つまり二十歳になったので
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「幼馴染から一歩進ませて」
三歳差の幼馴染同士がすったもんだするような、日常のような、けれど非日常のような。そんな一幕。
上演時間:約20分~
演者:2人
比率:♀1 ♂1
一人称、男女変更可。
内容を著しく改変しなければアドリブも可です。
(登場人物)
三枝 真琴(さえぐさ まこと)/女性(23)
普通のOLやってるお姉さん。
もしかしたらあと三年遅く生まれたかったのかもしれない人。
上枝 史(ほつえ ふみ)/男性(20)
顔も良ければ声も良い。そしてそれに自覚があるタイプ。
あと三年早く生まれたかった人。
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『つまり二十歳になったので(つまりはたちになったので)』/真中夜
https://mnkitybook.amebaownd.com/posts/20100005
役表
♀真琴:
♂史 :
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真琴「ツマミ」
史 「よし」
真琴「酒」
史 「よし」
真琴「会場、私の部屋。よし」
史 「よし」
真琴「参加者……って、本当にコレで良かったの?」
史 「勿論。とっとと始めるべ」
真琴「ほいほい。それじゃ、我が幼馴染 上枝史くんが二十歳を迎えたことを祝って。かんぱーい」
史 「かんぱーい」
○真琴・史-缶ビールを雑に飲む
真琴「あーおいし。どうですか、初めて飲んだお酒の味は」
史 「まあ、飲めないこともない」
真琴「あはは、なにそれ」
史 「不味くはない。美味いかと言われたら微妙、的な?」
真琴「ふーん。それならビールじゃなくて別のやつ飲んでみる?」
史 「や、これで良い」
真琴「さいですか。あ、唐揚げどーぞ」
史 「どーも。んじゃ、枝豆どーぞ」
真琴「どーも。……うわ。これ、なんか滅茶苦茶実感させられるね」
史 「何が?」
真琴「史とお酒飲んでるーって。ツマミの交換とか、なんか、凄く、クる」
史 「それはようござんした。今日から俺も大人の仲間入りでーす」
真琴「そう言われると実感湧かないんだよねえ」
史 「どっちだよ」
真琴「……どっちも?」
史 「どっちもとは」
真琴「んー、お酒が飲めるようになったことと、史が大人になったことが、いまいちイコールで繋がらない」
史 「俺としては早くイコールで繋いで欲しいところですねえ。史くん泣いちゃう」
真琴「泣かないくせに」
史 「そりゃね。真琴に格好悪ぃとこ見せたくないし」
真琴「男は泣くと三割増しで格好良くなるって聞いたことあるけど」
史 「それどこ情報よ」
真琴「三丁目に住んでるトメばーちゃん」
史 「いや誰」
真琴「知らない? 若かりし頃に、イケメンヤクザと海外マフィアのボスとの間で三角関係を築き上げたトメばーちゃん」
史 「……いや、誰」
真琴「まぁ、最終的に四丁目のノリじーちゃんと結婚したんだけど」
史 「へえ」
真琴「なんかすごいよね」
史 「そうだな。なんかすごいな」
真琴「……何の話してたんだっけ?」
史 「俺が大人になったって話」
真琴「あぁそうだったそうだった。……遂に史が、二十歳かあ」
史 「二十歳ですよ」
真琴「この間まで小学生だったのにね」
史 「いつの話してるんだよ」
真琴「二、三年前」
史 「普通に大学生やってますけど」
真琴「えー……」
史 「『えー』じゃない。大体、俺と真琴は三つしか違わないだろ。ガキ扱いすんのもいい加減にしろよ」
真琴「チッチッチッ。たかが三つ、されど三つ、ってことよ」
史 「唐揚げおかわり」
真琴「え、聞いてる? 無視? ふみくーん?」
史 「この唐揚げめっちゃ美味いな」
真琴「ガン無視じゃん。まあ良いけど」
史 「これ真琴の手作りか」
真琴「あたりぃ。あんた、昔から唐揚げ好きだったでしょ」
史 「おー、好き」
真琴「そらどーも。作った甲斐があるってもんよ。ほらジャンジャンお食べ」
