オリンピックが行われる日本の国と国民の皆さんへ、沖縄からのメッセージ
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オリンピックが行われる日本の国と国民の皆さんへ、沖縄からのメッセージ
NPO法人ピースメーカーズ・ネットワーク
理事長 喜納昌吉
コロナウイルス・パンデミックさなかのオリンピック開催をめぐり、天皇も懸念を示すなど賛否両論が渦巻いているが、日本政府は開催の方針を変えていない。
感染拡大への心配の声を押しての開催ならば、日本の国に求められるのは、ウイルスの脅威をはるかに超える希望の光を国民や世界の人々に指し示しながら進むことだろう。その手掛かりは歴史の中にある。
オリンピックの歴史を振り返れば、そこには1964年東京オリンピック閉会式の魂が燦然と輝いている。各国選手が入りまじり、肩を抱き合い、あるいは誰かを担ぎ上げ、笑いながら泣きながら、国や人種や宗教や性別の垣根を超えて、混然となって国立競技場を練り歩いた閉会式のあふれる歓びは、演出者の松沢一鶴の思いにより解き放たれた平和のメッセージだ。
スポーツ指導者だった松沢は、時代の波に翻弄される。1940年の東京オリンピック、札幌冬季オリンピックは中止に追い込まれ、日本は戦争の巨大な渦に飲み込まれていった。目の前で神宮の競技場を整然と行進したのは、各国の選手ではなく出陣してゆく学徒たちだった。松沢は教え子たちを戦場へと見送り、その多くが帰らぬ人となった。競技場での整然とした行進は、松沢にとっては忌まわしい記憶と重なる。東京オリンピックの閉会式には、平和を求める松沢の強い思いが、結晶した。
16歳だった私はフィナーレの光景に打たれた。松沢の心が私に流れ込み、『花』はその感動を受けて生まれた。後に私は、アトランタと北京、二つのオリンピックに招待されたが、それは私が花を通じて東京オリンピックに舞い降りた平和のメッセージを発信し続けていることが届いて受け入れられたからだと思っている。
私は今度のオリンピックにも、松沢の心を伝えたい。
その思いは、二度と日本の若者を戦場へと送らないことだ。
しかし残念ながら、今日の日本を取り巻く世界情勢はけして平和とは言えず、たいへん厳しい。米中の戦争や第三次世界大戦がいまにも始まりそうだとの話も聞く。求められているのは、具体性のあるアクションだ。
オリンピックは平和の祭典を自認してきた。IOCのバッハ会長も、広島を訪れると聞く。東京オリンピックの開催とともに、世界が待っているのは、ただ一つの被爆国である日本が核兵器を地球上からなくす先頭に立つことだ。2017年に国連総会で採択された核兵器禁止条約に日本が加盟し、核の傘から平和の傘に切り替える道筋を示すことが、世界に希望と光を与える。
日本は、コロナに覆われた暗闇からそれを超えた希望の光を指し示す唯一のチャンスを与えられている。そのチャンスを大いに活用してほしいとの期待を込めて、戦争の地獄を知る沖縄より、東京オリンピックへのエールを贈りたい。
2021年7月吉日
すべての武器を楽器に
すべての基地を花園に
戦争よりも祭りを
そして
すべての人の心に花を
喜納昌吉