天地のあかを集めて卵茸
天地のあかを集めて卵茸 高資— 場所: 多氣不動尊
卵茸であれば一応食べられるようですが、似ている毒茸もあるので注意が必要です。もっとも、卵茸だったとしても食べるには大勇猛心が必要ですね。
https://dailyportalz.jp/kiji/131111162304 【タマゴから生まれるおいしいキノコ、タマゴタケ】より
数あるキノコの中でも、私が以前から憧れているキノコがタマゴタケである。他のどのキノコとも似ていない、独特の派手なカラーリングと愛くるしいフォルムから、愛好家も多いキノコだ。
何度かタマゴタケを求めてキノコ狩りにいったのだが、未だに見つけたことがなく、私の中では幻のキノコとなっていたところに、友人のお母さんが住む場所にニョキニョキ生えているという情報を得た。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
タマゴタケを採りにやってきた
タマゴタケがたくさん採れるという話を聞いてやってきたのは、某県某市の山の中。そこそこ標高が高く、舗装された道路はあるけれど、カーナビには表示されないような場所。
ちなみに「タマゴダケ」ではなく、「タマゴタケ」と濁らないのが正解。この名前が後日私を悩ませることになるのだが。
詳しい場所は書きませんが、ここです!
この土地に友人のお母さんが山小屋を建てて住んでおり、毎日のように犬の散歩をしながら、カジュアルにタマゴタケを採っているらしい。
もちろんタマゴタケは天然物なので、行けば必ず採れるという保証はないが、今年は当たり年らしいので、かなり期待はできるそうだ。
いざ、タマゴタケを求めて。
道端に生えているオレンジ色のキノコ、それがタマゴタケ
犬の散歩道という話は聞いていたのだが、それなりに山を登らなければいけないものだろうと一応登山靴を履いてきたのだが、同行者達は軽井沢のアウトレットショップに行くような軽装である。
なんでもタマゴタケは草木が茂る山の中に生えているのではなく、この道路沿いにヒョッコリと生えているものらしい。
とりあえずクワガタのメスを発見。これは八月の話です。
ゴマダラカミキリの力強さが懐かしい。
真面目にタマゴタケを探しながら歩いているつもりなのだが、いつの間にかいたるところに仕掛けられた昆虫トラップにいちいち引っかかって、一人だけ遅れてしまいがち。
そして探し始めてほんの数分後、先をいっていたお母さん(と呼ばせてください)から、「あったよー!」という声が掛かった。早い。
本当に道端だ。
急いで駆け付けると、そこには追い求めていたタマゴタケ様の幼菌が、とても上品に鎮座していた。
アップルマンゴーのような濃いオレンジのつるんとした傘、まだら模様の黄色い柄、そしてタマゴの殻のような白いツボ、これぞ憧れのタマゴタケである。
ものすごく作り物っぽい。
絵に描いたようとは、まさにこういう状態をいうのだろう。
まだ傘が開く前の、この幼菌の状態を見てみたかったのだ。
いきなりパーフェクトなタマゴタケの登場である。
横からのアングル。なんかグッとしている。
こう見えて食べられるキノコなのだ
初めて目にする、土に生えた状態のタマゴタケをじっくりと観察する(他の人が採ってきたのを見たことはある)。見れば見るほどファンタジーの世界だ。
キノコはどれも独創的な形をしているが、その中でもこのタマゴタケのオリジナリティはトップクラスだろう。どう見ても人工物。
そして重要なポイントは、こう見えて食べられるキノコであるということなのだ。予備知識がなかったら、どう見ても毒キノコにしか見えないのだが。
ぬいぐるみと並べると、より作り物っぽさが増す。目と鼻を描いたらサンリオやタカラトミーのキャラクターとしていけそうだ。
丁寧に根元を掘って土から取り出すと、さらにオモチャっぽくなった。
タマゴタケというだけあって、ツボ部分のタマゴっぽさがすごい。
一般に売られている食用キノコとは、色も形もまるっきり似ていないので、味がまったく想像できない。
バネ仕掛けで飛び出てきたようなフォルム。
見つけやすすぎるキノコ、それがタマゴタケ
