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役立つ!大学の学び 〜多彩な学びのタイプ〜

2021.08.18 07:05

出典元:ライオン企画刊『大学研究マッチングブック』(2021年)より


文献調査/実験・実習

ディベート/フィールドワーク

ゼミナール/研究室/卒業論文


レポート作成のための文献・資料の収集と調査

 与えられたテーマについてレポートや論文を書くためには、これまでに発表された過去の文献や、その研究テーマにおける最新の文献、あるいは関連文献、統計情報など、必要な文献や情報を調査・収集することが必要だ。そして、ふさわしい文献や資料が入手できたら、その内容を参考にしたり引用しながら、自分なりにレポート・論文にまとめていく。学生の学びに欠かせない、この大事な作業のことを、一般に「文献調査」とよんでいる。

 文献調査には、大学の図書館が最も頼りになる存在。また、インターネットや学内外のデータベースやネットワークを利用することによって、これらの文献調査をとても効率的に行うことができるようになっている。


体全体でおぼえる体験型授業の数々

 講義型の授業で理論や技術に関する知識を修得するだけでなく、その科学的な実践の場を、じかに体験して検証していくのが、大学の実験・実習の授業だ。


<実験授業>

 実験を行う授業は、理系が中心で、内容は学部によって異なるが、大量のデータをとり続ける根気強さや、結果に対する科学的な視点、また事故を防ぐための安全面への配慮など、学生に求められる実験への心構えには共通する部分も多い。実験そのものは、学内の実験室や研究室で行われるのが主流だが、状況によっては学外や大自然が舞台になることもある。

 数々の実験もまた、最終的に論文・レポートをまとめるためのアプローチの一環にすぎない。しかし、実験の授業は「あとに生かせる失敗」を数多く体験できるという意味でも、その効果は大きいといえるだろう。


<実習授業>

 大学で行われる実習授業は、きわめて多種多彩だ。よく耳にするものだけでも、教育実習、臨床実習、情報処理実習、企業実習(インターンシップ)など。このうち、医療・福祉系、教職課程などの資格取得課程の学外実習は、制度上義務づけられているが、それ以外の各学科でも実習科目は、大学ごとに工夫され、年々多様化してきている。とくに増えてきたのは学生個々のキャリア形成をアシストする体験型の実習だ。インターンシップはその典型で、多くの大学で導入。企業などでの職場体験を通じて、就業力の育成に役立てている。


2組に分かれ意見を闘わす知的格闘技

 ディベートの授業は、あるひとつの論題をテーマに、学生はそれに対する肯定側と否定側の2組に分かれて、一定のルールにしたがって各自の意見をぶつけあうもので、最後に審判によって勝敗がくだされるという知的格闘技のこと。ディベートの勝敗はどちらの主張が正しいかではなく、ルールを守ったうえで、意見がいかに論理的か、また相手の意見にしっかりと対応できたかなどを基準に判定される。

 こうしたディベートを通じて、「ものごとを論理的に考える能力」「積極的に傾聴する能力」「自分の意見を効果的に伝える能力」「対立する側に立ってものを考える習慣」などの能力が養われることになる。


直接現地を訪れる社会調査活動

 研究テーマによっては、社会の現実のなかにこそ、貴重な資料やデータが満ちているケースが少なくない。フィールドワークは、あるテーマの調査対象の地域や場所(現地)を実際に訪れて直接観察するという、まさにアウトドアで行われる授業のこと。調査対象の関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、そして合わせて現地での資料やデータなどの採取も行うなど、客観的な成果をあげるための調査技法だといえる。

 そして、どんな授業タイプでも同じように、調査のあとには、データ・資料の分析を行い、レポートをまとめていくことになる。また社会学系の学部・学科では、フィールドワークの専門家「社会調査士」の資格取得を指導しているケースも増えてきている。


少人数かつ双方向で行う深い学びの体験

 高校までの授業にはない、大学ならではの科目のひとつが「ゼミナール」、略して「ゼミ」だ。ゼミはある程度の基礎レベルを学んだ学生が、それをベースに専門分野の知識や技能を身につけるため、学生自身が指導教員を選び、その教員の指導のもとに学問研究を演習形式で深めていく授業のこと。大学によっては、「演習」とよばれることもある。

 学生による研究発表や、それをテーマに行う討論など、少人数かつ双方向の実践的な授業であることが、ゼミの特徴だ。ゼミのメンバーによる合宿やコンパが行われることも恒例で、それもゼミの楽しみのひとつである。でも、中心を占めるのはやっぱり学問研究。学生はゼミでの学びを通じて各自の研究を深めながら、より高度な知識や技術を身につけていく。その結果、広い視野に立って世の中を展望する能力がもてるようになる。

 所属するゼミを選ぶには、シラバスやゼミナールガイドで各ゼミの概要を調べたり、所属前に開催されるゼミナール説明会で、各ゼミの特徴を把握する。その後、希望するゼミを訪問し、担当教員や先輩から直接話を聞いたりして決めるのが一般的。とにかく早めに情報を得ることが大切で、重要なのは、自分の関心がどんな専門分野に向いているかを、はっきりと見定めてから判断することだ。


寝食を共にするケースも珍しくない

 理科系学科の学びの真骨頂をあじわうことができるのが、研究室での活動だ。研究室は、学科のめざす専門分野のうち、さらにテーマをしぼって深い研究を行う場。ひとつの研究室に担当教授、准教授、助教など、複数の教員が在籍し、3年生・4年生・大学院生など数十名が所属する、大所帯の研究室というのもめずらしくない。

 研究テーマは、個々の学生ごとに分かれるケースと、数人で共同で行う場合がある。テーマが異なる場合も、お互いの実験を補助しあうことは多く、自然に共同作業のシーンは増えてくる。また細かい実験の技法などは、上級生や院生から学ぶことができるというメリットもある。

 研究室では、試料(サンプル)の収集から、何度も繰り返される実験データの集積など、長期間にわたって行われ、研究室に所属するようになると、大学にいる間のほとんどを研究室内で、寝食までも共にすごすというパターンもめずらしくない。そうした日常から、学年を超えたコミュニケーションや師弟関係という人間関係を学ぶ機会も生まれてくる。

 そして各自の研究テーマに沿って、4年次には卒業研究を行うが、さらに研究を深めていきたいと、大学院に進学するという学生も少なくない。


大学の学びの集大成

 卒業論文は、大学の学びの集大成、総仕上げだ。所属するゼミまたは研究室で、各自が設定したテーマを深く掘り下げながら、それを論文というカタチにまとめていく。

 「論文」を書くうえで大切なことは、人まねではない、その人自身のオリジナリティであり、主張が学問的に論証されていること。このため、文献調査やフィールドワーク、または実験・実習などを通じて、積み重ねた根拠に裏づけられた内容であることが必要だ。

 テーマの設定から論文制作の過程で、何度も担当教員と相談しながら進めていくため、わずかな期間で仕上がるほど生易しいものではない。卒業年次の期間をフルに使って書き上げるのがふつうだ。ただし、卒論はゼミや研究室と同様に、すべての大学で必修とされているわけではなく、卒論を書かずに卒業できる学科も少なくない。それは学科の教育目的によるところが大きく、ないからといってダメな学科とは決していえない。しかし書くチャンスが与えられているならば、ぜひチャレンジしてほしい。なにかを成し遂げることの経験は貴重だし、大学の学びの集大成は、かならずその後の人生の財産になるはずだからだ。


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