リユースの効率化を考えてみる
こんにちは。最近加齢臭が気になるCMOのHiroです。
ごくごく一部の愛読者様から「続きはよ!」とのお言葉をいただき至極光栄なのですが、こないだ某大手出版社の出版担当者さんと呑んでいたときに「このブログって将来本になりますかねえ?」と聞いたら「ニッチすぎて無理」って一刀両断されてモチベが下がりきっておりました。
さて、そろそろ「変動費と価格」の話を少しづつしていこうかな?と思っています。リユースの値付けは生命線。ビジネスの根幹です。リテール(新品)やサービス業ならば「多少アカ出しても将来の宣伝費と思って低価格化もしくはフリーミアムモデルにしてライバルを出し抜き垂直的にユーザーベースを獲得しよう」という最近流行りの「ばっくり集めてあとからがっつり儲けるパワープレイ」が有用だったりもするのですが、リユースはそうはいきません。
あ。ソシャゲの話はしてませんよ。はっはっは。
言うまでもありませんが、リユースは「買取のお金が先に出ていく」ビジネスなので乱売したり無用な高価買取をすると「キャッシュ」が枯渇して即倒産してしまいます。
赤字を許容しているとすぐに運転資金がなくなってしまうわけですね。したがって、「集めて収奪する」モデルだと、死ぬほど体力(資金)があれば別ですが持ちこたえられないわけです。
リユースはスタートから着実に黒字を出していく必要があります。(限界利益ベースでは)
起業する際に先輩方から「最初の一年は赤字で持ちこたえられるように」とよく言われますが、それは新品やサービス業のお話で、リユースに関しては「最初から黒字が見込めないならやめとけ」なのです。
もちろん、BtoCのリユースビジネスは手形を切るわけではないので、不渡り2回で終了ということにはなりませんが、手元の資金が減って来れば買取も出来ずどんどん先細っていってしまいます。
一年持ちこたえようというのはどっちかというと人件費や光熱費、宣伝費などの固定費のほうでしてここはまあ、多少営業利益が赤字になっても持ちこたえられるくらいの資金は必要です。
ただし、限界利益。
売上ー変動費ー仕入れ代金
これは最初から黒字でないといけません。
当たり前でしょ?って思われるかもしれませんが、けっこう、イキオイでリユースに突撃してきたリテール畑の方は「仕入れ代金の安さ」だけに目が言ってしまい「変動費」を無視してしまうんですよね。リユースを長くやっている方はこの「変動費」をいかに標準化、効率化させるかがキモであることは重々承知していると思います。
なぜならリユースは査定や出品、いわゆる「撮影・採寸・原稿(ささげ)」というリテールにはないコストがかかってくるからです。
これ以外にも宅配買取の場合は送料やダンボール代などの資材費が大きなネックになります。
新規参入組はこの見積もりが甘い。
特に返送なんてあった日には「往復送料」痛いよお・・ですね(笑
これを「効率化」ではなく「数の理論」。つまり人海戦術でどうにかしようって言うチンパンが多すぎ問題もあります。
大量生産工場を目指そうとしてしまうんです。
大量生産工場でいけないの?効率化できるやん?
はい。それは「買取量という波が一定の場合」です。
言い換えると工場の生産量に応じて材料の仕入れを完全にコントロールできる場合です。
リテールや工場と違うのは「買取量はアンコントローラブル」、いえ語弊がありますね。ある程度のボリュームはビジネスに合わせて入ってきますが季節や曜日、他社のキャンペーン、などで一定幅の波動があります。
一定幅の波動を吸収できる大量生産ラインは「どの物量にミートしてスループットを設定するか」でどこかに綻びが出てしまいます。
平均値なのか
最大値ー手空きの手当なのか
最小値+残業や派遣で対応なのか
平均値や最小値に合わせるとピーク対応ができず、査定待ちができます。
最大値に合わせるとピーク時以外は手空きが出てしまい、変動費率が悪化します。
どちらがいんだろう?って悩んでいるライン担当の方多そうです(笑
先輩方から「ほんとそれ」って声が聞こえてくるようですが
皆さんならどこにミートさせて人員計画を立てますか?
ボクの経験値ですが平均値くらいにミートさせて「査定待ち日数」でバッファをとっているところが大半ではないかと思います。もちろん、販促とリンクしてある程度の需要予測を行って人員を配置しているところもあるでしょう。
これは少なくとも査定ラインに手空きが出ない最善策ですね。
しかし考えてみてください。
査定ラインに空きを出さずに効率的にオペレーションをしている!ドヤ!と胸を張る前に誰かが割りを食っていませんか?
