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住まい逍遥

夫婦+ねこが暮らすマンションのリノベーション_建築家の自邸レポート2

2021.07.27 14:55

建築家・大内久美子さんのご自邸レポートの2回目です。1回目ではBefore-Afterの間取り図を掲載し、リノベーションのポイントを解説しましたので、ぜひあわせてご覧ください。

今回からは、写真を交えて各所を解説します。まずは玄関から。マンションのドアを開けると、目の前はいきなり壁。意表を突かれる演出です。タイル張りの壁に額が掛けられていて、ギャラリーのようですてき。これからどんな室内が展開するのか、わくわくします。

右を向くと、奥に明るいリビングがチラ見え。早く中が見たい!

リビングに進んで振り返ったところ。左手前の白い扉が靴収納。左奥に玄関ドアがあり、突き当りはウォークインクローゼットの扉です。あらゆる出っ張りを消してあるので、狭くてもスッキリ見えます。奥のクローゼットはとても容量があり、服もここにしまわれています。玄関横に服を収納するなんて、ちょっとびっくりですね。限られた面積を無駄なく使い切って部屋を広くとるための離れ業。建築家の自邸だからこそできたことかもしれませんが、固定観念にとらわれず頭を柔らかくして考える姿勢からは、学べるものがあると思います。

こちらがリビングです。窓辺にある逆梁(床の上に梁が出ている)をソファベンチに仕立ててあり、居心地の良い窓辺空間になっています。断熱スクリーンはIKEAのものだとか。「サイズが限られているのが難点ですが、それをクリアできればお買い得ですよ」と大内さん。上げ下げは手で行うのでちょっとめんどうですが、この窓はスクリーンを下ろした状態が基本なので、不便はないそうです。見た目もシンプルで、私もほしくなりました。窓辺は天井も下がっていて籠もり感があります。ペンダント照明がアクセントになっていますね。

リビングは、床も一段下がっていて、カーペット敷き。まわりの床は大判タイルで、硬軟の素材感が対照的。カーペットの上に床座したり、段差の縁に腰掛けたりと、ソファに座るだけでなくいろいろな過ごし方ができます。床は低い部分がデフォルトのレベルで、まわりが嵩上げされています。理由は、キッチンの位置を大きく動かしたために、配管用の床下空間が必要だったから。配管は水が流れる勾配を要しますし、こうした工事はコスト上昇の要因にもなるので、簡単にはいかない場合もあるようです。

人研ぎのような円卓は、どっしりとした重みを感じさせる安定感が気に入っての購入。左のクッションは、モロッコ旅行で手に入れたものだそうです。

壁のニッチは、元々はパイプスペースだったところを利用してつくりました。めちゃツンデレな愛猫のロシアンブルー“コチ”はここがお気に入り。

ソファの横には、エタノール暖炉があります。大内さんいわく、アルコールランプのような感じで炎が出るそう。薪を燃やす暖炉や薪ストーブより不燃化の範囲が小さく済み、煙突も不要のためマンションに向いているそうです。このマンションは古くて窓が単板ガラスのため断熱性が低く、暖炉を焚いても窓のそばでは冷気を感じるそうですが、ペアガラス入りの住戸なら、この暖炉が暖房として十分に機能するだろうとおっしゃっていました。導入時より今のほうが価格も下がり、取り入れやすくなっているようです。

ダイニング・キッチンは、リビングとワンルームになっています。L字のキッチンと作業台兼ダイニングテーブルの組み合わせ。壁と床はタイル。左奥は玄関です。

右下にちらっと見えているのはプロジェクター。テレビは置かず、写真左手の白い壁に投影して見るそう。黒くて大きいテレビを置かないという選択は、部屋をすっきり見せる手段のひとつ。

「このキッチン、狭いけど使い勝手がいいんですよ」と大内さん。くるっと振り向くだけで配膳ができます。移動の際の歩数が少ないのが、使いやすいキッチンのポイントです。大内さんも夫も食べることが大好きで、夕食は一緒に準備するのだそう。コンパクトながら、ふたりで作業ができるスペースは確保されています。

据え置き型の食器棚はなく、テーブルの上に小さな吊戸棚が。二人分の厳選された食器が納まっています。

テーブルには浅い引き出しを組み込んで。こうすると食べている途中で「あ、スプーンがほしい」などとなったときも、立ち上がらずに用意できますね。表面の仕上げは、キッチンと同じMORTEX(モールテックス)という素材。薄塗りできる左官材料でモルタル風に見え、水を通さず強靭。5年前はまだ日本に広まり始めたばかりのころで、キッチンに用いるのは実験的な側面もあったよう。モルタル同様、ヘビーユースにより多少表面が変化していきます。「経年による変化を、“味わい”としてとらえられるなら、アリ」とのことです。

家電は存在感が大きいので、狭いキッチンに並べると圧迫感が出てしまいます。それを避けるため、このキッチンではできるかぎり見せない工夫が凝らされています。炊飯器は、シンク横のスライド式の台を設けて格納。「側面に引き出す」というアイデアは目からウロコ。ここにも、発想の柔軟性が発揮されています。ちなみに、キッチンで最大の家電である冷蔵庫は壁の向こうに置かれているので、ダイニングやリビングからは見えません。

突き当りは白い壁に見えますが、パントリーの扉があるんです。

そして、この窓は実は足元まである掃き出し窓。手前に腰高の内壁を設けています。確かに、腰掛けたときにその方が落ち着く気がします。東面なので、夏場は強い朝日が当たるのを避け、冬場は冷気除けになっているかもしれません。ちなみに、元の間取りではここは個室でした。

大内さんがつくってくださったお昼は野菜たっぷりの和食メニューで、とってもおいしかったです!

次回は大内さんのワークスペース、水まわり、寝室の様子をレポートします。

この家の様子は、以下の動画でもご覧になれます。

大内さんが営む建築設計事務所のHPも、ぜひご覧ください。

詳しいデータは1回目の最後に掲載しましたので、参考にしてください。

では、次もお楽しみに!