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土木学会景観・デザイン研究発表会@高知で発表しました!

2016.12.11 05:55

 こんにちは。長崎市景観専門監を務めます九州大学の高尾です。12/9-11に高知工科大学での土木学会景観・デザイン研究発表会に参加し、高尾・尾崎と連続して発表してきましたので、順にレポートします。

 まず、高尾からは「長崎市景観専門監の仕組みと成果 ーインハウス・スーパーバイザーのモデル的取り組みー」と題して発表しました。長崎市・田上市長が考案された「景観専門監」の仕組みを、従来のガイドライン(教科書)、景観アドバイザー(先生)、職員研修(授業)といった手法を超えて、専門家が現場で一緒になって考える、いわば「家庭教師」のような存在だと紹介しました。

 家庭教師は成績向上を目的としながら、学生の進路相談を受けたり、親子のコミュニケーションを潤滑にして、学生のモチベーションを高めていくことが大事な職務です。長崎市景観専門監も職員の良き相談相手となり、ときに庁内関係課や上司・部下、委託業者との関係をコーディネートして、職員がいいものづくり、やりがいのある仕事に集中できる環境をつくる役割を担い、それによって地域の景観を向上する事業成果が生まれることを目指しています。この「家庭教師」的存在を職能として確立していくことの重要性を提案しました。

 尾崎さんの論文タイトルは「公共空間の戦略的・統合的デザインの実現に向けた体制と職能に関する考察」です。著名な事例を調査分析しつつ、主に「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」と「長崎市景観専門監」を比較しながら、前者は役所の外にある包括的なまちづくり組織として安定性が高いが、その一方で民間による大規模開発があるという文脈で成立しておりどこでもできる方法ではない、後者は役所の中にあり首長命で選ばれた個人であるため比較的低コストで行政内改革を進める効果が高いが、政治に左右されるため安定性はやや低く、また誰でもできるものでないと評価していました。

 まちづくりの現場では、これらの方法のどれか一つを選択するというよりは、地域の特性やタイミングにあわせてよりよい方法となるように組み合わせたり、修正しながら仕組みをつくることになるだろうと思います。

 学会の参加者からは両名の発表とも非常に反響が高く、こうした「仕組み」に関する関心の高さをあらためて実感しました。なお、高尾は優秀講演賞を受賞しました。これまで景観分野の関わりが薄かった今日的なまちづくりのテーマについて、専門家の英知がもっと貢献できるようになる「仕組み」の議論を今後も盛り上がていきたいとあらためて感じた二日間でした。インハウススーパーバイザーはその有力な方法だと確信しています。