【レビュー①】第45回直方谷尾美術館室内楽定期演奏会
この演奏会の実施にあたり、私には願いがありました。
出演のチェリスト、市寛也さんの個性は、一言でいえば、質実剛健。
華々しいソリスト的ではなく、むしろ弦楽四重奏などで本領を発揮するものでしょう。
それでいいと思います。
なぜなら、カザルスはこう言っています。
「人はめいめいに違うのであって、めいめいがその天性の深い熱情と衝動とを自己の仕事に注ぐべきだね。」と。
※引用:「カザルスとの対話」J.M.コレドール著 佐藤良雄訳
この演奏会を、市さんの個性を特化したものに仕立て、さらには市さんを大きく育成・発展させるものにしたい、企画立ち上げの時にそう考えたのです。
そのためにも、プログラム構成はおざなりのものではなく、市さんが心の底から、挑みたいものではなくてなりません。
ダメ出しに近い、数度のキャッチボールを経て、今回の3曲、ストラヴィンスキー、ブリテン、プロコフィエフを提案していただきました。
このような理由から、バッハの無伴奏チェロ組曲も、ベートーヴェンのソナタも組まない構成となったのです。
そして、当日リハーサル。
一聴して、私の思惑通りに、一際大きな成長を確認できたのです。
さらに、この硬派な曲たちに、オーディエンスから大きな共鳴の空気が生まれたのは、市さんの熱意であり、入江一雄さんの素晴らしいサポートによります。
拙いながら、私も解説執筆で、その一助となるように努めました。
終演後、市さんを煽ること再び。
市さんは、弦楽四重奏をやりたいと願っています
第1ヴァイオリンに良きパートナーがいるそうですが、内声二人が見つからないそうです。
しかし、弦楽四重奏団は基礎建築に10年、熟成に20年かかると言われていますから、スタートするには市さんの年齢はギリギリのところ。
まずはやってみることであり、やりながら、家族=四重奏のパートナーになることを進言したのでした。
さらに、岸邉百百雄さんが1975年に福岡市で弦楽四重奏を始めた時、メンバーを選べる環境ではなかったことも加えました。
次は、市さんが弦楽四重奏を始めた時、来演してほしいです。
次回は当夜のアンケートを紹介いたします。