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#001 継続的な関係について

2021.08.06 03:19

by Motandhel

 研究についての文書は残さないことにしている。後世で何かの動乱の際に悪用されたくないからだ。僕の研究は僕だけが理解していればいい。十数年、数十年――数百年に一度、共有できる人がいればそれでいい。共有することが出来なくてもきっと自分は構わないだろう。

 これは飽くまで旅の記録だ。旅と、それから初めて経験している他者との継続的な関係(きっと他にいい言い方があるだろう)についての記録だ。いつまで続くかはわからないが、この記録を「日記」という位置づけにしてみようと思う。僕が彼のことを日記に記すのが、彼にとって不愉快なことでないといいのだけれど。

 彼と――アズルとなぜこれだけ親しくなったのか、実はよく思い出せない。特別似通ったところがあるわけではなく、むしろ彼は僕とは正反対のタイプだ。なんでも器用にこなし、思いやりがあって、そしていつもユーモアを忘れない。彼とは何度かアンドーンテッドの仕事で顔を合わせたあと個人的な用件で会うようになり、説明のつかない妙なきっかけでまどろっこしく牽制的な会話を交わし、それを何度か繰り返して今に至ったように思う。この頃はそんな会話もなくなった。会えばただ自由に街を歩き、思ったことを口にし、望むままに互いに触れ合う。目まぐるしい毎日において、彼と過ごす時間は静かで穏やかだ。

 書きなれない文章に慣れようと思い、最初のページにこれを綴った。次はもう少し日記らしいことを書き記すように努力をする。気移りしやすい僕がこの日記のことを忘れなければの話だけれど。