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なるの台本置き場

【男1:女1】「     」

2021.11.27 07:38

男1:女1/時間目安 分



【原作】

「     」作:すふれ司様



【題名】

「     」

※題名に関しまして、演じて下さる演者様ご自身でこの作品の題名はお決め下さい。



【登場人物】

女:成人済み。

男:大学生。



(以下をコピーしてお使い下さい)


『(お決めになったタイトルを入れて下さい)』

原作:すふれ司様

作者:なる

https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/19617194

女:

男:




-------- ✽ --------






001 男:あの。


002 女M:蝉の声が鬱陶しくて入った名前も知らないカフェ。そこで昼休憩をしていると店員に話しかけられた。


003 男:この店禁煙です。あの、タバコ……。


004 女:あぁ、すみません。


005 女M:最近は禁煙の店が増えた。喫煙者には肩身の狭い世の中になった。


006 男:禁煙のお店最近増えましたよね。


007 女:あぁ……そうですね。


008 男:肩身の狭い世の中になりましたね。


009 女M:男性にしては随分と柔らかく笑うものだと、思わずじっと見てしまった。


010 女:貴方もタバコを?


011 男:はい。実は少し。


012 女:そうなんですね。


013 女M:そこから先の言葉に困って思わず愛想笑いをした。店員の男も同じように笑って返してきた。決して暇ではないはずなのに客に話しかけてくるなんて、とんだ物好きだなと思った。そんなことをふと思いながら私は温くなったアイスコーヒーを飲み干した。







014 男:(タイトルコール)







015 女:ランチセット1つ。アイスコーヒーで。


016 男:ミルクやガムシロップはお付けしますか?


017 女:いや、大丈夫です。


018 男:ランチセット1つ、ドリンクはアイスコーヒーで、800円です。


019 女:これで。


020 男:1000円のお預かりで……200円のお返しです。


021 女:どうも。


022 男:気をつけてお持ち下さい。……ごゆっくりどうぞ。


023 女M:付け加えられた言葉に思わず顔を上げた。その言葉を発した相手はあの店員だった。


024 女:ありがとう。


025 女M:思わず口から出たその言葉に少し驚いた。私にもまだこの言葉を言える心があった事に思わず微笑んだ。



(間)



026 男M:毎週同じ曜日に来る客。同じ時間に同じモノを頼む。客などいちいち覚えてはいないけれど、反復すれば覚えるというのはこういう事かと我ながら感心した。


027 男M:いつも同じ席に座るその客をぼうっと眺めていると店長から『気になるのか?あの人』と茶化された。


028 男:いや、別に。


029 男M:自分の口から出た言葉の冷たさに少し驚いた。こんなにも冷たくものを言えるのかとその面白さに思わず口元が緩んだ。







030 女M:外に出れば蝉の声しか聞こえなくなった頃、仕事の合間にたまたまあの店に立ち寄った。たまたま近くを通りかかったから。理由はそれだけ。


031 男:いらっしゃいませー。


032 女:ランチセット、カフェラテで。


033 男:え。


034 女:何か?


035 男:あぁ、いえ、すみません。珍しいなと思って思わず。カフェラテですね、かしこまりました。


036 女:覚えてたんですね。最近来てなかったのに。


037 男:いつも同じものを頼まれてましたから。覚えますよ。


038 女:そうですよね。……あ、これで。


039 男:800円丁度お預かりします。カフェラテです。お気をつけてお持ち下さい。


040 女:どうも。


041 男:ごゆっくりどうぞ。


042 女M:接客にとても向いているであろうこの店員を少し羨ましく思った。優しく向けられた目に思わず目を逸らして会釈をした。



(間)



043 男M:久しぶりに来店したあの客は何だかとても疲れているように見えた。今日は新作のケーキを来店した客に試食してもらう日だ。その担当を偶然任されていたから、いつもより少し早くケーキを出す事にした。


044 男:あの。


045 女:はい。


046 男M:少し面倒くさそうにイヤホンを外したその客のプレートに目をやると、やはり食は進んでいない様だった。


047 男:お食事中すみません。今新作のケーキの試食をお配りしているのですが、宜しければおひとつどうですか?


048 女:あ……ありがとうございます。


049 男:新作のケーキはパイナップルとマンゴーを使用した夏らしいケーキです。


050 女:へぇ……!


051 男:お好きですか?


