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なぜ日本ボクシング連盟は「サンデーモーニング」張本氏の女子ボクシング蔑視発言に抗議文を送ったか

2021.08.12 03:09

過去にも数々の波紋を広げてきた“張本節”もついに大御所のたわごとでは済まなくなった。

日本ボクシング連盟は11日、東京五輪の報告会を行い、TBS系の「サンデーモーニング」の番組内でコメンテーターを務める野球界の“ご意見番”張本勲氏(81)から「女性及びボクシング競技を蔑視した」と思わせる発言があったことに対し10日付でTBSの佐々木卓社長宛に抗議文を送ったことを明らかにした。問題発言が起きたのは8日の「サンデーモーニング」。 

リモートで出演した張本氏は、東京五輪の女子ボクシング、フェザー級で入江聖奈(20、日体大)が日本ボクシング女子として史上初の金メダルを獲得したことに触れ、「女性でも殴り合い好きな人がいるんだね。どうするのかな、嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って、こんな競技好きな人がいるんだ。それにしても金だから、“あっぱれ”をあげてください」と発言した。 

「女性でも」や「こんな競技」など女性及び競技としての女子ボクシングを蔑視したとも取れる発言内容に対してSNS上は大炎上したが、ここまで長期プランを練り、「女性も楽しめる・活躍できる競技でなければ競技の普及や発展には繋がらないとして考え、世界に倣って啓発と普及に努めてきた」(抗議文から)連盟としては、この問題は看過できず、正式に抗議文を発送した。 連盟の内田貞信会長は、「サンデーモーニングは大好きな番組でよく見ている」とした上で「ボクシングを愛している方々、女性のためにも誤解をされたくないので抗議文を出させていただきました。もっと理解をもってボクシングを見ていただきたい。入江も並木も礼儀正しく、女性らしい気配りのある素晴らしい人格を持った選手。誰もの模範となるような女性ですので、ボクシングを理解していただき、張本さんにはスポーツの楽しさ、価値観を伝えていただけるように要望したいと思っております」と、抗議文を発送した経緯について説明した。 連盟では役員に女性を登用するなど「調和と多様性」を確保する組織改革にも積極的に取り組んでいるという。 

抗議文では、そもそもボクシング競技が五輪での歴史が長く「技術・戦略・戦術を駆使する競技で殴り合いではありません」ということを強調。張本氏の「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って」という間違った認識に意義を唱え、さらに女子ボクシングは2012年のロンドン五輪から採用された新競技であり、試合ではヘッドギアを装着し、試合前後の医師による健診、試合中のリングサイドの医師の常駐の義務化など「男子以上に安全面に配慮された」競技であることを丁寧に説明した。「競技を通じて『痛み』を知っているからこそ、他者を尊重し、人に対して優しくできるのではないでしょうか。男性だから、女性だから、ではなく、ボクシング競技を通じて『人間力』が養われた結果であると考えております。 このようにボクシング競技が単純な、暴力的な殴り合いではないこと、技術を駆使した競技であることをご理解いただき、また女性だからそんな競技に取り組むべきではないという、多様性を否定するような番組内でのご発言を、視聴者の皆様に対して、訂正をしていただきたく、文書を発させて頂きました」と、謝罪ではなく発言内容の訂正を求めた。 

張本氏は、過去にも数々の発言で物議を醸し出してきた。五輪競技で言えば、東京五輪から新種目として採用されたバスケットの3×3に対しても、「何が面白いのかね。オリンピックに出るような種目じゃないと思うけどね」と問題発言をしたが、個々の選手がSNSで抗議をしたことはあっても、統括する協会などからのオフィシャルな抗議はこれまであまりなかった。 

今回、日本ボクシング連盟が異例の行動に出たのには理由がある。競技人口が減少傾向にあるボクシング界にとって、女子ボクシングは人気回復のひとつの切り札であり、そのためには注目を集めるための金メダルが必要と、ジュニア世代からの育成に手をかけ、強化合宿を定期的に重ねた。 

強化合宿や海外遠征費用もすべて連盟が持ち、加えて、かつて五輪出場を目指した南海キャンディースのしずちゃんこと山崎静代氏に強化委員&普及委員就任を依頼するなど広報活動にも取り組んできた。

2年前から関東大学リーグの女子トーナメントがスタートするなど、女子ボクシングの普及と強化に尽力してきた。今回、その成果として入江が金メダル、フライ級では並木月海(21、自衛隊体育学校)も銅メダルを獲得。歴史的な偉業を成し遂げた。 

2人のメダリストも、この結果が、今後の女子ボクシングの競技人口増加につながり、女子レスリングや女子柔道のような競技としての認知度を得ることを願っている。 

入江も「2人のメダルをきっかけに女子ボクシングを少しでも知ってもらい、したいなあという人が、小さい方でも主婦の方でもいいので出てくれば頑張って良かったなと思う。競技人口の拡大にも頑張って行きたい」と誓い、並木も「自分と入江がメダルを取ってから、SNSで『娘がやりたいと言っている』と連絡がきたりして嬉しく思っている。今後、もっと盛り上がるように頑張っていきたい」と語った。 

女子ボクシングの輝く未来を開けるためのエポックとなるWメダルだったにもかかわらず、水をかけられるような発言が出てくるのは日本ボクシング連盟にとっては大きなマイナス。

もちろん報道や発言は自由で、そこに規制をかけるつもりも“言葉狩り”をする意図もないが、安全面が確保され、五輪競技として確立している立派なスポーツの女子ボクシングに関して、「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って、どうするのかな」という、前時代的な認識不足の発言で、一般視聴者の誤解を生むことを黙って見過ごすことはできなかったのである。 

さてTBSサイドの抗議文に対する反応である。

TBSに問い合わせると「関係各所に調査中」との返答で「調査が終わり次第、折り返し連絡する」とのことだった。ものの1時間ほどで広報部から連絡があり、「日本ボクシング連盟より抗議文を受け取っております。今後については真摯に対応させていただきます」との公式回答を口頭で伝えられた。抗議文の宛先は、佐々木社長だったが、この回答の主は「TBS広報部」だという。 

「真摯な対応とは何か?」「番組内で張本氏自身が発言を訂正するのか?」などと質問したが、「わからない」の一点張り。

TBSの報道番組などでは、執拗に取材をし、具体的な回答を求めるのに、いざ自分たちが当事者になると木で鼻をくくったようなフォーマット通りの答えを返してきて「真摯な対応」がどんなものは不明のままだ。

15日の「サンデーモーニング」の番組内で、どう対応するか、張本氏の発言にも注目だが、そんなことで視聴率が上がるのも本末転倒している。

張本氏の女子ボクシング蔑視発言は、ボクシングに対する思い込みや男尊女卑的な価値観に基づくもので、「嫁入り前のお嬢さんが殴り合うのを見て面白いのかね」などと女子ボクシングの地位や人気向上の為に努力している連盟側や選手に対して失礼で、「女性は弁えろ」と発言した森喜朗などと同じくらいタチが悪いし、張本氏の失言を見ると野球を上げるために他のスポーツを下げる傾向があるので謹んで欲しいし、「女性はお淑やかに」などと化石のような価値観を押し付ける老害はこのように抗議して誤りを指摘していくことが大事。