お客様です。
良い悪いの綺麗事を申すつもりは毛頭ありませんが、この戦略は業務効率化のために「お客様の待機時間」をオフバランスさせていると言い換えることができます。つまり「お客様を待たせることとトレードオフで効率化をしている」という事実は受け入れないといけません。
アンケートを取ってみても、(高額品でない限り)お客様もある程度の待ち日数は許容して頂けます。特に片付け目的の買取利用だとお客様は査定時間に無頓着だったりしますね。
ですが早いに越したことはありませんよね。
ボクがよく利用する家電系の買取業者さんはほぼ確実に翌日に査定連絡があります。
けっこうリユース的な需要期(引っ越し時期とか年末とか)でもその速度は変わりませんのでどんなオペレーションをしているのか謎なのですが。
さて
- 年間通じて査定待ち日数が一日以内でかつ現時点で最善の効率化が出来ている
これはすごいです。どうぞ胸を張ってください。ボク風情がしのごの言う余地は全くありません。
- 通常は一日だけど増えてくると3日~1週間待ちになっちゃうね。
これはあまり胸を張らないでください(笑
お客様に「お待たせしてサーセン・・」って言いながら精進しましょう。
いやいや、じゃあ逆に聞くけど年間通じて待ち日数を最短固定にしてなおかつ効率化なんてできるのか?とそろそろイライラされていると思います。
できます。
買取量の定義を考えてみる。
買取量は買取GDP×買取価格指数×買取弾性値で決まります。
買取GDPというのはボクの造語でGDPに意味はありません(笑
単純に貴方のビジネスが持っている基礎的な買取量のボリュームです。
追加コストを払わずとも入ってくる買取量の「最小値」と思ってもらって結構です。
毎月入ってくるお給料のようなものです。これは過去のブランディングや再利用、継続利用によるものです。
買取価格指数は買取価格のインデックス値(買い取り価格を指数化)です。ただ、単純に売価比率で全体平均するとボトムの低価格に引っ張られてしまうので、キロ買いするような商材を除いた日経平均のような主要商材の平均値で算出します。ようするに売上原価率の変形版ですね。これは人事評価のようなものです。
買取弾性値、これは競合の状況、広告投下量、季節値、トレンド値など複合的な買取にインパクトの有る係数を取れる範囲で指数化します。これは日々の努力値+偶然要素のようなものです。
言い換えると
買取(ボーナス込みの年収)=
買取GDP(お給料)x買取価格指数(人事評価値)x買取弾性値(努力値+偶然性)
こんなイメージです。
実は、買取GDPは買取価格指数と強い相関にあります。言うまでもなく宣伝費と相関が強いのは皆さんご存知なのですが、こちらはあまり意識していない方が多いと思います。
買取価格指数を下げようとすると実は買取GDPが下がります。
人事評価が下がると給料が下がっちゃう。もちろんここは会社の仕組みに寄りますがそんな雰囲気で捉えてもらえれば良いです(笑
簡単に言うと安く買い叩く状態(人事評価が低い状態)が続くとお客さん(上司の心)が次第に離れてしまうということです。こわいこわい。
僕は目先の収益性だけを追求してこの状態になった企業を緩慢な自殺モードに入っていると呼んでいます。
買取価格指数を下げて短期的に収益性が上がったとしても、一旦下がった買取GDPを引き上げるには買取価格指数を戻すだけではだめで、相当な追加コスト(買取弾性値の引き上げ)が発生してしまいます。いったん下がった評価って固定観念化してしまってなかなか覆りませんよね・・
買取GDPはあなたのビジネスが持つバジェットですから、これが下がるとビジネスが先細りしてしまうのです。
つまり買取価格指数を下げるのではなく買取GDPを引き上げる。バジェットを増やす。このほうがはるかに経済効率はいいわけです。
買取価格指数を引き下げるのは買取GDPが増えて「広告を打たなくても買取が来すぎて困っちゃう」ってなってから検討すればいいのです。
買取価格指数はしばらく固定とした場合、買取弾性値のみが振幅に影響します。つまり季節性や宣伝費計画に基づいてあるていど人員計画が立てやすくなるわけです。このあたりの分析・・要因のスライス(分解)ができてないのにいろいろなことを一気に実行してしまうので何が効いたのか効いてないのか検証できなくなってしまい、「なんとなくうまくいった」「よくわからないけどだめだった」ということが起きやすくなります。
また、買取GDPは理論上限はありませんが「物流センターのキャパ」という物理限界があります。買取GDPが物流センターのキャパ上限に近づいて来れば「宣伝は少しでいいか」となってきますので、より計画の精度が上がってくるわけです。
そろそろまとめに入ります。
変動費率を効率化し、査定待ちもミニマムにする一つのヒント。
それは第1段階として「センターのボトルネックの生産量」にミートするのが適正です。
あ・・・あれ?今までのGDPとかの説明は一体・・??
少しお待ちを(笑
第一段階はスループット(売上ー変動費)の向上。つまりボトルネックを解消しながら買取~出荷までの生産量を最大化する必要があります。売上の増大に関しては理論的な限界がありません。センター総経費や変動費はゼロ以下には絶対になりませんが、売上は理論限界がないからです。(あくまで理論値ね)
センターの生産性はボトルネック工程の能力以上には絶対に向上しません。例えば査定の処理量が単位時間あたり120として、その後の撮影が100だったとします。この20は「仕掛品」として滞留するだけです。つまり部分最適で「センター総費用」が下がることは絶対にありません。
査定工程 仕掛品 撮影工程 出品工程
120 20 100 100
こうなっちゃうわけです。
センターの作業工程プロセスの中で顧客の要求を満足させるために必要な能力は、作業工程プロセスの中で一番能力の低い工程(ボトルネック)によって決定されているにもかかわらず、それ以外の工程の生産効率を向上させることで、収益を上げようとしているからいつまでたっても収益が出ないのです。
スループットを最大化するには生産量をボトルネックにミートさせ各工程の仕掛り在庫を減らすことことです。これは数学的に証明が可能だそうです。
第二段階としてボトルネックを解消しながら全体の生産量を引き上げ、仕掛り在庫を減らし、変動費を削減し、センター総経費を減らします。
この順番が大切です。
つまり
スループット=買取量
とするのが「最も効率化した状態」といえるわけです。
買取量にスループット合わせるのではなく、スループットに買取量を合わせる。
一般的にはこの逆転の考え方が収益性を最大化する最重要ポイントとなります。
ただしこの考え方は収益性は高まりますが、事業の成長性に少しブレーキをかけることになります。
従って現在伸び盛りなのか、ある程度安定化してセンターの理論限界に近いかでバランスよく施策を打つ必要があります。
続きはまたこんど!