052 女:え、あっ、はい。パイナップルとマンゴーには目がなくて。そういう商品をみかけるとつい。


053 男:そうなんですね。味の方も気に入って頂けたら嬉しいです。


054 女:後で……頂きます。


055 男:はい。ごゆっくり。


056 男M:去り際にそっとアイスコーヒーの無料券を置いた。小さく驚く声が聞こえたが聞かなかった事にして俺はその場から離れた。







057 女M:仕事終わり。いつも通り駅前に広がる賑やかな表通りを歩く。今日は職場の先輩と外回りをしていたためタバコを吸う時間が無かった。そのためか家に帰るための足も自然と早くなる。いつもより気持ち早く表通りを曲がり人のいない路地で火をつけた。


058 女:あぁ……生き返る……。


059 女M:仕事終わりのビールが美味いように、我慢した後のタバコは最高だった。あっという間に吸い終えて2本目に火をつけようとして箱が空な事に気づく。もっと早く気づいていればわざわざ戻らなくても済んだのに。


060 女:戻るか……。


061 女M:私の呟きはタバコの煙と共に夜の闇に消えた。



(間)



062 男:次のお客様どうぞー。


063 女:お願いし、ます。


064 女M:店員の声に思わず顔を上げてしまった。目が合ってからしまったと思った。


065 男:あの。


066 女:は、はい?


067 男:ご注文は?


068 女:あ、えっと、13番のタバコを1つ。


069 男:こちらが1箱ですね、500円です。


070 女M:それから会計を終えて家に帰るまでの記憶が曖昧だ。あのコンビニ店員は私の記憶にいる喫茶店の店員では無かったのだろうか。確認する度胸も機会もないだろう。とても同じ人ではなかった。きっと、同じ人ではない。……そう思うしかなかった。







071 男M:まさかあの客がまた客として現れるなんて思わなかった。嫌な面を見られたと思ったが幸いにもマスクをしていた。別の人だと言うことにしてくれないだろうか、なんて淡い期待を抱いて今日も喫茶店のシフトに向かう。


072 女M:また来てしまった。昼休憩だからとお昼を食べに来てしまった。来てみたはいいものの、先日の事を思い出すとどうしても店に入る気持ちにはならなかった。諦めて近くのコンビニに向かい、おにぎり1つとアイスコーヒーを買った。







073 女M:店に行かなくなって半年が過ぎた。なんとなく行きづらくて別の場所でお昼は済ませた。元々そこに拘っていた訳では無い。ただ立地が良かったからそこに通っていただけ。……それだけだ。


074 女:あ、これ……あの時貰ったクーポン。


075 女M:滅多にしないカバンの整理整頓と共に発掘されたあの時の紙切れ。期限は今月いっぱいだった。


076 女:……久しぶりに行ってみようかな……。


077 女M:自分にしては前向きな考えに背中を押されて店に向かった。……また、昼時だ。



(間)



078 男:いらっしゃいませー。


079 女:あ、えっと。


080 男:ご注文をどうぞ。


081 女M:あの店員から発せられた言葉は少し冷たく感じた。いつもと変わらないはずなのに、何故か、冷たかった。


082 男M:自分の口から出た言葉の冷たさに少し驚いた。忘れていたあの客に動揺した、とでもいうのだろうか。自分でも自分が分からなかった。


083 女:えっと、ランチセット1つ……アイスコーヒーで。


084 男:ミルクやガムシロップはお付けしますか?


085 女:あ……いえ、大丈夫です。


086 男:かしこまりました。……ランチセット1つ、ドリンクはアイスコーヒーで、800円です。


087 女:これで。……あの。


088 男:1000円のお預かりで……200円のお返しです。


089 女:あ……どうも。


090 男:気をつけてお持ち下さい。


091 女M:その次の言葉はなかった。期待していた自分がいた。あの言葉を貰えたら、何も無かった事になるんじゃないかって。


092 男M:あの客は前と同じ、あの席に座った。久々に見た客の背中は、少し小さくなっていたように思う。


093 男:もう少し優しく接すれば良かったかな。


094 男M:あの客の中の俺は、どれだけ嫌なやつだろうか。そんな事を思っては直ぐに忘れた。もうあの人に会うことはないだろうから、別にどう思われていても構わなかった。



(少し間)



095 女:……美味しい。


096 女M:料理の味が美味しかったから。店の雰囲気が良かったから。コーヒーの味が好みだったから。だから通っていたはずなのに。……料理もコーヒーも、味がよく分からなかった。







097 女M:少しして。同僚に半ば無理やり連れてこられたあの喫茶店。レジの横に置かれたショーケースにはあのケーキが並べられていた。……そのケーキを見て、ふとあの店員の事を思い出した。店内を見渡しても、あの店員の姿はない。


098 女:あの、ちょっと店員さんについてお聞きしたい……。


099 女M:そこまで言って辞めてしまった。あの店員の名前は愚か、顔の雰囲気や声、身長など、特徴となるものが何も分からなかったから。


100 女:あ、ごめんなさい。なんでもないです。……ランチセット1つ、アイスコーヒーで。



(終)



-------- ✽ --------



Special Thanks

すふれ司様


こちらの台本は「   」作:すふれ司様の二次創作として書かせて頂きました。原作の数年前のお話と思って頂ければ幸いです。原作者様に感謝を込めて。