最中、好きですか?
海外に住む日本人は時々あんこの味が恋しくなるそうで、あんこを手作りすると聞きました。考えてみれば、「羊羹」、「きんつば」、「最中」、「どら焼き」等々、全てはあんこが関係しています。今インスタを賑わしている「練り切り」も材料のメインは白あんですし、和菓子とあんこは言うまでもなく深い関係にあります。
そしてもうひとつ、和菓子によく使われるのは「米」です。団子もお饅頭も米粉だからこそ、モチモチ食感を楽しめます。そう考えると、茜丸名物のどら焼きは小麦粉がメインですから、その昔は新しい試みだったのかもしれません。
さて、今回のテーマは「最中」です。最中の皮は何でできているのかご存知でしょうか。小麦粉でしょうか、もち米でしょうか。答えはもち米です。だからこそ食感に粘り気があり、食べた後にお腹にたまる満足感があるというわけですね。
今回、岡山県津山市を訪れた時に久しぶりに最中を買い求めました。たくさんの名物が並ぶ中、上品な包装に惹かれ選んだのは、大文字本舗の『美作守(くにまもり)』と『十萬石(じゅうまんごく)』です。
『美作守(くにまもり)』というのは、最中の皮の意匠が三葉葵で美しいです。最中はこういった意匠が楽しみですね。家紋をかたどったり、季節の風物をうつしたり。こういった型を作る職人さんが昔からきっといらしたんでしょうね。
茜丸でも梅の形の最中の皮が売られているんですよ。形の美しさと香ばしさが特長で、お好きなあんこをつめて楽しみたい方が時々買い求めに来られます。
話を戻して、『美作守(くにまもり)』は三葉葵のご紋にヒントを得てか、「つぶあん」、「抹茶あん」、「柚子白あん」の三種のあんこが入っています。あんこ好きにはたまりません! 柚子白あんは柚子が効いていて、抹茶あんの抹茶は爽やか、つぶあんも甘さ控え目でした。思わず一気に2個食べました。
もう一つは『十萬石(じゅうまんごく)』です。こしあん好きなので選んだのですが、今更ながら、外側の薄い皮は最中と同じくもち米でできている、つまり、最中の変形版と知ったのでした。色を焼き色の茶色でなく白やピンクにし、形を円形にするだけでこんなにもイメージが変わるのですね。
正確に平らに置かれたこしあんは、柔らかな餅で包まれているためかアッサリした味わい。へりに丁寧に塗された「氷餅(こおりもち)」の美しさに感心しました。ちなみに、氷餅は餅を水に浸して凍らせたものを寒風にさらして乾燥させた保存食だそうです。練り切りでは花の上に降り積もった雪を表現するのに使われます。
津山城主から名を頂いたという『十萬石』は、大文字本舗の代表銘菓だけあって本当においしゅうございました。
様々な和菓子を改めて目にするようになって思うのは、そのアイデアの豊かさです。元々の材料はあんこや米ですが、固めたり、挟んだり、時には焼いたりもして、新しいお菓子を生み出してきたのです。
果物をふんだんに使う洋菓子はバラエティーに富んでいて華やかで、見ていてとても楽しいですが、昔からあり今も残る様々な和菓子を見ていると、少ない材料で工夫をし、多種多様なお菓子を考え出した先人たちの気概が感じられます。
今、生まれている和洋菓子も後々の人にはどう見られるのでしょうか。きっと、美味しいものへの飽くなき追求心に感心してもらえるのではと思うのですが。そんなこんなをその土地土地の銘菓を食べながら考えるのでした。