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#117.音楽のお仕事 その2(演奏の仕事)

2021.08.16 21:48

前回の記事では様々な音楽に関係するお仕事にはどのようなものがあるのかをざっくり紹介しました。今回はもっと具体的にひとつずつお話してみたいと思います。

ちなみに、前回の記事はこちらです。

プロの定義と報酬

その前に、前回もお話ししましたが音楽にはすべてを統括するような資格や組織がありませんから、プロの定義がはっきりしておらず、人によって認識が大きく異なります。ちなみに私の中での線引きは「音楽に関する行為によって金銭的な報酬が発生した」です。


そして、その報酬の発生には大きく分けて2通りあり、ひとつはどこかに所属(契約)して、給料をもらって仕事をする場合と、依頼(行為)があるごとに報酬が発生する場合です。


非常に現実的な話ですが、給料が発生する音楽のお仕事に就ける可能性は本当に低く(しかもその給料だけでは十分な収入にならない場合も多く)、ほとんどの音楽を職業としている人は後者のタイプで、都度依頼を請け、仕事をこなす自営業(商品は自分)のフリーランスとして活動しています。


では、この先は演奏のお仕事をより細かく分けてみましょう。


演奏のお仕事


プロオーケストラ、吹奏楽団等の楽団員

多くの音楽家を志す人の多くが最も憧れるお仕事であると同時に、社会的にいわゆる「音楽家」とはこの立場の人だと考える人が多いのではないかと思います。


日本においてプロ楽団は数えるくらいしかありません。しかもその中で管楽器はそれぞれのパートに数名しか席数がないので、楽団員が定年退職をされたり他の楽団に移籍するなどがなければ、入れるチャンスすらほとんど訪れないのです。


仮に席が空くと楽団がオーディションを開催し、書類審査や実技審査、試用期間を通過して正式な楽団員になれます。そのオーディションに応募する人数は、私が知っている限りで1つの席に対して150名程度集まった記憶もあります。単純計算150倍、凄まじいです。しかもコンクールではないので絶対に1人決まるかというとそうでもなく、対象者なしで終わってしまうことも過去ありました。


プロ楽団の公演プログラムの中で大きな編成の作品を演奏する場合など正団員だけでは人数が足りない場合、外部から奏者を呼んで協力してもらう「エキストラ」という形でのお仕事もあります。


自衛隊音楽隊

(自衛隊、警察音楽隊、消防音楽隊については申し訳ないのですがあまり知識がありませんので、ホームページなどから入手した情報を元に書いております。詳しくは各方面へお問い合わせください。)


自衛隊音楽隊に入隊希望をする人もとても多いです。一般のプロ楽団に入るのとはだいぶ違って、そもそも自衛隊は演奏家以前に自衛官なので、入隊するための音楽以外の試験がたくさんありますし、入隊してからも他の自衛官と一緒に訓練もするようです。そして陸海空合わせて音楽隊は全国に沢山ありますので、どこに配属されるかはその時のタイミングで異なるようですし、数年で必ず異動があるのだそうです。参考までにリンクを貼っておきます。


警察音楽隊

警察音楽隊も自衛隊と同様、警察官になることが前提で、しかも数年間警察官として通常の勤務を経験した後に希望を出して入隊するのだそうです。したがってこちらも音楽以外の勉強や知識、体力作りも必要になります。参考までにリンクを貼っておきます。

消防音楽隊

こちらも消防士になってから入隊の希望をする、という流れになるようです。ただし、自治体によっては臨時の音楽隊を外部から募集することもあるようで、この場合は消防士ではなくても音楽隊で演奏することができるとのこと。しかしこれは先ほどプロ楽団でも出てきた「エキストラ」のようなものでしょうから、給料ではなく演奏に参加したぶんだけ報酬が発生する、と思われます。


詳しくはわからないのですが、楽器経験がなくても入隊ができるとか、実技試験などがないとか、希望の楽器を担当できるかはわからないとか、そういった言葉をちらほら目にしました。