史 「うーい。……真琴は? 食わないの?」
真琴「私にはこれがあるのでね!」
史 「……枝豆。山盛りいっぱいの、枝豆」
真琴「なによ。なんか文句あります?」
史 「いや、ないけど……枝豆……」
真琴「ジジ臭くて悪かったわねえ」
史 「別にそんなこと言ってない。ただ、ちょっと新鮮だっただけ」
真琴「何が?」
史 「真琴が酒飲んでツマミ食ってる姿。今まで見たことなかったから」
真琴「そらそうよ。これでも一応、未成年の前では飲まないように気を付けてたし」
史 「ふーん。飲んだって良かったのに」
真琴「私が嫌だったの。自分が飲めない物を目の前で美味しそうに飲まれたって、つまらないだけでしょ」
史 「そういうもん?」
真琴「そういうもん。大人として……お姉ちゃんとしてのケジメ、かな」
史 「枝付き枝豆を堂々と掲げる人にお姉ちゃんとか言われても」
真琴「だってもう二十歳になったからね。ケジメもクソもないってもんよ。真琴さんの隠された素顔が明らかにー!」
史 「隠された素顔が枝付き枝豆なのか」
真琴「ドン引きするなら今の内だよ。今日はお祝いの席だからね、寛大に受け止めてあーげーるー!」
史 「いや、逆にますます好きになった」
真琴「……」
史 「あ、枝豆貰っても?」
真琴「ドウゾ」
史 「どーも」
真琴「…………史さあ、酔ってる?」
史 「酔ってないけど」
真琴「本当に?」
史 「本当に」
真琴「これ、指何本?」
史 「一本」
真琴「……こ、」
史 「こ?」
真琴「……こわぁ。え、こわぁ」
史 「なにが」
真琴「いやなんでそんな息をするようにイケメンムーブが出来るわけ? え? こっわ」
史 「息をするようにイケメンムーブはパワーワードが過ぎないか」
真琴「今そこ重要?」
史 「重要だろ。割と」
真琴「重要……? いやまあ確かにパワーワードではあるけれども……重要……?」
史 「じゅーよーじゅーよー」
真琴「……待ってこれただ単に流されただけなのでは」
史 「そうとも言うな」
真琴「言っちゃうんだ」
史 「ま、雑に流したのはそっちが先だし」
真琴「へ。なんのこと」
史 「そういうとこ」
真琴「……?????」
史 「ありったけのハテナを飛ばすんじゃないよ」
真琴「意味が分からなかったら飛ばすしかなくない? 因みにあと十個は飛ばせる」
史 「タチ悪」
真琴「なにが!?」
史 「分かってるくせに誤魔化すところ。ついでにしらばっくれて雑に流そうとするところも」
真琴「……」
史 「沈黙は肯定と見なしますけど」
真琴「うぇっ、あ、いや、そのぉ」
史 「……」
真琴「あ、あははははー……」
史 「まぁいいけど。今日はお祝いの席なんで、寛大に受け止めてあーげーるー」
真琴「これ言うのは良いけど言われると腹立つな」
史 「それは笑う」
真琴「(ビールを飲む)……ぷはっ、よーしビール二本目〜」
史 「飲むペース早くない?」
真琴「普通だよ普通。逆に史はゆっくりすぎない?」
史 「ツマミが美味いのがいけない」
真琴「さっきから唐揚げばっかり食べてるもんね。野菜も食べな」
史 「食べてますう」
真琴「ブロッコリーだけ残してない? 苦手だって言って昔は良く──あっ、残してない!」
史 「とっくの昔に克服しましたけど何か」
真琴「偉い。とっても偉いぞ史くん。御褒美にこの枝豆を譲ってしんぜよう」
史 「はいはいありがとうございますう。ていうかそれ、いつの話って感じだから」
真琴「高二」
史 「……」
真琴「高二」
史 「……なんでそういう余計なことは覚えてるわけ」
真琴「ブロッコリーを残したあんたに可愛げを見出してしまって悔しかったから」
史 「見出すな」
真琴「ブロッコリーを高二になっても苦手にしてた史が悪い」
史 「仕方ないだろ。あのモサモサ感が苦手なんだから」
真琴「モサモサ感」
史 「繰り返すんじゃないよ」
真琴「あはは。かーわーいーいー」
史 「そろそろ格好良いにシフトチェンジして貰えないですかね」
真琴「思わずときめいちゃうみたいな台詞でも言ってくれたら考えるかも」
史 「言ったら言ったで適当に流すくせに」
真琴「そんなことないって〜」
