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ニューヨークを拠点とする稀代のドラマー/パーカッショニスト/作曲家の【Eli Keszler】による、フィールド・レコーディングを多用したコンセプチュアルな作品。

2021.07.23 10:25


ニューヨークを拠点とする稀代のドラマー/パーカッショニスト/作曲家/サウンド・アーティストの【Eli Keszler】



〈Empty Editions〉、〈ESP Disk〉、〈PAN〉、〈Shelter Press〉といった先鋭的なエレクトロニック・ミュージックのレーベルからリリースを重ね、前作『Stadium』ではBoomkatのアルバム・オブ・ザ・イヤーに選出。


1983年に米国マサチューセッツ州ボストン近郊のブルックラインでユダヤ系の家庭のもとに生まれた。

母はプロのダンサー、父は医療機器の販売業者だったがアマチュアのミュージシャンという環境の中、歳の頃よりドラムの演奏を始め、11歳の頃には作曲にも取り組み始めた。

先進的なジャズ・ミュージシャンを輩出したことでも知られるニューイングランド音楽院へと進学。ピアニストのアンソニー・コールマンとラン・ブレイクらに師事し、ドラマー/パーカッショニストとして修練を積むとともに作曲などを学んだ。卒業後はロードアイランド州プロビデンスで音楽活動を始め、のちにニューヨークへと拠点を変えて活動。



その後、ローレル・ヘイロー『Dust』やワンオートリックス・ポイント・ネヴァー『Age Of』への参加で活動の幅を広げる。

高い評価を得た前作『Stadium』から3年ぶりにリリースされた今作。

(出典 ele-king 細田成嗣)




アルバム中、ドラム、パーカッション、ヴァイブラフォン、マリンバ、フェンダーローズ、その他多数の楽器がイーライ自身によって演奏されている。ゲストには往年のコラボレーターでもあるヴィジュアル・アーティストのネイト・ボイスがギターシンセで参加、更に中国やクロアチア、その他世界中のさまざまな場所で録音されたサウンドが使用されており、中には渋谷の富ヶ谷公園のサウンドも含まれているという。また、本作はアメリカの抽象主義、夢のような古代のメロディズム、インダストリアルなパーカッション、アメリカの1920年代ジャズエイジのフィルムノワール、帝国の衰退などの様々な要素の断片が散りばめられたコンセプチュアルな作品。



『Icons』は、旅行や輸出入といったことが事実上停止していた時に作った音楽だ。僕は夜な夜なマンハッタンを歩き回って、車のアラームが数ブロック先まで聞こえるような、誰もいない静かな街の録音を集めた。そこでは、電気の音や自転車のギアの音といったものが大半を占めていた。昨年はずっとマンハッタンに滞在していたけど、1つの場所にあんなに長く滞在したのはここ10年の中でも初めてだった。マンハッタンは基本的に閉鎖されて、不規則なペースで動いていた。救急車、抗議活動、ヘリコプターなどの激しい状態から、美しくて奇妙な、穏やかな静寂のような状態まで、街が揺れ動いているように見えた。僕はそこで、何か奇妙で美しいことが起こっていると思ったんだ。権力が崩壊し、人々が変化していた。『Icons』では、僕たちの目の前で劣化して朽ち果てていく神話的な表現を用いて、僕らの壊れやすくて不安定な現実の中に美を見出すような音楽を作ったんだ。 - Eli Keszler




前作より、世界中の場所で録音されたフィールド・レコーディングを多用しながら(中には日本の渋谷の音も)、幾重にも重ねた音のレイヤーでジャズや電子音楽、アンビエント・ミュージックを構築したジャンルレスでコンセプチュアルな内容になっています。






Eli Keszler 『Icons』