FlyFisher №.300
岩槻教授と佐藤成史さんの繋がりを経て、ここ宮崎にいらっしゃった佐藤成史さんをご案内したのは、4月終盤のこと。
あの本屋さんでよく見かけるフライフィッシング専門誌、“FlyFisher”の取材でした。
ところで個人的な話しですが、私は最近50歳を越えて、何となく、でも何回も友人にこう言っていました。
「50歳になったらね、健康とファッションが大事だよ。格好よく年を取る準備をしなくちゃ。」
と。
そんな矢先の早朝、取材初日、迎えに行ったビジネスホテルの玄関に現れた佐藤さんの姿は今でもはっきりと覚えています。
荷物が山ほど入っているのであろう、パタゴニアのどでかいブラックホール・ダッフルバッグを軽々と抱え、頭の先から足元までほぼ全てこれまたパタゴニアのウェアでキリっとスマートにまとめ、軽快な足取りで車に乗りこんでこられました。
車中での会話も機知に富んでいて、話題に対するYesとNoを即座に、はっきりとおっしゃいます。
合計3日間、渓流を一緒に歩いたのですが、中でも食生活の話しが一番印象的でした。
「私の基礎代謝はですね、1,890㎉なんです。だから、それだけ食べても太ることはないんですよ。」
「野菜が好きですね。朝はヨーグルトとバナナ、夜はキャベツを色々アレンジして食べます。」
「真夏の渓流での昼食は?」
と聞くと、
「ナッツと炭酸水だね。これが1番。でもナッツは普段の生活でそんなに摂っちゃダメ。カロリーが高すぎるから。」
アルコール類は一切摂らない。ましてやタバコなんてもってのほか。ベジタリアンとまではいかないけどキチンと食事の管理をして日々のエクササイズを怠らない。
一回り年下の私や、さらにその半分のKIDと一緒に谷間を歩いても体力的にほとんど見劣りしない。
それどころか、岩と岩の間をピョンピョン身軽に跳んでいくスピードと精度は、私たちよりはるかに上でした。
こんな還暦過ぎの人を私は見たことがない。健康とファッション性を兼ね備えてて、なおかつ一流のルポライター、それが佐藤成史という人物でした。
そして何より、実際の釣りと魚の写真撮影。
流れにステイするヤマメを偏光グラス越しに素早く見つけ、フライラインで芸術的なループを描き、フライをスムースに水面に落とし、ヤマメの鼻先に漂わせる。
ランディングしたら、特製のネットにヤマメを優しく横たえて、少しの魔法をかけると、彼らは催眠術にかかったようにピクリとも動かなくなる。
大げさではなく、本当なんです。佐藤さんが撮影を終えて次のポイントに行っても、彼らはそのまま。一体いつ目が覚めるんだろうって思ってしまうくらい。
3日間同行しても、自分が釣りをしたいという気は全く起こりませんでした。もっともっと見ていたい。そんな気持ちしかありませんでした。
前置きが長くなってしまいましたが、この時の様子を佐藤さんがレポートした記事が、先日発売されたFlyFisherに載っています。
しかも、なんと創刊34年目、数えて300号というそれこそ滅多にないタイミング。
設立間もない私たちに、このように素敵なご縁をくださった編集部の方々にもこの場を借りて心からお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
肝心の記事、何度も何度も読ませていただきました。
その日その日に佐藤さんが何を見、何を感じておられたのか、私の脳裏に焼き付いたワンシーンと合わさって、あの数日間が思い出されます。
またその膨大な経験値から、私たちが九州の隅っこで普段接しているヤマメたちが、はるか遠い東北や伊豆半島の個体群とも似ているといった記述もあり、普段岩槻教授に教えてもらっている分布の状況とも似通っているその内容に、渓流魚たちの持つ果てしないロマンを感じています。
(ただ1ヶ所、「滝壺を覗き込むと、そのまま吸いこまれてしまいそうで背筋が凍りついた。」という記述は明らかに事実と違うと思います。。。あの時悪ふざけしてタイタニックの名シーンまで真似してみせた時の笑顔は決してそんな風には見えませんでした。)
そして何より、後半1ページ以上も割いて私たちの活動をご紹介いただき、感謝とともにあらためて身が引き締まる思いがします。ご期待を裏切ることがないようにこれからしっかり前進してゆこうと思います。
佐藤さんが宮崎にいらっしゃるまではルアーアングラーばかりの私たちでしたが、私を含め、少しずつフライフィッシングを始める者、久しぶりに再開する人が増えてきました。
最後にまたまた個人的なことで恐縮ですが、10数年後、佐藤さんのように谷底を跳びはねてまわれるように毎日少しずつ節制し、健康とファッション性を兼ね備えた釣り人を目指します。
何より、川に入ると一気にテンションが上がって、1匹釣るごとにまるで子どものようにはしゃぐことが出来る、その心を失わないようになりたいです。
またいつか、近い内にお会い出来ますように。そして、トんだトーシロですが、その時はほんの少しフライフィッシングのレクチャーをお願いしようとたくらんでいる日々です。
(文・写真:KUMOJI)
※佐藤さんの釣行の様子を記録したYouTubeです。今後何回かに分けて皆さんにお届けする予定です。
(動画作成:BORAYAN)