営業予定+今週の1冊
【営業予定】
7/26(月) 12時〜18時営業
7/27(火) 12時〜18時営業
7/28(水) 定休日
7/29(木) 定休日
7/30(金) 12時〜18時営業
7/31(土) 12時〜18時営業
8/1(日) 12時〜18時営業
【今週の1冊】
『スウィングしなけりゃ意味がない』佐藤亜紀(KADOKAWA)
ナチス政権下のドイツ・ハンブルクが舞台の青春小説。
軍需会社経営者の父を持つ15歳の少年・エディが主人公。
ユーゲントたちをダサいと馬鹿にしているエディは悪友たちと共に「スウィング」にハマる。
ここで言うスウィングとはアメリカで流行ったジャズ音楽でナチス政権下では適性音楽として禁止されている。
夜な夜な仲間達と共にスウィングを楽しむが、ゲシュタポに捕まることもある。
その都度、親に尻拭いをしてもらうが、全く反省はせずにまたスウィングをしに夜の街に繰り出すエディたちの姿はどこか爽快だ。
しかし、戦況の悪化が進むにつれて今までのようにスウィングできなくなり、エディの人生においても暗い影を落とし始める。
(本当に)よく知らずに調べもせずにこの小説を読んで思いついたことを書くが、スウィングジャズの面白さが何かというとリズムや音の「崩し方」にあると僕は思う。反復するリズムや音からどれだけ離れることができるか?しかしギリギリで「スウィングジャズであること」からは離れないところにその魅力があるのではないかと勝手に想像している。
何が言いたいかというと、作中で主人公たちが夢中になっているスウィングと同様に、主人公の生き方自体にもこのどこまで自分を崩すかという試みが現れているように思うのだ。
戦争という大きな出来事を前に否応なく変化せざるを得ない状況ではあるのかもしれない。
何かを諦めた結果の選択ではあるのかもしれないけれども、でもその「崩し」の仕方にエディの人生観のようなものが現れているように思うし、エディがエディ自身であることは変わらないと感じられるラストだった。そのことを一つの希望だと僕は捉えたい。
青春ものとしても戦争ものとしてもおすすめできる1冊。
【関連しておすすめしたい本】
・『戦争は女の顔をしていない』1〜2巻(漫画版)小梅けいと/原作・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/監修・速水螺旋人(KADOKAWA) ※7/26(月)現在在庫有り
→ノーベル文学賞を受賞したジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが取材した第二次世界大戦従軍女性500人の証言が詰まった原作(『戦争を女の顔をしていない』)を漫画化したもの。原作の冒頭に付された「人間は戦争よりずっと大きい」という言葉が作品の随所で通底している。
洗濯部隊、狙撃兵、軍医、衛生指導員など様々な語り手の証言によって構成されている。
一人一人が語るその人自身の人生や戦争体験にも惹き込まれるのだが、語り手の記憶に残っているちょっとした出来事や人物に関する語りがまた印象深いものが多い。
僕が特に心惹かれたエピソードを二つ紹介する。
一つ目は、部隊の退却中に出会った道端に立っている一人の女性の話。
その女性は通り過ぎる兵隊の一人一人にお辞儀をし「どうか神様が無事に家に帰らせてくれますように」と唱える。兵隊たちは涙を流しながら通り過ぎていく、その道端の女性と語り手の間に何か密接な関係があるわけではなく、ただそういう出来事があったと語って終わる。
二つ目は、部隊の中で狙撃が一番上手でたくさんの敵を狙撃した女の子の話。
赤いマフラーがお気に入りで肌身離さず身につけていた。
しかし雪の中ではとても目立つのでそれが元で敵に狙撃されて亡くなってしまう。
なぜこの二つのエピソードに僕が心惹かれたかというと、
戦争の最中やその戦線の中で、一人一人のために祈りを唱えたり、自分が死ぬリスクがあろうとも赤いマフラーを身につけるといったその人の行為には、それをせざるを得ない、その人の人間性のようなものが現れているように感じられるからだ。
僕はそれに強く打たれたのだと思う。
ここで紹介したのはごく一部でまだまだ人間性について考えを促されるエピソードは山ほどある。現在も連載中の漫画でネットでも読むことが可能なのでよかったら読んでみてほしい。
余談だが、NHKの番組「100分de名著」の8月のテキストが『戦争は女の顔をしていない』だそうだ。講師がこの本をどのように読み解くのか視聴したい。
・『文化人類学の思考法』松村圭一郎・中川理・石井美保編(世界思想社) ※7/26(月)現在在庫有り
→人間とは何か?を考える時に、文化人類学では人間間や文化間にある「差異」を比較することを足掛かりにしている。文化人類学と一言でいってもたくさんのフィールドがある。どのような理論をもとに各分野(自然や技術、環境、芸術、国家、医療など)のフィールドに臨めばいいのか、その基礎が学べるのが本書だ。分野間における共通項なども書かれていて「文化人類学」の大枠を掴むことができる良書だと思う。
ここでは戦争関連ということで、
佐川徹さんが担当している9章「戦争と平和 人はなぜ戦うのか」をおすすめしたい。
「人はなぜ戦うのか」を問うと同時に、「人はなぜ戦わないのか」、また「人はなぜときに暴力の拡大に抗う行動をとるのか」という問いを同時に提起する必要があるという。
「暴力」にも物理的なものもあれば精神的なものもある。
戦争だけではなく、暴力についても考える手立てがほしい時に読むととても良いと思う。
10数ページでそんなに長くないのだが文章の完成度が素晴らしくて読むたびに発見があるテクストだ。