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AbemaTIMES

余命2年の宣告を受けた主婦が語る「がんと闘わない」生き方

2017.02.21 05:00

 今やがんは、日本人の2人に1人がかかるといわれている病気。もし自分自身や身近な人ががんに侵されたら…。そう考えた時、手術や抗がん剤による治療が頭に浮かぶ人も多いかもしれない。だが、主婦の吉野実香さん(53)が選んだのは、あえてがんと闘わない生き方だった。2月20日に放送された若者向け総合情報番組『原宿アベニュー』(AbemaTV)では、実香さんとその家族に取材を実施。それぞれが抱える想いに迫った。

 「そのままの寿命を全うしたいと思ったんです」と語る実香さん。余命2年と宣告されてから7年が経過した現在も、実香さんは家族と共に、変わらない日常を送っている。

 1987年に夫の哲末さんと結婚し、翌年には長男が誕生。幸せな家庭を築いていた実香さんだったが、その体に異変が起きたのは、結婚して15年が過ぎたころだった。今までに味わったことのない突き上げてくるような痛みを覚え、夜も眠ることができない。実は実香さん、30代半ばから右胸にしこりを感じていたが、仕事の忙しさから見て見ぬふりをしていた。病院へ行ったのは、痛みだけでなく出血や膿の症状が出るほど、しこりが悪化してからのことだったという。


 医師から告げられた病名は、乳がん。その時すでにリンパまで転移しており、すぐに手術をしなければ余命2年、進行具合はステージ3と宣告された。手術をしても、完治するかわからないという状態だったという。 家族とも相談し、一度は手術を受けることになっていた実香さん。だが、告知を受けてから2日後に医師から電話があり、腫瘍が大きすぎて手術ができないため、抗がん剤で小さくしてから手術することを提案された。実香さんは「受話器を下ろした瞬間、止めておこうと思った」と当時の心境を振り返る。


「息子が長いこと入院していたことがあり、付き添っていた時に病気の人たちをずっと見てきたんです。自分がもしそういう状況になったら、(寿命を)全うしたいかなと思った。一生懸命頑張っている人に申し訳ないけれど、私はどうしたいんだろうと思った時に、副作用で毛が抜けて、嘔吐して、苦しい思いして、家族に迷惑をかけて。それはいややと思いました」

 現在、夫の哲末さんと長男は、治療をしないという選択をした実香さんを支えているが、初めからすんなりと受け入れられたわけではない。「全く理解できなかったです。ある意味自殺みたいなものじゃないですか、治療しないってことは」と哲末さん。長男は「僕はまだお母さんが必要なんや。自分だけの命やと思ってるわけ」と激怒し、泣きじゃくった。そんな長男に実香さんは「わかってるよ。でもこれ、お母さんの人生やんか」と言葉をかけた。その後、長男はひたすら涙を流し続けるだけだったという。

 病院ではがんの進行具合だけを診てもらい、痛み止めの薬を服用する。その生活は、決して楽なものではない。実香さんは「お風呂に入ろうとして服を脱いだ時、しこりが割れて、数カ所から血がピューッと飛んだんですよ。それがほぼ毎日あった時がありました」と生々しい現実を語る。 そんな日々の中で、実香さんと哲末さんの楽しみは、週に1度のスーパーへの買い出し。実香さんは体調が悪い時を除き、食事内容の制限はせず、哲末さんと同じものを食べている。一見どこにでもある、ごく普通の夫婦の日常。だが、そこには取材中も急に気分が悪くなり、ソファで横になる実香さんの姿があった。


 「家内を見てきて思うことは、治療しなかったからこそ今があるのかもしれないということ」と哲末さん。「治療=がんを攻撃することが闘いみたいになっているけど、そうじゃないことも1つの闘いじゃないかなと思っているので。家内は十分闘っていると思っています」と想いを明かした。

 最後に実香さんは、視聴者に向かってこう語りかけた。「助かりたいから無治療にしたわけじゃないので、そこは誤解なくとって欲しいなと思う。治療するにしてもしないにしても、自分で決めてほしいなって思います。治療するのが良い、悪いではなく、どう生きたいか、どう人生を閉じたいか。その人が1番後悔しない選択をしてほしいから、家族もそれを支えてあげてほしいと思う」

 なお、乳がんの治療技術は、近年目覚ましく進化している。虎の門病院 乳腺・内分泌外科の田村宜子医師は「乳がんの治療はもの凄く開発が進んでいて、がんの治療の中ではトップランナーに近いんです。俗にいう抗がん剤ではなくても、がんを制御することができるような時代になってきています」と話す。だが、がんの進行具合によっては、抗がん剤が必要な場合もあるという。


 乳がんは日本人女性が発症するがんの中で最も多く、生涯に乳がんを患う日本人女性は12人に1人といわれている。自分や身近な人ががんを患った時、どのように向き合うのか。他人事ではなく、この機会にじっくりと考えてみてはいかがだろうか。

(c)AbemaTV

『原宿アベニュー』は毎週月〜金曜日 18:30〜20:00「AbemaNews」チャンネルにて放送中