人生初のタマゴタケに感動していたら、どんどん先を行っていたお母さん達が、早くも次のタマゴタケを見つけたようだ。
今度はちょっと藪に入った場所に生えているのだが、その派手なオレンジの傘のおかげで、遠くからでもすぐに見つかる。
タマゴタケ、食用なのにものすごく不用心だ。
「ほら!そこ!早く!」
遠くからでもすぐに見つかる。
今度のタマゴタケは、傘が開き切って少し経った、老菌に近い状態だ。
さっきの地面から出てきたばかりのまだ若いタマゴタケにあった幼さは消え、アダルティな魅力をたたえている。
そしてやっぱり毒キノコっぽい。
少し落ち着いた色になった傘のグラデーションが味わい深い。
自分で見つけて感無量
これだけ探しやすいキノコなので、すぐに私も見つけることができた。
事前の情報通り、今年はタマゴタケの当たり年。さらにこの日は特に発生数が多かったようで、3歳の子供でも疲れない程度の距離を探しただけで、十分な収穫があった。
ちょうど傘が開いたところのタマゴタケ。青春まっただ中という感じだろうか。
能登半島あたりの工芸品のような美しさ。
トラネコのぬいぐるみとよく似合う。
傘がそっくり返った状態のタマゴタケ。ヒダが黄色いのがタマゴタケの特徴。
もはやエロチックでさえある、愁いを帯びたタマゴタケの傘。
タマゴタケの仲間にはたいてい毒がある
タマゴタケはその特徴的な外見から、ちゃんと知ってさえいれば間違えることは少ないキノコだとは思うが、タマゴタケが属するテングタケの仲間は、だいたい強い毒がある。
その毒にこそ強い旨味があるという話もあるが、それを試すときっと死ぬ。
白くてトゲトゲしているのは確実に毒キノコ。タマシロオニタケかな?
コタマゴテングタケっぽいが、図鑑と見比べても素人には判定できないのがキノコの世界。
タマゴタケは無毒とされているが、タマゴタケが大好きで、タマゴタケだけを何十本も一気に食べたら、視界がキラキラしてきたというキノコマニアの話を聞いたこともあるので、もしかしたらなにか怪しいマジカルな成分を、多少は持っているのかもしれない。
タマゴタケはとても崩れやすいので、どんなに美しくて美味しくても、なかなか流通は難しいようだ。
タマゴタケのタマゴを発見!
夢中になってタマゴタケを探していると、土の中に半分埋まったタマゴみたいなものを見つけた。
もしかしたらこれはタマゴタケの傘と柄の部分が出てくる前の状態、タマゴタケのタマゴではないだろうか。
キノコというよりも、巣から落ちた小鳥のタマゴっぽい。
そっと掘り起こしてみると、まさにタマゴの形をしているが、埋まっていた部分に髭のような根がちょこっと生えていた。
この状態では、これがタマゴタケなのかドクツルタケなのかシロオニタケなのかは全く判別がつかないが、タマゴタケのタマゴだと信じたい。
きっとタマゴタケのタマゴ!
さらに探し回っていると、今度はもう一回り大きなタマゴを見つけた。
自然界における不自然なまでの白さ!
こちらも掘り起こしてみると、少し虫に食われた跡があり、そこから中身が見えたのだが、これがまさに半熟状態の黄身なので大興奮。
でた、茹でタマゴタケ!
黄身だ!
携帯ストラップみたいなタマゴタケも発見!
そして今度は、タマゴの殻が割れたばかりの、カリメロ(頭にタマゴの殻を乗せたヒヨコのアニメ)状態のタマゴタケを発見。
ちょっと首(?)を傾げたそのしぐさに、こちらはノックアウト寸前だ。
パカっと登場。
超絶かわいい。
これは携帯のストラップとかのモチーフにいいのではと思ったのだのだが、お母さんの家にすでに商品化されたものが飾られていた。
でも俺が見つけたタマゴタケのほうがかわいい!
そんな感じで、この日は十分過ぎる量のタマゴタケを無事収穫。
とても見つけやすいキノコなので、昼飯を食べにいくために車を走らせてもらっている間も、後部座席から「タマゴタケ!」と声を掛けて、何度目でも心の踊る収穫を繰り返した。
派手なので車窓からでも見つけられる。
なんというタマゴタケのパラダイス。
「おじいさんと孫」みたいな老菌と幼菌。
食べ頃に傘が開いた超特大サイズも発見!
