木川南小校長への処分に抗議します
大阪市木川南小学校長に対する「文書訓告」に抗議し、撤回を求めます
私たちは主に奈良県北部及び京都府南部の小中高校生たちを対象に教育支援活動を中心に行っている特定非営利活動法人であり、同時に長年にわたって学校現場で勤務してきた経歴を持つ者が中心になって活動している市民団体です。したがって、学校現場の通常業務が多様・多忙化していることに加えて、次々と行われるトップダウンの「教育行政」によって教職員が疲弊・混乱している様は理解しているつもりです。また学校現場の教員が教育について語る気力さえも失っていることに、大きな危惧を抱いている者のひとりです。
そのような中で、木川南小学校校長が「大阪市教育行政への提言 豊かな学校文化を取り戻し、学びあう学校にするために」(以後「提言」)を発したことを知り、その内容を読みました。そしてこの「提言」が本来の学校が持つ自由で豊かな教育活動を保障することに向けて、現状に一石を投じ、今後の教育行政の方向性を検討する機会になればと期待して注視しておりました。
ところが、大阪市教委は8月20日「提言」を発した大阪市木川南小学校の久保敬校長への「文書訓告」を行ったことをニュースで知り、驚愕しました。
教育委員会は行政委員会の一つとして首長から独立して、中立的・専門的な行政運営を担当し、首長への権限の集中を防止する役割も果たしています。個人的な価値判断や特定の党派的影響力から中立性を確保すべきなのはいうまでもありません。
そもそも教育は、子どもたちの健全育成のため、安定的でなければなりません。また結果が出るまで時間がかかるもので、その結果も把握しにくい特性がありますから、学校運営の方針変更などの改革・改善は漸進的なものであるべきです。「提言」が指摘しているように、人的・物的な準備が不十分なままに性急に改革をすすめようとすれば、現場が混乱をきたすのは当然です。
また教育の分野は、地域住民にとって身近で関心の高い分野であり、専門家だけでなく地域住民の意向を踏まえて行われることが必要です。今回の「提言」には私たちも含め、多くの団体・個人またマスコミからも賛同や支援の声が挙がり、大阪市教委にもすでに届いているはずです。よって、「提言」が出されたあとの市教委の対応は、今後において学校現場や市民からの行政への批判的な意見が受け入れられるか、少なくとも顧みようとする姿勢がみられるかが注目されていました。
そのような中での「文書訓告」であり、その理由が「今回の提言については、他校の状況等を斟酌せず、独自の意見だけをもって本市の学校現場全体がそうだと断じるなどの内容となっており、」というのですから、私たちは驚愕と同時に失望しました。他の「状況等を斟酌せず」に「断じ」ているのはどちらの方かと。
教育の場は自由と民主主義と人権擁護の砦でなければならないと私たちは考えています。学校では、子どもたちに対して困ったことを困ったと言える、つらいことをつらいと言える、そしておかしいことをおかしいと言える場であろうとして、子どもたちに指導しているはずです。その大人である教職員が、堂々と批判をしたことに対して処分をするということは、教職員を恫喝し、子どもたちを委縮させることにつながります。
行政の信用が失墜しているとすれば、その責任は、子ども・保護者・学校現場の本音や地域の声を十分に聴いているといえない行政と、現場の状況は知りながらもトップダウンに異論 反論 批判もできず追従している教育委員会にこそあると私たちは考えます。ましてや、批判的主張をすること自体を封殺することにつながる今回の「文書訓告」処分という暴挙を、私たちは一市民として看過することはできません。
よって、私たちはここに木川南小学校校長への処分について強く抗議し、撤回を求めます。そして今回の「提言」をもう一度真摯に受けとめ、教育行政に生かす取り組みを望みます。トップダウンではないボトムアップの教育行政を。