はとバスの歴代の輸入車④ ヨーロコメット
はとバスが定期観光の新しい看板車両としてヨーロコメットを導入したのは1987年でした。1987年は、1980年代前半のダブルデッカー・ブームも一段落し、ポスト・ダブルデッカーとしてスーパーハイデッカーが注目を集めていた時期でした。スーパーハイデッカーもまだ台数が少なく、ほとんどが豪華仕様で各社のフラッグシップ的な存在でした。はとバスも1984年にダブルデッカーを増備してからは、大型バスはスケルトンタイプのハイデッカーを継続的に導入していました。定期観光に限れば、1983年正月の運行開始以来ダブルデッカーの人気は堅調でしたが、定期観光の次なる目玉商品となるべく車両の登場を期待する声も強まりつつありました。色々と検討を重ねた結果選ばれたのが、ドレクメーラー社が製造するE330Hヨーロコメットでした。ヨーロコメットは、ダブルデッカーで高評価を得ていた西ドイツ(当時)のドレクメーラー社が製造するスーパーハイデッカーでしたが、最大の特徴は客席が後方に行くほど高くなっているシアターシートアレンジメントでした。当時のヨーロッパでこのシートアレンジメントを製造できるのはドレクメーラー社のみといわれ、日本では比較的珍しかった背の高いスーパーハイデッカーボディと独特なシートアレンジメントが相まって、他に類をみない強烈なインパクトのあるバスでした。はとバスは定期観光専用車両として導入した為、眺望の良さを徹底的に追求した結果、バスガイドが着席案内が出来るよう、ヨーロッパでは一般的であった前向きのガイド案内用シートを採用しました。外観も、前面の大きなウィンドシールド、シアターシートアレンジメントにマッチした側窓のデザイン、当時は珍しかったフロントオーバーハングが長い4x2レイアウトなど、ヨーロッパ生まれの存在感のある独特なものでした。はとバスではこの魅力的なバスを2台導入しましたが、残念ながら日本への輸入はこの2台に留まってしまいました。当時の観光バスにはサロンなど観光+αの要素が強く求められ、ヨーロコメットのような観光に特化した豪華バスの貸切需要は少なかったのかもしれません。はとバスでは定期観光バスとして大人気を博しましたが、ダブルデッカーほどのインパクトはなく、今となっては意外と存在すら知られていない感もあります。尚、ドレクメーラー社は1990年代にスウェーデンのボルボ社に買収されてしまいましたが、ボルボの最新型コーチにはいまだにシアターシートアレンジメントのモデルがラインアップされていることは喜ばしい限りです。
写真① 大きなウィンドシールドが特徴的なフロントマスク
写真② 後部も独島なデザインでした
写真③ ヨーロッパで船積みされる前に撮影された写真。この写真はパネル化され、はとバスの各営業所で掲げられました
写真④ はとバスの定期観光バス用パンフレットに良く使用されたカット
写真⑤ ボディの仕上げは美しく、どこでも目立つバスでした