タマゴタケのタマゴを割ってみる
持ち帰った2つのタマゴタケ(だと思われる)のタマゴだが、中身がどうなっているのかとても気になるので、真っ二つに切ってみよう。
タマゴタケの成長イメージ。
包丁で真っ二つ。
断面が本物の茹でタマゴみたいになっていたらおもしろいなと思ったのだが、割ってみるとまた独特の魅力がある造形だった。
この独特のオレンジ色は、まさしくタマゴタケのものだろう。
それにしてもこの見事な断面、なんだか化石を発掘した気分である。
タマゴタケのタマゴの断面。
関係ないけれどヤマアカガエル。
ヒキガエルがタマゴタケのように赤かった。
タマゴタケをいただいてみる
大量に収穫してきたタマゴタケは、すぐにバター焼きでいただくことにした。
タマゴタケを食べまくっているお母さんが一番おすすめする食べ方が、このバター焼きなのだそうだ。
傘も柄も食べられるが、白い殻部分は食べないそうです。
味が想像できないけれどおいしそう!
バター焼きにした新鮮なタマゴタケの味だが、とても旨味が濃くて驚いた。ものすごく高級な味がするキノコだ。
しっとりとして柔らかい傘部分に対して、柄部分はシャクシャクとした歯ごたえが楽しめる。
タマゴタケのバター焼き、予想以上の味だった。味も歯ごたえもどちらも最高だ。タマゴタケだけに、エッグいみたいなアメリカンジョーク(じゃない)の要素は一切なかった。
凛々しい猫。
タマゴタケで作るタマゴタケご飯
さてまだまだたっぷりとあるタマゴタケだが、「明日になればまた生えてくるから!」という力強い言葉が添えられて、残った分をいただいてきた。
そしてまず作ったのが、タマゴタケの炊き込みご飯、人呼んで「タマゴタケご飯」である。
まるで「タマゴ掛けご飯」みたいな、この名前の料理が作りたかったのだ。
贅沢に全面を覆うほどのタマゴタケを投入。
炊き込むとオレンジ色が色落ちして、ご飯に色移りした。
タマゴタケの薫り高い逸品の完成である。
これぞタマゴタケご飯(何度でもつぶやきたい料理名だ)。
色がよく混ぜたタマゴ掛けご飯っぽい。
天然のキノコだけが持つ、怪しいまでの旨味たっぷりのタマゴタケご飯、素晴らしい。
素晴らしいが、そこに動物性の旨味を加えるべく、バターを落とすとさらに完璧。邪道だけどうまい。
タマゴタケバター醤油ご飯。
そしてお代わりは、まさかのタマゴタケご飯のタマゴ掛けご飯である。
これ何杯でもいける。
ただでさえ美味しいタマゴタケご飯と生卵の組み合わせの妙。親子丼ならぬ他人の空似丼である。丼じゃないけど。
タマゴタケご飯のタマゴ掛けご飯、タマゴタケご飯のタマゴ掛けご飯、タマゴタケご飯のタマゴ掛けご飯。
三回続けて言いたくなる料理名だ。
バター炒めを白米に乗せたバージョンのタマゴタケご飯もうまい。
シメはタマゴタケのオムレツ
最後もネーミング優先の料理、タマゴタケのオムレツである。
これはタマゴタケのことをタマゴダケだと思っていた頃に思いついた料理で、「たまごだけのオムレツなのに、プレーンオムレツじゃない!」というトンチだったのだが、タマゴタケだったので、普通のキノコ入りオムレツになった。
「たまごだけのオムレツなのに、具が入っている!」って言いたかった訳ですよ。
味はもちろんよかったです。タマゴタケとタマゴとバターの組み合わせは鉄板。
タマゴタケは素敵だ
こんなにおいしい味なのに、とても見つけやすい姿という、進化論を無視したようなタマゴタケとは、一体なんなのだろう。
毒キノコだらけのテングタケの仲間の中で、まさに紅一点(ベニテングダケも赤いが食べられない)のその存在が愛くるしい。また来年も、そのハデな傘で出迎えてほしいものである。
凄く細かい統計をとった円グラフみたいなタマゴタケの傘。