史 「まあ誤魔化してんのも見てて可愛いから許すけど」
○間
真琴「……さっきからさあ」
史 「ん?」
真琴「ちょくちょく爆弾落としてくるの、何?」
史 「そこは流さないんだ」
真琴「知ってる? 心のダムにも許容量ってのがあってね」
史 「はあ」
真琴「『はあ』ではなく」
史 「二十歳になったから」
真琴「から?」
史 「本格的に仕掛けようと思って」
真琴「なにを」
史 「アタック?」
真琴「……バレーのアレですか」
史 「それはスパイク」
真琴「り、陸上競技の」
史 「それはトラック」
真琴「東京五輪……」
史 「オリンピック。これ何の時間?」
真琴「元はと言えば史が『アタック』とかいう横文字を使ったのが原因なのでは」
史 「それはそう」
○間
真琴「……待て待て待て。……史くん? さっきから自分が何を言ってるか分かってる?」
史 「分かってますけど。そっちこそちゃんと分かってんの?」
真琴「エッ? あっ、まあ、まあまあまあね?」
史 「駄目じゃん」
真琴「いやあ。ちょっとね、今、ストレートだと思って構えてた球が実はデッドボールだったみたいな衝撃を受けて脳味噌がキャパオーバー中でして」
史 「つまり突然口説かれて驚いていると」
真琴「くど、」
史 「口説いてますけど。え、何自覚なかった? そんな鈍かったっけ?」
真琴「黙秘権を行使します」
史 「警察と犯罪者じゃないんだから」
真琴「言葉にされた衝撃に思わず」
史 「じゃあ自覚はあったと。ま、そうでなきゃ雑に流さないか」
真琴「……なんていうか、そういうことなのかなと思ったり、思わなかったり……気の所為なのかな、甘えの延長線上なのかな、と思ったり……」
史 「へえ」
真琴「似たようなことならこれまでもあったはあったし。……でも、それだけだったから」
史 「じゃあ改めて言うけどさ。今、真琴のこと口説いてるよ」
真琴「……は、ははははハッキリ言うじゃん」
史 「そっちは滅茶苦茶戸惑ってるね。驚いた?」
真琴「……ウン」
史 「しかも弟同然だと思って接していた、年下の幼馴染に」
真琴「ウン」
史 「……戸惑ってるところゴメンなんだけどさ」
真琴「うん?」
史 「俺、真琴のこと、姉だと思ったこと一度もない」
真琴「え」
史 「ガキの頃からずっとアンタに首ったけ」
真琴「がきのころから、ずっとあんたにくびったけ」
史 「うん」
真琴「……」
史 「え、急に黙るじゃん」
真琴「……いやさ」
史 「うん 」
真琴「顔が良いとこういう時に困ると思って」
史 「何が」
真琴「色々と」
史 「なんで」
真琴「なんでって、……心臓が」
史 「うん」
真琴「不整脈起こしてうっかりときめきかけた」
史 「ときめくとどうなるの」
真琴「恋に落ちる」
史 「……そうかー恋に落ちるのかー、恋に落ちても構わないんだけどなあー。というか落ちてくれ」
真琴「テンションの差が凄い」
史 「言われたこっちの身にもなってみろ」
真琴「世界は私を中心に回ってるんで無理です」
史 「なるほど自分のことで手一杯と」
真琴「真面目に分析しないで貰えるかなあ!?」
史 「はいはい可愛い可愛い」
真琴「おざなりに褒めるんじゃないよ! てか可愛い言うな!」
史 「なんで」
真琴「いやだって、華のJKもJDも過ぎた女に『可愛い』って言われても、ねえ?」
史 「え、なんで」
真琴「……なんでなんでって、二十歳にもなって駄々っ子ですか史くんは!」
史 「いや、本気で可愛いと思ったから可愛いって言ったんだけど」
真琴「へ」
史 「駄目だった?」
真琴「いや駄目じゃない……けれども……」
史 「ならいいじゃん」
真琴「……あんたさあ」
史 「うん?」
真琴「顔と声が良いから許されてるけど。本当に、顔と声が良くなかったら許されてないからね。その台詞」
史 「自覚済みでーす」
真琴「カーッ! 祝いの席じゃなかったらその横っ面に真っ赤な紅葉を咲かせてるんですけど!?」
史 「世界に感謝! あ、唐揚げおかわり」
真琴「むかつくう! はいどーぞ!」
史 「どーも。ていうかさ、真琴だって俺の事を『可愛い』って言ってたんだからお相子じゃない?」
