ジョジョの奇妙な冒険 第1部〜第5部 荒木飛呂彦が描く正義と冒険を追い求めるジョースター家の男たちの奇妙で苛烈な戦い
Part1『ファントムブラッド』
舞台は19世紀末のイギリス。英国の青年貴族である主人公ジョナサン・ジョースターと、下層階級の出身ながら類稀なカリスマ性と野望の持ち主ディオ・ブランドーの抗争劇。
「石仮面」や「波紋」を背景に、2人の成長や対立が描かれている。
ディオの父親がジョナサンの父親と関わりを持ったことからディオの父親が死んだ後、ジョースター家の養子となったディオは、ジョナサンの父親に漢方の毒薬を使って毒殺を計りジョースター家の乗っとりを企むが、父親が弱っていく原因に気付いたジョナサンがディオの企みを見抜き、貧民街で出会ったスピードワゴンの力を借りてディオを追いつめる。
乗っとり計画が破綻して人間の限界を知ったディオは、ジョースター家に眠っていた石仮面を装着して不死身の吸血鬼となり世界征服を企む。
吸血鬼を倒す波紋法をツェペリ男爵から学んだジョナサンは、ツェペリ男爵やスピードワゴンと共に吸血鬼や黒騎士ブラフォードとタルカスと激闘を繰り広げ、ついにジョナサンはディオと雌雄を決する。だがこれは、ジョースター家とディオの因縁の始まりだった。
Part2『戦闘潮流』
舞台は1938年のアメリカ。再び世界大戦の足音が聞こえ始めた中で、ジョナサンの孫のジョセフ・ジョースターもジョナサンと同じく「波紋」を身に付けていた。ジョゼフは、ジョナサンとは正反対な軽い性格だが、ジョナサンに負けない正義感と冒険心の持ち主だった。
そんな中スピードワゴン財団は、人類を遥かに凌駕する知的生物「柱の男」を発掘する。波紋法の使い手でありながら密かにディオに憧れていたストレイツオに石仮面を、「柱の男」をナチスドイツに奪われてしまう。
自分を殺しに来たストレイツオを倒したジョゼフは、ナチスドイツに捕らわれたスピードワゴンを救うために「柱の男」の一人サンタナと戦ったことから、波紋法の使い手リサリサが所有するエイジャの赤石によって究極生物になろうとする「柱の男」を倒すため、ジョセフとシーザー・ツェペリはイタリアで波紋法の修行をして「柱の男」を追い各地を奔走する。
Part3『スターダストクルセイダース』
舞台は1987(88年説あり)年の日本。100年の時を経て、ジョナサンの肉体を乗っ取ったDIO(ディオ)が復活した。
それと共鳴するかのようにジョセフの孫の空条承太郎に、幽波紋(スタンド)という能力が発現する。
DIOの影響によって危篤に陥った母の空条ホリィを救うため、承太郎はジョセフやアヴドゥルやディオの洗脳から承太郎に救われた花京院やディオの配下に妹を殺されたポルナレフと共にDIOの潜むエジプトを目指す。
Part4『ダイヤモンドは砕けない』
舞台は1999年の日本。ジョセフの隠し子の東方仗助の住む杜王町では、スタンド使いが増え続けていた。
その原因を調べていくと、かつてエンヤ婆がディオにスタンド能力を発現させた弓と矢が関係していることが分かり、弓と矢の所有者虹村兄弟や弓と矢でスタンド能力を発現した間田や音石朗や漫画家岸辺露伴たち数々のスタンド使いと戦う中で、杜王町に潜む真の敵に辿り着く。女性の手に異常な執着を示す連続殺人鬼吉良吉影。触った物を爆弾にするキラークイーンの能力、さらにまともに戦うことも困難を強いられるキラークイーン第3の能力バイツァダストに苦戦を強いられる仗助たちは、杜王町を守るため、仗助と仲間達は町に潜むスタンド使いと闘いを繰り広げていく。
Part5「黄金の風」
イタリアのネアポリスに住む少年ジョルノ・ジョバァーナは、ジョースター家の宿敵・DIOの血を継ぐ息子であった。ジョルノは周囲から迫害され、悲惨な少年時代を送っていたが、名前も知らないギャングの男性との出会いを経て「ギャングスター」になるという夢を抱くようになる。
西暦2001年。15歳に成長したジョルノは、イタリアの裏社会を牛耳るギャング組織パッショーネとトラブルになり、組織のブローノ・ブチャラティに襲撃される。2人は同じ能力者、スタンド使いであった。勝利したジョルノは、ブチャラティに「パッショーネのボスを倒し、組織を乗っ取る」という自らの野望を告白し、その想いに共鳴した彼はジョルノを自身のチームに引き入れる。パッショーネは「スタンドの矢」を所持し、多数のスタンド使いを抱えるギャング団であった。
パッショーネに入団したジョルノだったが、正体不明の存在である「ボス」に近づくには組織の中でのし上がっていくことが必要不可欠であった。ジョルノはチームの仲間たちと信頼関係を築いていき、ブチャラティは組織の幹部へと昇格するが、その直後にボスの隠し子である少女・トリッシュ・ウナの護衛任務を命じられる。トリッシュは組織を裏切った暗殺チームに狙われており、ボスはブチャラティに「娘を守れ」と、組織に「裏切者を狩れ」と命令する。ジョルノたちはトリッシュを守りながらボスの待つヴェネツィアを目指す。
