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タカユキの三日坊主ブログ

東浩紀の『クォンタム・ファミリーズ』を読んで

2017.02.17 06:33

まず、クォンタム(Quantum)とはどういう意味だろうか?

タイトルの意味もわからないで読み進めるのもおかしな話なので、まず調べてみた。


クォンタム(Quantum)には複数の意味があるようだ。

とりあえず読み進めてみたい。


どうやら、主人公のモデルは作者である東浩紀であるようだ。


主人公は元々小説家で、妻はその編集者である。

だが小説はまったく売れず、生活のために大学に勤めることとなった。

そんなある日のこと。


それは娘からメールだった。
ぼくには娘などいなかった。
にもかかわらず、差出人は、自分がぼくの娘だと、しかも2005年の年末に、つまり一年半前ひ生まれたばかりの娘だと主張していた。
手紙の最後には、友梨花とふたりで生み出せるかもしれなかった娘のために、ぼくがかつて自己満足で定めた名前が記されていた。


だんだん、タイトルの『クォンタム・ファミリーズ』の意味が理解できてきた。

ここでのクォンタムは量子を指している。

そしてこのメールは平行世界の娘から送られてきたメールなのである。


主人公は過去を悔いている。

それは、自分の仕事であったり、妻との関係であったり、子供が居ないことであったりする。

そして、『もし、あの時、ああしていたら』といった『if』を考えていくうちに、心のバランスを崩していくことになる。


このようなことは、この主人公に限った話でなく、誰にも起こりうることであるように思える。

人間は人生の中で様々な判断を下し、その判断がその後の人生を大きく変えていく。

そして、人間は過去を振り返り、『if』を想像せざるを得ない。


この『クォンタム・ファミリーズ』という小説は、作者である東浩紀が、自分の平行世界の人生を描いたものであるようにも思えた。

だからこそ、この小説はいわゆるSF系統でありながら妙なリアリティを持っている。


この小説には読み手に対していくつかの問い掛けをしてるようにも思えた。

それは、『人生の幸せとは何か?』ということである。

主人公の人生は様々な形で分岐していくことになり、複雑である。

小説内での分岐を分かりやすく描かれている図を見つけたので、リンクを張りたいと思う。

有志に感謝。

これでいう『もともとの世界オリジナル版』(平行世界の娘からメールが来ず、そのまま進行する世界)の主人公は、幸せだったとは言い難いだろう。

仕事に没頭し、妻との関係は崩壊し、後に離婚し、自殺することとなる人生を幸せだと言う人はほとんど居ないと思う。


それに対比する形で描かれるのが、妻との間に子供ができた『並行世界オリジナル版』である。

妻との関係は良好で、1人の娘をもうけている。

とある事情でこの世界に転送されることとなった主人公は幸せを感じていた。

しかし、この物語の中で、娘は、主人公の本当の娘ではないことが示唆されている。


母親が、自分の子供が本当に自分の子供なのか?という疑念を抱くことはほとんどないと思う。

病院内で取り違え事故でも起こらない限りは、母親にとって自分の子供は自分の子供で、血が繋がっている確証もある。

しかし、父親の立場からするとどうだろうか?

自分の子供は、本当に自分の子供なのだろうか?

妻を愛していて、妻もまた自分を愛していたとしても、このような疑念を完全に払拭することはできないのではないだろうか?

だが、そのような疑念を持っていても、父親は父親として生きていくしかないのである。


この並行世界の主人公が、前の世界の主人公より幸せな人生を送っているのは間違いない。

人間は何のために生き、死んでいくのだろうか?

楽しく生きるため?子孫を残すため?人類に貢献するため?

この2つの平行世界の対比は、そういった問い掛けを読者にしてるように思えてならなかった。


ところで、平行世界を題材にした日本の作品は多いように思える。

それはなぜだろうか?

その理由の1つに、日本独特の『ゲーム文化』があると思う。

このブログを読んでいる人は、エロゲー、もしくはギャルゲーをプレイしたことがあるだろうか?

未経験者のために簡単な説明をすると、そういったゲームにはところどころに選択肢が存在する。それはどうでもいい選択肢であったり、その後の展開を大きく左右する選択肢であったりする。

そして、選んだ選択肢によってシナリオは分岐し、様々なエンディングを迎えることになる。


平行世界や分岐を描いて大ヒットした作品の1つに、『オールユーニードイズキル』がある。

『オールユーニードイズキル』はライトノベルとして大ヒットし、ハリウッド映画化までした。主演はトム・クルーズである。

この本の著者は、この作品があるゲームの影響を受けていると言っている。

2000年にPSで発売されたゲーム『高機動幻想ガンパレード・マーチ』である。

『高機動幻想ガンパレード・マーチ』は戦略シミュレーションの形をとりながら、一種のギャルゲー的な要素をも兼ね備えていたゲームである。


まあつまり何が言いたいかというと、マルチエンディング、平行世界といった概念を元に作られたゲームは様々な人間に影響を与え、また様々な創作がなされているということである。


実際、この『クォンタム・ファミリーズ』もまた、様々なゲームや小説の影響を受けて作られている。

登場人物の名前はKey(エロゲーメーカー)の登場人物を文字っているし、内容も同社のCLANNADに似ている。そのことは東浩紀自身も公言している。


主人公の家族構成は著者自身のそれをなぞって設定されているが[4]、主要登場人物の名前「往人」「風子」「理樹」「渚」などはKey制作の美少女ゲーム『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』の各登場人物から取られている[5]。主人公の妻「大島友梨花」の名は漫画家の「大島弓子」と同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』の登場人物「古手梨花」(およびSFアニメ『機動戦艦ナデシコ』のヒロインの名「ミスマル・ユリカ」)を組み合わせたものである[6]。


平行世界や分岐を描いた作品というと、他には『マブラヴ』や『ひぐらしのなく頃に』や『シュタインズゲート』などがあるだろうか。


この『クォンタム・ファミリーズ』は第23回三島由紀夫賞を受賞している。

いわゆる日本のオタク文化の発展なくして、この作品はありえなかったであろう。

このブログを読んで興味を持った人は、『クォンタム・ファミリーズ』を読むだけでなく、ぜひ、そういったオタク文化の源流にも触れてみてもらいたい。


平行世界について考えることは、面白い。