Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

アマデウスの旅27-最後の傑作「レクイエム」

2021.08.10 10:21

「魔笛」の好調ではしゃいでいたモーツァルトは、妻をバーデンに迎えに行ったのだが、身体の不調を訴え、レクイエムを完成できない、自分は毒を盛られたのではないか、と言い出す。サリエリ犯人説はここから出てくる。11月20日には寝込んで立ち上がれなくなる。現代の説によれば連鎖球菌性咽頭炎からの合併症とのことだ。

1791年12月6日、35歳の若さでこの不世出の天才は夭折した。最後の作「レクイエム」はモーツァルトの指示を受けていた弟子のジュスマイヤーが完成させて、1793年12月14日依頼主のヴァルゼック伯爵によって初演された。

レクイエムは死者のミサで演奏される音楽で、歴史は古い。本格的にはルネサンスから作曲され、バロック時代には声楽に器楽演奏が付けられて次第に大きくなる。アマデウスの前にもヨハン・クリスチャン・バッハなどが作曲している。静かでバロック的な曲である。

しかしアマデウスの作はまるで異にしている。何よりもその悲劇的壮大さである。彼の作品は長調を使い、美しいものが多いが、これは全体短調で、魔笛の明るさの後にこの音楽を創ったのかと思うと、その懐の深さが思い知らされる。アマデウスは宗教音楽から出発したが、最後にそれに戻ったといえる。