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daiyuuki 全身当事者主義

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる歴史裁判

2021.08.09 11:03

1994年、アメリカのジョージア州アトランタにあるエモリー大学で、ユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)が講演を行っていた。

彼女はイギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)が訴える大量虐殺はなかったとする“ホロコースト否定論”の主張を看過できず、自著『ホロコーストの真実』で真っ向から否定していた。

ある日、アーヴィングはリップシュタットの講演に突如乗り込み、名誉毀損で提訴する。

訴えられた側に立証責任がある英国の司法制度で戦うことになったリップシュタットは、“ホロコースト否定論”を崩さなければならない。

彼女のために英国人による大弁護団が組織され、アウシュビッツの現地調査など、歴史の真実の追求が始まる。

2000年1月、多くのマスコミが注目するなか、王立裁判所で始まった歴史的裁判の行方は……。

ホロコーストがあったかどうかを主題にした裁判の顛末を映画化したリーガルヒューマンドラマ映画。

アーヴィングたちホロコースト否定論者は、ヒットラーが欧州でホロコーストの命令を出していないこと、アウシュビッツのガス室にいるユダヤ人の写真が発見されていないこと、アウシュビッツの図面の細かな不明点などを根拠に、ホロコースト否定論を主張している。

それに対しデボラの弁護団は、アウシュビッツのガス室にいるユダヤ人の写真がないのはナチスが証拠を残さないために撮影を禁止していたこと、ポーランド軍がアウシュビッツを解放した際の資料を元にガス室があった場所にガスの残留物が発見されたこと、1933年にヒットラーがナチス親衛隊隊長のヒムラーに「ベルリンからユダヤ人を移送すること」を命令した事実をアーヴィングが曲解して逆な意味に解釈して著書を書いたこと、アーヴィングが仲間内の会合で人種差別的な内容の演説をしたことを突いて、アーヴィングの著書での主張の信頼性を問題視した。

裁判の判決は本編を見て確かめてもらうとして、ヨーロッパではアーヴィングのようなホロコースト否定論者が、日本では南京大虐殺や関東大震災時の朝鮮人虐殺否定論者が、アーヴィングのように歴史的事実をねじ曲げあったことをなかったことにしようとすることによりナショナリズムを煽り排他的な流れに導く扇動者が、フェイクニュースやポストトゥルースを作って騙す動きがある現代だからこそ、デボラやデボラの弁護団のように歴史的事実を客観的に研究して歴史的事実をありのままに伝え、人々が歴史的事実についての知識を知ることが、フェイクニュースやポストトゥルースで惑わす扇動者に対抗する手段であることを、デボラとアーヴィングの裁判は教えてくれる傑作ヒューマンリーガルドラマ映画です。