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#122.音楽のお仕事 その7(お金と音楽 後編)

2021.09.20 22:20

さて前回は「お仕事とお金」のお話で、吹奏楽指導を例に出して、自分の商品価値を考えてみましょう、というところまでお話しました。

前回記事まで6つ書きましたが、もしよろしければそちらもご覧ください。

そして、これら一連のお話に加えて、仕事を請ける際にもうひとつ必ず考えておかなければならないことがあります。それは「先方の提示する額」です。


提示額との比較

多くのお仕事は金額の提示が先にあります。ですので、前述の自分の商品価値と照らし合わせてふさわしい額であるかを考えるべきなので、あらかじめ自分のできる仕事すべてにある程度の金額を設定しておくことをおすすめします(それぞれのお仕事の平均的な相場を知っておくと良いです)。


もちろんお仕事を請けるかどうかは金額だけで決めることではありません。自分自身がチャレンジしたいこと、興味のある内容、先方との関係など様々な要因が判断材料になりますが、報酬額は必ずその中に含めなければなりません。そうしないと、『音楽家あるある「貧乏暇なし満足」状態』に陥ります。スケジュールだけパンパンに埋まって、それに見あった収入がないのです。この手のタイプの人は、もはや収入額が経費よりも下回るボランティア状態のものまで全てを含めて「仕事」と主張することが多く、自分のスケジュール表が仕事で埋まっていないと精神的に不安になるため、なりふり構わず予定を入れたくなる良くない状態です。


ただ、予定が入るというのは、それだけ声をかけられているとも言えるので、若いうちは金銭的には少し辛いけれど、たくさんの繋がりを作っていくことは、将来につながる可能性が大きいので、一概に無駄ではないと思います。しかし、一度その額で受けた仕事の金額を上げてもらうのは結構大変なので、後々の交渉するタイミングが発生する可能性は持っておくほうが良いと思います。特に部活指導はあらかじめ年度内予算が決まっているため、賃上げ要求は非常に難しいですし、子どもたちとの繋がりなどで情が生まれるためにいろいろと葛藤することになるかもしれません。


そのあたりを十分考えた上で、活動していけると良いと思います。


お金を稼ぐ目的

さて、お金を稼ぐというのは何のためかと言いますと、まずは「生活をするため」ですね。

学生の頃にお金を稼ぐ目的は、多くの場合「欲しいものを買うため」とか、お金に対しての見方がかなり違うと思いますが、それは、生活する上で必要なものはご両親など家族が払ってくれていたからです。はい、感謝。礼。


生活をするために必要な額は地域や様々な条件で変わっていきますが、支払わなければならないものを挙げてみましょう。


・各種税金、年金、国民健康保険料

・食費、生活必需品

・ライフライン(電気、ガス、水道、通信など)

・家賃

・仕事にかかる経費(楽器関連、備品、楽譜・書籍、練習場代、通信費、機材、移動費など)

・貯金(医療費など突然必要になるお金)


最低限これらを支払える額を手に入れる必要があるわけで、例えば東京で一人暮らしだったら20~25万円くらい収入があると安心かな、と感じます。そのように自分が生活するために必要な額を前提として自分がどんな仕事をどのくらいの額でどの程度行えば良いのか考えてみると、いろいろ見えてくると思うのです。この時、仮に「自分は演奏しかしない!俺は演奏家になる!」とルフィのごとく決めてしまうと、選択肢が少なすぎて「え、じゃあ演奏の仕事が少なかったら俺どうするの?」と、いきなり死亡フラグが立つわけで(そのプライドは素晴らしいですが)、だからこそ過去の記事「#119.音楽のお仕事 その4(今、何をすべきか)」で触れたように、自分ができることを多く持って裾野を広くしておくと、収入の可能性が広がり、多少安心感を持てるわけです。

また、私自身も経験がありますが、音楽だけで収入が賄えない場合、アルバイトを平行して行うことも多いと思います。それ自体は全く否定しませんし、素晴らしいと思います。ただひとつ、アルバイトをしていない時としている時で音楽に向かう時間や質に差が出ないように心がけます。アルバイトでの体力的・精神的疲労から、本業がおそろかになってしまえば本末転倒、意味がわからなくなってしまいます。


私の場合は、週に2.3回、早朝からお昼までのバイトをしていました。音楽だけでは不安だった収入額の補填が目的だったため、アルバイトをもっと長く、多く入れさせようとする店長さんに絶対に屈せず、ショボショボ働いていたので面倒な人材だったと思います。

しかし、バイト中は常に音楽に関わらない時間であることが自分にとっての焦りになっていて「こんなことしているのは時間の無駄ではないのか」と考えてしまい、精神的にかなりダメージがあったのは確かです。


リミットを定めない

「30歳までに結果を出せなかったら音楽を諦める」などの言葉をよく耳にしますが、個人的な意見としては未練が残るのでオススメしません。というのも、人生は自分のスケジュールや都合とまったく関係なくいつどんなタイミングでオーディションが発生するか、デカい仕事が来るかもわかりません。逆に、音楽とは全然違う分野に突然興味を惹かれたり、違う分野でのチャンスが訪れた場合、しかもそれが自分にとって非常に魅力的だった、なんて可能性もあります。人生なんて本当にどうなるか全然わからないのですから、自分の気持ちに正直に生きるのが良いと思います。ただし、後悔や失敗を防ぐためにすべての判断は衝動的ではなく、必ず将来をシミュレーションした上で行動するべきです。



ということで、音楽のお仕事について、書いてみたら7回にもなってしまいましたが、それだけいろいろ考えなければならないことが多いということですね。どこまで参考になるかわかりませんが、将来音楽に携わって生活をしていきたいと考えている方が少しでもイメージしやすくなれば幸いです。


音楽は未経験の人が突然入ってこられない「専門職」と呼ばれる分野の仕事です。専門職はその世界に入るのも、そこに止まり続けるのも非常に苦労や努力が必要ですが、その中に「楽しさ」「やりがい」「意義」を見出していけるようにしてほしいと思います。人生は夢だらけ。


では、また来週!




荻原明(おぎわらあきら)

トランペットオンライン講習会第10回目「アーバン/華麗なる幻想曲を演奏しよう その2」 10月2日(土)開催

オンライン講習会、次回は10月2日開催「アーバン作曲『華麗なる幻想曲を演奏しよう』」の後編です。前回に引き続き現役音大生の方にご協力いただき、この作品すべてを完成させます。

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