だが、ボスのもとに到着したブチャラティはボスの真意が「娘を守ること」ではなく、「娘を自らの手で確実に始末すること」だったと知る。トリッシュを庇ったことから組織を追われる身となったブチャラティは、「ボスを倒す」という意志に賛同した者だけを連れてその場を後にし、ボスは裏切った彼らに追手を差し向ける。
組織を裏切ったジョルノたちが生き残るためには、無数の追手をかわしつつ、ボスの素性を暴き、殺して成り代わるという、無理難題を成し遂げなければならない。追手を退けながらボスを倒す手段を探る過程で、かつて空条承太郎と共にDIOと戦ったスタンド使いジャン=ピエール・ポルナレフから通信が入り、スタンドを進化させることのできる「矢」の存在を知らされたジョルノら一行は、ポルナレフから矢を入手するべく合流地点であるローマのコロッセオへ急ぐ。
しかし、正体を現したボス・ディアボロは先に矢を奪おうと、ポルナレフを急襲する。矢の争奪戦の末、命を落とした仲間たちの遺志を継いで矢を手にすることに成功したジョルノは、矢の力でスタンドを「レクイエム」に進化させ、ディアボロを撃破する。
ジョジョの魅力のひとつは飽きさせないサスペンス風味のバトルだが、第1部での波紋法を使った吸血鬼とのバトルは「バオー来訪者」の延長線にあるパワーとパワーのぶつかり合いだった。
第2部からは相手の心理を読み相手のペースを乱したりする巧みな心理戦の要素が加わり、第2部第3部第4部では、第2部でのジョゼフVSエシディシ戦やジョゼフVSワムウ戦や、第3部での承太郎VSンドゥール戦や花京院&ポルナレフVSJガイル戦や花京院VSデスサーティン戦や承太郎VSダービー兄弟戦やポルナレフVSヴァニラアイス戦や承太郎VSディオ戦や、第4部での仗助VS岸辺露伴のチンチロリン対決や仗助VS音石朗戦や岸辺露伴VSじゃんけん小僧のじゃんけん対決や仗助VS吉良吉影戦、第5部でのブチャラティvsベッシ&プロシュート兄弟戦やジョルノたちvsディアブロ戦など忘れ難い名勝負を産み出し、「ハンター&ハンター」などに影響を与えた。
ジョジョの魅力もう1つは、魅力的で人間味あふれるキャラクターの魅力。
第2部での主人公ジョゼフは、ジャンプコミックの主人公らしからぬ努力が嫌いでチャラいけど熱い正義漢で実力差のあるワムウなどの敵にも最後まで挑むタフなガッツの持ち主だし、シーザー・ツェペリはチャラい女ったらしだが父親とシーザー家の血統にプライドを持った誇り高い男、第3部での空条承太郎は熱い正義漢だがクールでタフな主人公、ディオに1度は屈した弱さを持っているが常に冷静な花京院典明や感情的になりやすいポルナレフや人間に媚びないけどガッツのあるスタンド犬イギー、第4部での温厚だが自分のヘアスタイルを貶されるとキレる東方仗助やあまり賢くないけど友情に篤い虹村憶泰や「面白い漫画にはリアリティが必要」というポリシーの下で自分のスタンド能力を使ってネタ集めをする岸辺露伴やディオの肉の芽によって化け物になった父親を殺してくれるスタンドの使い手を探す虹村形兆やあまり賢くないし人懐っこいけどお金にがめつい重清そして悪役で連続殺人鬼なのに目立たず平穏に生きていくのが願いでしぶとい吉良吉影、第5部でのギャングでありながら麻薬を売るギャングを許さないブチャラティや元警官のギャングであるアバッキオや食うことが好きなミスタやブチャラティなどを兄のように慕うナランチャなどグレーなキャラクターの数々のように人間的な弱さと正義感が入り交じったキャラクターが魅力的。
ジョジョの魅力の3つ目は、主人公は敵と戦うために特殊能力を身につけるけどディオのように人間性を捨てずに戦うところ。
ジョジョ第3部での承太郎とディオの対決でのディオの「世界」のスタンド能力に冷静な判断力と熱い怒りで立ち向かい打ち砕く決着、第4部での吉良吉影のキラークイーン第3の能力バイツァダストでの運命の力に単なる人間である川尻早人が知力と胆力の限りを尽くして立ち向かい仗助が吉良吉影を倒す大きな役割を果す展開、第5部では勝負の決着を決める「弓と矢」をジョルノたちが命懸けで受け渡しながら新たなスタンド能力「レクイエム」を発現させてディアブロを倒す展開は、荒木飛呂彦さんがジョジョで表現する運命に立ち向かう自由意思と使命や意志を受け継いでいく人間讃歌が的確に表現された名場面。
ジョジョを語る上で欠かせないのが、いわゆる「ジョジョ語」と呼ばれる名台詞。
洋楽の歌詞などに影響を受けた荒木飛呂彦さん独特な言葉使いや世界観を凝縮させた名台詞は、他の追随を許さない。
「無駄無駄無駄!」「ふるえるぞハート!燃え尽きるほどヒート!」「やれやれだぜ」「てめーの敗因はたったひとつだぜ。たったひとつのシンプルな答えだ。てめーは俺を怒らせた」「だが断る!」「お前に味方する運命なんて、お前が乗れるかどうかのチャンスなんて、今ここにある正義の心に比べればちっぽけな力なんだ!」「覚悟とは暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ!」「俺は正しいと思ったからやったんだ。後悔はない。こんな世界とはいえ俺は自分の「信じられる道」を歩いていたい!」などの名台詞は、読む者に力をくれる名台詞ばかりです。