1.美味しい魚を食べてほしいという思い(千葉 豪)
―最近ずっとお忙しくされているとお聞きしていますが、どのようなことで、お仕事が盛況になっているのでしょうか?
はい、おかげ様で。
取引をさせていただいているお客さんが、変わった商品を探し始めているというのがあります。他にない商品を扱いたいというのが増え始めて、そのニーズに三陸未来がマッチしはじめたというのがありますね。
―どのようなお客さんと取引されているのですか?
量販店さんとか、外食関係が主なのですが、他社とは違う個性的な会社と付き合いたいということで、取引先も増えてきています。
―主にどんな商品が売れているのでしょうか?
量販店、スーパー関係は、お惣菜です。サバ、ブリの竜田揚げだったり、冬だったらタラの竜田揚げだったり。年間を通して、その時期に合わせたものを作っています。
―変わった商品が求められているという背景は、コロナの影響で、ご自宅でお惣菜や、お取り寄せなど、食べる機会が増えているからということでしょうか?
いえ、このような流れはコロナの1、2年前からありました。これまでは、魚の商品って大体、売るものが決まり切っていて、秋になれば、サンマ、サバという感じだったので、丁度そういうものに、お客さんも飽きてきていたのかもしれません。これまで量販店やスーパーで売られていた揚げ物とか、自分の家で揚げるタイプの加工品は、自分達からしたら、ほんとに美味しくなくて。
―それって、どうしてなのでしょうか?
今までは、鮮度より製造効率重視で、大量生産していたからだと思います。
―コスト重視というのは、一体何が違うのでしょう?
魚が違います。大量生産する工場は、一回に大量に魚を冷凍して買うんです。それを1日に大量に製造するんです。そうすると、サバなんかは一回水揚げして凍結して、解凍して商品作り終わったら冷凍して、また解凍してと、商品作るまでに、多いと3回、4回と冷解凍を繰り返すことになるんです。そうすると魚から水分も抜けて、臭みも出てきて
美味しくなくなっちゃうんです。
―そういう魚を食べていたら、お魚嫌いになっちゃいそうですね。
はい。だから、日本の子供たちは、魚が嫌いなんじゃないかな。と思ってしまいます。
うちの子供たちは、魚が大好きなんですけど、「どうして、魚嫌いの子が多いのかな。」って考えた時に、そういう、美味しくない魚を食べているからなのではないか、と考えてしまいます。
サバとか、イワシなんかの青魚なんはかなり味が変わりますね。元々臭みが無くて、美味しい魚なんですけど、冷解凍を繰り返すような製造をしているものは、物凄く生臭いし。
―お気持ち的には、「魚のおいしさはそんなものではない!」って言いたいですよね。
やっぱりみんな利益を取りたいので、利益率のいいものを売っているのが現状ですね。
でも、最近、段々と冷解凍を減らした食品も出てきているみたいで、そういうのが増えると、魚が好きな人も増えるのかな。と思っています。
―そのような中で、千葉さんの会社で作られている食品が注目されたのはどんなきっかけだったのでしょうか?
自分なんかは、3年位前から(魚の製造方法や栄養分についての)活動していたのですが、はじめは、自分ひとりで言っていても全然聞いてもらえなかったんです。
でも、今回、さんりくみらいという会社を作ったことにしたことによって、結構注目いただけたので、そこから営業して行ったら、「そうだよね。」って話をもらえるようになりました。
―やっぱり一般消費者は、そのように、冷解凍を何度も繰り返しているという事実さえ知らないですもんね。
そうですね。そういうことはみんな隠しますから。買付する人は知っていたとしても、コストにはかなわないんじゃないでしょうか。
―そういうことが、一般消費者にも伝われば、見方がもっと変わってくるのでしょうね。
たまに、「そうだよね。」と同意してくれる、魚のバイヤーをやっているのに魚嫌いな子供たちが増えていくのを嫌だな、と思っているバイヤーさん達もいるんです。
自分たちで一生懸命魚を売っているのに、「どうして子どもたちは、魚をたべてくれないんだろう?」って疑問に思っている人は結構いるので、その人たちに熱く訴えて、「一緒にやりましょう。」って声を掛けて段々増えてきている感じです。増えているって言っても、ほんの微々たるものですけれども。
―そういう活動を全面的にやっていきたいですよね。その辺りが、安心、安全ですよね。
そうなんです。この製造方法は、絶対に地元の、海から近いところではないと出来ないことなので、気仙沼だけじゃなくて、三陸沿岸の漁港も一緒に盛り上がっていけるんじゃないかと思っているんです。