提案『五感育てに森林浴の薦め』
私が中学生の頃森林浴という今では当たり前のように耳にする言葉が誕生しました。自然を見直し森を再生させる意欲を高め、森林療法の概念を確立することを当時の林野庁が提唱したのです。
森の中を歩いて何が楽しんだろう?海水浴のほうが断然良いと思い、日光浴と何ら変わらないものだろうという認識しかなかったものでした。ところが森林浴の楽しさに気付いたのは子供を持ち北海道でのネイチャーガイドの方に楽しみ方を教えてもらってからで、これは子育て中に絶対堪能すべきことだと痛切に感じたのです。
サクサクと落ち葉の上を音を立てて歩いたり、広々とした草原で風を感じ、風に揺れる葉や枝花を眺めその音を聞き、湿気を含んだ木の幹に触れ、倒木の上を跨ぎひっくり返して昆虫を見つけ、動物の足音や糞、はんだ草跡を見つけその生き物の行動をイメージしたり、川のせせらぎやすんだ川底に目を見張り魚を見つけようと目を凝らし、木の枝に止まる鳥を見つけ観察し、植物の葉や枝種を手にして前進し、動物がひょっこりと姿を現す瞬間は絵画を切り取ったような美しい光景でした。また回数を重ねるたびに季節の変化を感じとても良質な経験でした。
森や林に入っただけで多くの経験ができるこの森林浴、森の探索は驚くほどの効果があります。森の中では子供の目がらんらんと輝き興奮を抑えきれない発見をし、帰りの車中ではエネルギーを発散しすぎて寝息を立て、帰宅後は森の自然を壊さない程度に持ちかえった落ち葉や種を空き箱に並べ図鑑を片手にいろいろ調べることやその種を植えたりと生活に反映されていきました。
最初は何の計画も立てず森の空気感を味わうこともいいでしょう。回数を踏むごとに子供の発見を面白がるような時間にし五感を森で育てることに繋げることができれば素敵だなと思います。私が心掛けて実践していたことがあり以下に書き出しました。皆さんの参考になればと思います。
1、森での宝探し
森に入る前に小さな袋やバックを準備し始めて目にしたもの、変わったもの、興味をそそられるものを集めることを伝えます。すると子供は何かを見つけようと楽しむ行動を取ります。ただし夢中になるあまり道から逸れることもあるのでそうならないように場所を限定することも必要になります。安全確保は大人の責任ですから目を放さないようにしましょう。そして持ちかえるものは自然を壊さないものに限定することです。
2、今体験していることを言葉にする
清浄な森林独特のフィトンチッドといわれる香り(木々が発する殺菌作用のある物質)がすることを言葉にしたり、森や水しぶきが上がる場所でのマイナスイオンの爽快さなどを言葉にして感覚を研ぎ澄ますきっかけを作ります。森の季節に会う歌を歌って歩くこともお勧めします。
3、大きな場所を視覚で意識させる
季節により木々の葉の色や山の色、空の色に雲の様子視覚で押さえる情報を伝えます。一枚の絵を切り取るような風景を目に焼き付けることでイメージ力が育つようになります。
4、聴覚で森を感じる
風の音、鳥のさえずり、水のせせらぎ、葉を踏みしめる音、動物や昆虫の鳴き声、雨音など視覚以上に聴覚を研ぎ澄ます経験をさせましょう。静まりかえる森の中は独特の世界観を感じることができ日常の洪水的な喧騒から離れることができます。
5、嗅覚や味覚も意識させます。
森には木々が生み出す香りがあります。森の中にはいろいろなものの終わりが存在するのですがその匂いを打ち消すフィトンチッドがありかえって爽快感さえ味わえます。その中で土の湿った匂い、花の香り、川辺の香りを堪能できます。また水の味や自然の実を堪能することもできます。
6、生物や無生物に触れて大地や自然を感じる
木々・草花、土・岩・石・苔・昆虫に触れることにより様々な触り心地を感じ多くの発見をすることができます。
7、立ち止まり自然を感じ一体化し、観察をする
森の中には多くの生き物がいます。その生き物を双眼鏡で探し観察したり、息を潜めてその動きに見入ることも良い経験です。
8、絵を画いたり写真を撮る
森の中でスケッチすることも良い経験ができます。その場で完成させようとしなくても構いません。森での経験を後々振り返ることができるように写真に押さえ後日家で完成させることもできます。また写真におさめることで意外な発見をしたり、思い出の一枚として残すことができるかもしれません。
9、森への恩返し清掃
森で楽しんだ後はその空間を壊しているようなものがあれば持ち帰る奉仕の心も育てましょう。そしてなるべくその場にある命あるものは持ちかえらないよう確りと教え、写真を撮るなどして対応しましょう。
最後に森を探索するために何かをしなければならないと力が入ってしまうようでは本末転倒です。森を探索することで心地良さを感じたり、リラックスしてリフレッシュできることが何よりだと考えます。このような経験をさせて効果を得ようとすると案外上手く行きません。回数を重ねて楽しむことが何よりです。