歪みを力に
東京オリンピック、連日オリンピアンたちの熱闘が繰り広げられています。
ジャマイカ出身のウサイン・ボルトは、オリンピックの陸上競技100m、200m、4×100mリレーの3冠を3大会連続(北京、ロンドン、リオデジャネイロ)で達成しました。
後に北京でのリレー金メダルが剥奪(メンバーのドーピング問題)されたため、通算金メダルは8個となりましたが、まさに世界最速の男。
身体と才能に恵まれて…と思いきや、身長195cmの長身はスタートダッシュが鈍くなるため短距離走には不利なのだそうです。
しかも、彼が脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)であることをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
脊柱側弯症とは、背骨が横にカーブを描くように湾曲する症状です。
走ると骨盤が大きく揺らぎ、体幹の左右バランスにも偏りを生じることになります。
素人が見ても、ボルトの走りは両肩を上下させ、左右に大きくブレているのがわかります。
100mのゴール局面では1歩が3m近くにもなるそうですが、歩幅の左右差は20cmもあったとか。
ボルトは故障と闘い続け、曲がった背骨の揺れを抑え込むため、鎧のように筋肉を鍛え上げました。
身体的な歪みを克服しようと努力したことで、超人になったのですね。
そして、カイロプラクティックの治療が支えになっていたことも明かしています。
先天的ではなく、生きていく中で身体が歪んでいくことも多いですね。
運動はもちろん、仕事も生活も左右対称でないことが多いです。
右手で毎日聴診器をあてているお医者さんは、右肩が前に出ていたりする。
片耳にヘッドホンを挟んで仕事する機会の多い音響さんは、挟む方に首が倒れていたりする。
左手に重たいお盆を持ってサービスするホールスタッフさんは、左肩が上がっていたりする。
皆さん共通して特に多いのが、腰辺りの左ねじれです。
右利きの人が多いので右手を中心に使う機会が多く、身体が左にねじれがちかもしれません。
ストレスから守るため、身体をねじって耐えていることも多い。
ねじれと自律神経には強い関係性があります。
様々な原因がありますが、中でも一番納得したのは「重たい肝臓を右側に抱えているから」という話。
人体の中で脳に次いで重たいのは肝臓です。
成人男性では約1.5kg、女性で約1.3kgあり、ほとんどの人の肝臓は右上腹部の背中側にあります。
重たいものを長く抱えていることを想像してみてください。
身体の遠くで持つより、重心近くで抱えた方が楽ですよね。
なので、右寄りで後ろ側にある肝臓を楽に持ち続けようと、中心に前に寄ってくる→身体が左にねじれる。
身体を左にねじると、左のお尻が突っ張ります。
臀部のケアでは、右より左の方が痛いと仰る方が多いことからも納得です。
生理学的には、歪みやねじれや左右差がない方が望ましいでしょう。
でも、日常を生き抜くために蓄積された歪みには、その方の強さの秘訣が詰まっていることもあります。
まっすぐに矯正することが為になるのかと考えると、そうとも言えない気がするのです。
歌の歌詞にありました。
「ジャンプするには一度しゃがむの♪」
歪みやねじれをバネにして、力を発揮したいものです。