやすいコースになっています。
筑波山神社に戻ってきたときにはこんなに明るくなっていました。到着したのは10:00。よって、5時間30分の登山となりました。
登ってみて分かることは、「やはり百名山だ」ということ。周囲にひとつも山がないため、標高が少なくても遠くから立派な山に見えます。山頂からは360°の絶景が見えるだけではなく、霞ヶ浦を正面に太陽が昇っていく光が強いパワーをくれます。
またここへ行くなら間違いなくナイトハイク。