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kana3histoire

桃にまつわるエトセトラ

2021.08.23 14:23

いただきものの、桃をむく。

実家の母が持たせてくれた桃。

親戚が桃農家なので、そこの桃を買ってくれたのだった。


フルーツライン、と地元で呼ばれる通りには、道の両脇に産直のくだもの販売所がぽつりぽつりと軒を連ねる。


看板には「もも」とか「なし」とか「ぶどう」と手書きの文字、その横にかわいらしい絵も描いてある。

なんだかおとぎばなしみたいなお店たち。


子どものころ、お盆参りに母の実家へ行くとき、母はかならず、この親戚のくだもの屋さんで桃やら梨を買っていったものだった。


お盆参り。わたしは白いジョーゼットに黒い水玉を散らした、3段重ねのワンピースを着せてもらってご機嫌だった。くるくるとまわると、スカートもふわふわと広がる、お気に入りのワンピース。


桃屋のおかみさんはひまわりのように明るくて、満面の笑みでわたしたちを迎えてくれた。

お店の外では水道が出しっぱなしになっていて、よく冷えた水の中に、つめたくなっている桃がいくつも浸されていた。

おかみさんはいつもわたしたちにその桃を剥いてくれた。

ちいさな包丁で、魔法のようにするすると剥かれる桃。それは真夏にもかかわらずとってもつめたくて、とびきりおいしかった。


そのお店にはなぜかカップヌードルの自販機があって、わたしはいつも母にねだってカップヌードルを買ってもらうのだった。

プラスチックのちいさなフォークで、きょうだい三人で分け合ってたべた。コカコーラ、と書かれてある真っ赤なベンチに仲良く座って。


桃とカップヌードルを堪能したわたしたちは、それからいとこの家へお盆参りに向かうのだ。

車の中には、うすグリーンのビニール袋にたくさんの桃と梨があまい香りを放っていた。


桃を剥くたびに、あの夏の日々が蘇る。

ミンミン蝉の声、よそゆきのワンピース。

まだ若い母、真っ赤な軽自動車。


わたしの大切な、夏のおもいで。