真琴「私は良いんだよ。お姉ちゃんだもの」
史 「俺が『お姉ちゃん』って認知してないんで駄目ですう」
真琴「駄目じゃないですう」
史 「駄目ですう」
真琴「駄目じゃないですう」
史 「駄目ですう」
真琴「駄目じゃないですう!」
史 「……真面目な話さ」
真琴「うん」
史 「俺じゃ駄目?」
真琴「駄目」
史 「そこは『駄目じゃないですう』って言ってくれないんだ」
真琴「だって弟としか見れないし」
史 「さっきときめきかけてたのに?」
真琴「と、歳離れてるし?」
史 「たかが三歳差じゃん」
真琴「……社会人と大学生、だし」
史 「じゃああと二年経ったら付き合ってくれる?」
真琴「……」
○間
史 「否定材料はそれだけですか」
真琴「うううううう」
史 「何その呻き声」
真琴「やり込められて悔しい声」
史 「どこからその声出してんの」
真琴「喉」
史 「それはそう」
真琴「……」
史 「……ね、落ちてよ」
真琴「何に」
史 「恋」
真琴「まだ言うか」
史 「本気だって」
真琴「私なんかよりもっと良い子がいるでしょうに」
史 「真琴が良い」
真琴「そこは『真琴が一番』って言い切らないんだ」
史 「真琴以上に良い人がいたとして、それでも絶対真琴を選ぶって言った方が現実的で安心しない?」
真琴「ウッワ言い方が手馴れてる」
史 「こんなこと言ったの生まれて初めてなんですけれども」
真琴「嘘だあ」
史 「只今約十六年と七ヶ月分の想いを全身全霊でぶつけてまーす」
真琴「私の心の安寧の為にそのまま内に秘めておいて下さいよ。ついでに腐らせて生ゴミの日に捨てて」
史 「俺に死ねと言ってる?」
真琴「言ってないけど!?」
史 「言ったも同然ってこと。初恋舐めんな」
真琴「初恋なんだ」
史 「そりゃまあ」
真琴「私が?」
史 「真琴が」
真琴「……物好きですね」
史 「物好きですとも」
○間
史 「まあでも、今はそれでいいか」
真琴「え、何突然」
史 「いやだって、そんな顔してくれるんだったら勝算はあるのかなって」
真琴「え」
史 「満更でもないんだろ」
真琴「は」
史 「ついでにそう思ってる自分に驚いてる」
真琴「……な、んのことですかね」
史 「何の事って。鏡見てきたら? 顔まっかっか」
真琴「…………いや、いやいやいやいやいや。お酒のせいじゃないですか」
史 「二本目のビール、一口二口しか口付けてないの知ってますけど」
真琴「ア」
史 「まあいいや。それ頂戴」
真琴「あ! 私のビール!」
史 「……うん、美味くも不味くもない」
真琴「なら何故飲んだ」
史 「なんでだろうね」
真琴「知らないよ」
史 「ねえ顔更に赤くなってない?」
真琴「うるさいな」
史 「あ、これ返却します」
真琴「飲みかけ返されても困るんだけど」
史 「今まで気にしなかったくせに」
真琴「熱烈に口説かれた直後に意識しない猛者がいたら連れてきて欲しい。今すぐに」
史 「あはは」
真琴「笑い事じゃないのよ」
史 「ごめんごめん。『お姉ちゃん』を辞めてくれたのが嬉しくて」
真琴「辞めてませんが。未来永劫お姉ちゃんですが?」
史 「意識しちゃって間接キスも出来ないお姉ちゃんがどこにいるんですかね」
真琴「ここにいるんですよ」
史 「開き直った」
真琴「唐揚げ没収するぞ」
史 「すみません」
○間
史 「あーあ。三が上になる日はまだまだ遠いか」
真琴「なにそれ」
史 「え、苗字」
真琴「……え、苗字?」
史 「苗字」
真琴「……な、な、何を仰っておられるのですか史くん」
史 「勿論逆でも良いけど」
真琴「本当何言っちゃってるの!?」
史 「だから苗字だって。上枝と三枝。『枝』は同じなんだから後は上と三を変えるだけでしょ」
真琴「はあ!? はああ!?」
史 「俺が社会人になったら結婚してね、ダーリン」
真琴「ダ……」
史 「あれ、ダーリンは御不満ですか」
真琴「いや、あの、その、」
史 「だめ?」
真琴「だ……」
史 「だ?」
真琴「っだあああもう! 二十歳の祝賀会終わり! その唐揚げ食べたらお帰り下さい! 帰れ!」
史 「ええー……」
fin.