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meu jewelry〜2022.1.

本の話(小説編)

2021.09.13 13:00

8月が疾風の如く過ぎ去り、金木犀が仄かに薫る季節となりました

皆様いかがお過ごしでしょうか?


本の話3回目の今回は、作者の独断と偏見で選ぶ、小説・エッセイ編です

読みやすく、想像力を刺激してくれて、それぞれに不思議な世界観を持つ作品を中心に並べました(※個人の見解です)


リラックスタイムにいかがでしょうか?


最果てアーケード

著:小川洋子 絵:酒井駒子 講談社

ある町の片隅に時が止まったような小さなアーケードが舞台

どこか奇妙で懐かしい物を取り扱うお店を営む人々

全体にひっそりと死の空気が漂う不思議なアーケードで扱われる風変わりでノスタルジックな物にまつわるエピソードの数々

使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器など

ここに集まる物たちは必要とするたった一人がたどり着くまで待ち続ける...

小川洋子氏ならではの繊細で静謐な描写が光る物と人、死と記憶を描く短編集


注文の多い注文書

小川洋子 クラフトエヴィング商會

筑摩書房

「ないもの、あります」という謳い文句から始まる、注文書と納品書と受領書からなる5編の探し物をめぐる短編集

ボリス・ヴィアンの「日々の泡」、サリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」、内田百閒の「冥途」など、モチーフになる元の作品があり、それらを踏まえて読むとさらに深く楽しめる作品です

納品書には商品の解説と写真が資料として添えられ、現実と空想が程よく混じり合っています

小川洋子氏とクラフトエヴィング商會が織りなす不思議な世界観が病みつきになる1冊


いつまでもショパン

中山七里 宝島社

あるピアニストがヨーロッパのコンクール中にテロ事件に巻き込まれるところから始まる音楽推理サスペンス

社会情勢と人間関係と推理と演奏とが一つの大きなうねりの様に展開される壮大なスケールのクラシック推理小説のシリーズ第三作

音楽に詳しくなくても充分楽しめる一冊です

話のテンポが良く、実在するピアニストを彷彿とさせる登場人物やエピソードが重層的に配され、いくつもの要素が影響し合いながら結末へ向かっていく構成

一本の長編映画を観ているような読みごたえがあります


ねにもつタイプ

岸本佐知子 筑摩書房

なんらかの事情

岸本佐知子 筑摩書房

「ちくま」に連載されていた翻訳家・岸本佐知子氏による現実と妄想が絶妙に混在する摩訶不思議なエッセイ集の2冊


ホッホグルグルの謎、Gとの死闘、カノッサの屈辱...

衝撃的なパワーワード満載

妄想と現実が絶妙にリンクしながらリズミカルに綴られており、現実や作者の回想だったはずの話がぐいぐいと妄想の世界に引っ張られて、最後には現実と妄想を分けることが無意味に感じてしまうほどの媚薬的な魅力があります

何よりもこういう妄想していたのが私だけでは無かったということに驚き、感動しました


読み進め方はそれぞれですが、はじめは1日に数話にしておくなど、用法容量を守って楽しむことをオススメします

※妄想世界から抜け出せなくなった人より


翻訳できない世界のことば

著:エラ・フランシス・サンダース

訳:前田まゆみ

創元社

イラストとエッセイ集なので、画集編でも良かったのですが、テーマが"言葉"なので、今回ご紹介します


美しいイラストと共に世界各地で使われていることわざや言い回し、独特の表現がまとまった1冊

言葉の使い方や考え方から各国の文化背景や風俗、習慣が読み取れて、独特の表現に驚き、笑い、考えさせてくれます

それまで知らなかった国も少しだけ身近に感じたり、同じようなことわざが各地にあることに人間の本質に差はないことを改めて考えたりと、多角的に考察するとより楽しい世界のことば&イラストエッセイ集です

日本語は「こもれび」や「積読」などがピックアップされていて、サンダース氏の独特の解説が面白いです


ムーミン谷の洪水

トーベ・ヤンソン

あるシーンでは、普段クールなスナフキンとイタズラ好きのミイの真にアバンギャルドな一面が窺えます

強制や抑圧に対する抵抗

自由であることはどういうことか

洪水という危機をムーミンたちがそれぞれのやり方で受け止め、楽しいこと、やりたいことを諦めずに柔軟に生きていく逞しさが淡々と描かれています

トーベ・ヤンソン氏の生き方が色濃く反映されている1冊です


ムーミン谷の彗星

トーベ・ヤンソン

ムーミン谷に彗星が落ちてくるという、シリーズの中でも珍しい世紀末な空気感

洪水と対になるくらいの危機が訪れますが、それぞれの受け止め方で彗星に向き合い行動します

トーベ・ヤンソンが彗星を書いた時期は戦火が激しくなり、ナチス侵攻が迫ってきた時でした

彗星はナチスの象徴とも言われています

トーベ・ヤンソンの人生観が垣間見られる本作は子供は子供の視点から、大人は大人の目線から深く読み込める作品となっています

(順不同・敬称略)


※ここからネタバレ含みます

なぜか当時の自分には、予定調和に危機に立ち向かい克服する、またはヒーローが現れて助けてくれる、などの展開よりも「たまたま彗星の軌道が外れた」ことで日常が戻ってくるところが刺さったようでした

冷めた子供だったのでしょう

※ネタバレ終わり


小学校卒業時の文集の「印象に残った本」を「ムーミン谷の彗星」について書いて、図書の先生に心配されたのはここだけの話...



最近は少し元気な時でないと読了できなかったのですが、涼しい気温と共に読書欲も戻って来たようです


本の話はこれで一旦ひとくぎりにしますが、また気が向いたら書くこともあるかもしれません

先日、浅草橋にある銀杏岡八幡神社の石段で見かけた御猫様

まだ暑い日で外回りには過酷な日でしたが、涼しいお顔でお休みでした

また会えますように♪