こちらもひとつだけリンクを貼っておきます。


音楽事務所に所属する

音楽事務所、と言っても範囲が大変広く、その事務所がどのようなテーマで仕事をしているのかで内容が大きく変わります。例えばポップスを専門としているとかクラシックをメインにしているとか、ブライダル演奏者の派遣を専門とした音楽事務所などもあります。音楽事務所に所属するためにはほとんどの場合何らかの形でオーディション(コンクール要素が強いものもある)が行われ、優秀(趣旨に合っているとか、将来性があるとか)であれば所属という形になるのだと思います。国際コンクールで優勝したとかですと音楽事務所のほうからオファーが来たりもするのではないかと思います。音楽事務所は様々なコンサート業務等の企画や奏者の斡旋(売り込み)をするところですから、所属していればフリーランスに比べて演奏のお仕事が流れてくる可能性はあります。一般的に個人名が知れているソリストさんやプレイヤーさんはどこかの音楽事務所に所属されていると思って良いと思います。


寄せ集めのオーケストラ、アマチュア楽団へのエキストラなど

どこか(誰か)が主催した演奏会で奏者を集めていて個人として声がかかる、というものがあります。例えば市民合唱団が定期演奏会で第九をやりたいから、必要な人数の器楽の奏者が呼ばれる、といった流れです。経験上ですが、主催と強い繋がりがある人が各楽器の知人に声をかけて、そこからさらに必要な人数分の奏者を探してもらう、という伝播するような集まり方をすることが多いです。


また、先ほどプロ楽団からの依頼でエキストラとして参加するお話がありましたが、市民楽団などの団体からサポートとして演奏依頼がくる場合も考えられます。


ブライダル、テーマパークやイベントの演奏

結婚式で演奏する機会というのは結構あります。他にも自治体や楽器店が主催のイベントとか、テーマパークでの演奏などいろいろありますが、その仕事をするためにはやはりオーディションによる選考が最も多いパターンだと思います。


レコーディング

テレビ、映画、バックバンドなどのレコーディングのお仕事です。トランペットの場合のこのお仕事はどちらかと言うとクラシックではなくポップス系のお仕事のひとつです。言い忘れましたが、トランペットの世界はクラシックとポップスで活動領域が分かれていることがとても多く、クラシックの人がポップスのレコーディングに参加されるというのは非常に少ないと思います。

また、ポップスのレコーディングに参加した場合、そのままライブでも共演することも多いと思います。レコーディングの演奏をメインに行なっている人をスタジオミュージシャンと呼びますが、境界線は曖昧です。


自主公演の開催

ソロリサイタルや室内楽(アンサンブル)、ライブなどをどこかの主催事業に参加するのではなく実費(持ち寄り)で開催することもあり、自主公演と呼ばれます。ただ、自主公演は十分な収益を発生させるのは非常に難しいです。なぜなら音楽を専門に学ぶ人は音楽マネジメントを学んできていないからです。これについてはこの記事の続きとして今後書きます。


ちなみに、仮に収益が発生するのであればYouTubeでの「吹いてみた」動画の配信やツイキャスでのライブ配信などもこのカテゴリーに入ると思います。



ということで、ここまで思いつく限りの演奏のお仕事を挙げてみましたが、これらは時代によっても仕事の形態は変わっていきます。


こうして列挙するとわかりやすいですが、演奏のお仕事のほとんどは単発での開催です。どこかに所属をして給料をもらって演奏ができる環境にいられる人は非常に少なく、ほとんどの人が「フリーランス」という状態で音楽の仕事を続けているわけです。


コロナ禍で苦しい思いをしている音楽家が多いのも頷けると思います。


今回は演奏のお仕事についてでしたが、音楽に関連する仕事は演奏以外にもたくさんあります。次回はもっと幅広く様々な音楽のお仕事を紹介しますので引き続きご覧ください。

それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

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