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富士の高嶺から見渡せば

中国で「第2の文革」が進行している

2017.01.31 05:50

<事実を述べただけで罰せられる>

『もしあれ(毛沢東)が1945年に死んでいたら、(国共内戦による)戦死者は600万人少なかった。58年に死んでいたら(大躍進政策による)餓死者は3000人少なく、66年に死んでいたら(文革による)闘争死は2000万人少なかった。76年になってようやく死んでくれたおかげで、われわれはついに飯が食えるようになった。彼が行った唯一正しいことは、死んだことだけだ』。

無学の中国人民は信じられないかもしれないが、これらの数字は世界中の人みんなが知っている歴史の「常識」だ。中国の良心的知識人がホンネを交えてストレートに表現したたったこれだけの文言を、中国版マイクロブログ(微博)に書き込んだだけで、毛沢東信奉者の一般大衆から激しいバッシングを受ける。そんな「第2の文革」が習近平政権下で進行している。

問題のブログを書いたのは、山東建築大学副学長の鄧相超教授で、連日、抗議の横断幕やプラカードを持った毛沢東信奉者の群集が大学などに押しかけ、ついに公職を解任された。

(香港01「山東學者鄧相超疑「辱毛」惹禍 遭解除省政府參事職務」)

朝日新聞によると、鄧相超氏を応援する文章を発表した河南省のテレビ局員も停職処分になった。「毛沢東を批判した学者や公務員が、熱烈な支持者の抗議に遭い、職を解かれる例が中国で相次いでいる。「言論の自由の範囲内だ」と擁護する動きもあるが、党批判に厳しい姿勢の習近平(シーチンピン)指導部の下で、そうした声はかき消されている」という。

(学者や公務員、毛沢東批判で次々とクビに 朝日新聞デジタル 1/29)

拓殖大学海外事情研究所澁谷司教授は、事実を述べただけで罰せられるという『第2の文革』の嵐が吹き荒れている、という。 

『これら習政権の一連の政策を見ると、大陸の中国人は“自虐的”民族と言えるかもしれない。

 毛沢東時代、共産党幹部(習近平主席の父親、習仲勲も含まれる)も一般民衆も、相当「文化大革命」で苦しんだはずである。習主席自身、陝西省延安市へ「下放」され、辛酸をなめた。それを忘れて、習近平政権は再び「第2文革」(或いは「文化小革命」)を開始した。そして、一部の民衆はその「第2文革」を“熱烈に”支持している観がある。

 中国共産党にしても、2度と毛沢東のような絶対的権力者“皇帝”を産み出さないようにと、毛以後、政治局常務委員による「集団指導性」という政治システムを確立したはずだった。

ところが、2010年代に入り、また習近平という“皇帝”を産み出した。共産党自体も全く懲りていない。“マゾヒズム”の極みだろう。

 そのため、実際、中国大陸では「中国の夢」どころか、再び「中国の悪夢」が蘇ろうとしている。』

(澁谷司の「チャイナ・ウォッチ」事実を述べただけで糾弾される「第2文革」)

「歴史観がおかしいと国が滅びる」と前回のブログでは、韓国を引き合いにだして指摘した。ところで慰安婦問題もしかり、「歴史認識」問題といえば、中国と韓国はすべて共闘関係にある。歴史認識とか、歴史観について言えば、歴史的事実などどうでもよく、時の政権を擁護し、弁護するためだけに利用すべき対象に過ぎない。

人類史上最大の大量殺戮を実行した狂気の独裁者を、いまだに建国の英雄として、まるでカルト教団のように崇めなければならず、その下にいる被支配者の大衆は自分の頭で考え、自ら調べようともせず、支配者側のいいなりに盲目的に行動し、「愛国無罪」、「反日無罪」と唱えていれば、どれほど暴力を振るっても許されてしまう社会なのだ。

20世紀後半、カンボジアや南米などでも毛沢東主義(マオイスト)を名乗るカルト集団が、大量虐殺などの惨禍を引き起こし、毛沢東は世界中に悲惨な爪あとを残している。毛沢東という呪縛から抜け出せないかぎり、中国は依然として皇帝政治の延長下にあり、真の近代化を達成することは不可能だ。経済がどんなに強大化になろうとも、一流国として世界から尊敬を集めることは決してないだろう。