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A recollection with you

ミルクティーのこと 編

2018.05.22 15:40

似てる。あの日も、こんな夜だった。

月が大きくて、夏の大三角が見えはじめた、綺麗な夜。


「ふっふんふっふーん」

「何か、良いことがあったのかい?」

「ほら、星がきれいじゃないですか」

「うん?ああ、そうだね」


深呼吸のような祐月さんからの返しが、空に浮かんだ、ように見えた。


カランカラン


「いらっしゃいませ!」

『こんばんは、詩歩ちゃん。マスター』

「やあ、いらっしゃい」


微笑みながら、カウンターに座った。

名前は、梨香さん。近くの会社のOLさん。


「何にしましょうか?」

『うーん…、今夜は、ミルクティーにしようかな』

「かしこまりました」


マスターがお湯を沸かし始めた。

ポエムのミルクティーは、濃いめのアッサムティーを使うから、しっかりした味わいだ。

あたしはカウンターに入って、お水とお手拭きを、梨香さんの前に置いた。


『ありがとう』


あたしは、笑みで返す。マスターは、茶葉をティーポットに入れて、お湯を注いでいた。


「梨香さんがミルクティーって、珍しいですよね。いつもは、カフェオレですけど」

『詩歩ちゃん、気づいちゃった?でも、たまには良いでしょ?』


と言って、梨香さんは、一息吐いた。


『仕事で、ちょっとね。らしくないことすると、へこむよ』

「らしくないこと、ですか」


ミルクが温まる音がする。


『うん。なんて言うんだろう、こう、普段の私と違うことしちゃった?とか』

「考え事してて、ポットにお水入れすぎた、みたいな…?」

『それも、あるかも。そういうことが何日か続いて、何だか、分からなくなっちゃって。元々の私が』

「いまは迷ってもいいさ。それに、ここまでしっかり進んで来れたんだから、これからも進んでいけるさ。はい、お待たせ」


祐月さんが、梨香さんの前にミルクティーを差し出しながら言う。

柔らかく優しい香りが、お店を包んだ。