男たちの大和/YAMATO
2005年4月、鹿児島県枕崎の漁港。老漁師の神尾(仲代達也)のもとを内田真貴子(鈴木京香)と名乗る女性が訪ね、60年前に沈んだ戦艦大和が眠る場所まで船を出してほしいと懇願する。
彼女が大和の乗組員・内田二兵曹の娘と知り驚いた神尾は、小さな漁船を目的の場所へと走らせる。
神尾もまた大和の乗組員だったのだ。内田二兵曹の名前を耳にし、神尾の胸裡に60年前の光景が鮮やかに甦ってくる…。
昭和16年12月8日、日本軍の真珠湾奇襲によって始まった太平洋戦争は、はじめ日本軍が優勢であったが、徐々に日本軍は劣勢を強いられ、じりじりと追い詰められていく。
そんな昭和19年の春、神尾(松山ケンイチ)、伊達、西、常田、児島ら特別年少兵をはじめとする新兵たちが、戦艦大和に乗り込んできた。
乗艦した彼らを待ち受けていたのは、厳しい訓練の日々であった。
そんな中、彼らは烹炊所班長の森脇二主曹(反町隆史)や機銃射手の内田二兵曹(中村獅童)に、幾度か危機を救われることがあった。
同年10月、レイテ沖海戦に出撃した大和はアメリカ軍の猛攻を受けた。大和の乗組員たちも多数死傷し、内田も左目に重傷を負い、大和の任務からも外されることとなった。
昭和20年3月、日本の敗色が日増しに濃くなっていく中、大和の乗組員たちに出撃前の上陸が許される。全員が、これが最後の上陸になることを覚悟していた。それぞれが肉親や恋人と思い思いの時間を過ごす。
翌日、男たちはそれぞれの想いを胸に大和へ戻っていく。艦内には内田の姿もあった。彼は軍規違反を承知で病院を抜け出して、恋人の芸者・文子(寺島しのぶ)と別れを告げた後、ひそかに艦に乗りこんでいたのだ。
同年4月1日、ついに米軍は沖縄上陸作戦を本格的に開始。4月5日、草鹿連合艦隊参謀長は、大和の沖縄特攻の命を伊藤第二艦隊司令長官(渡哲也)に下す。
有賀艦長から艦隊命令を通達された乗組員たちは、臼淵大尉(長嶋一茂)に諭され、それぞれの立場で「死二方用意」を始めていった。
4月6日、いよいよ大和以下10隻の艦隊は出航した。そして4月7日、ついに鉛色の雲の彼方から米軍艦載機の大群が大和に襲いかかっていった。大和の46cm主砲が、副砲が、高射砲がこれらを迎え撃つ。乗組員たちの最後の戦いが始まった。
戦艦大和の戦いを、特別少年兵神尾の目線から描かれる戦争映画。
上官の理不尽な体罰に逆らう内田2曹、二等兵たちに生き残ることを考えるよう説教する兄貴肌の森脇二主曹、沖縄でアメリカ軍の輸送船団との戦闘を命じられた伊藤司令官が空軍の対空支援がないことを抗議したり、従来の精神主義で一億火の玉という軍人像ではなく、「何のために死ぬか戦うのか」迷い大事な家族たちのために戦う一人の人間として描かれるのが新鮮。
レイテ沖と沖縄での戦艦大和の戦いの敗因が、時代遅れの大艦巨砲主義にこだわった作戦の失敗にあることもちゃんと描かれている。
レイテ沖とクライマックスの沖縄での戦闘シーンでは、原寸大の戦艦大和を舞台に戦闘機との戦闘では機銃との戦闘をリアルに描かれている。
生き残った神尾の同期の兵を失って生き残った苦悩と「生き残った意味」を探す葛藤。戦争の意味を考えるきっかけには良い戦争映画。
反町隆史、中村獅童、松山ケンイチ、渡哲也、仲代達也などの好演が、印象的。