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ホームドアの今後

2021.08.28 01:00

1.はじめに

 みなさんこんにちは。今回もよろしくお願いします。

 さて今回は、最近国土交通省が設置計画をまとめ、導入が進んでいる「ホームドア」について取り上げていきたいと思います。ホームドアは現在までさまざまな種類のものが開発されていますが、それぞれのメリット、デメリット、また今後ホームドアはどうあるべきかについて考えていきたいと思います。最後までよろしくお願いします。

2.ホームドアの定義・導入計画

 ホームドアとは、ホームからの転落や列車との接触を防止するため、ホームと線路を仕切るドアのことです。列車のドアに合わせてホームドアが開閉します。

 近年では、国土交通省が2016年12月22日に、「1日10万人以上利用する駅は原則2020年度までに設置」することを決定したほか、各社がホームドアの設置計画をまとめるなど、導入が進んでいます。

▲ホームドアが設置されている宮前平駅。田園都市線でも設置・整備が加速している

 関東のJRや大手私鉄を中心にホームドア整備目標を掲げる鉄道会社が増えています。下の表を見てみると、東京メトロや相模鉄道などそれぞれの鉄道会社の全駅へのホームドア整備目標を発表する鉄道会社も出てきています。


 国土交通省は、平成28年12月22日に、「駅ホームにおける安全性向上のための検討委員会中間とりまとめ」を発表し、ホームドアの整備目標や、設置すべき駅について具体的な決定がされました。以下はその抜粋です。

3.駅ホームにおける更なる安全性向上に向けた対策
(1)ハード面での対策
①ホームドアの整備 【具体的措置】
 ・10万人以上の駅について、以下の通りホームドアの整備を進める。
 (ア)車両の扉位置が一定している、ホーム幅を確保できる等の整備条件を満たしている場合、原則として平成32年度までに整備する。

(ウ)駅の改良を実施中または予定している駅については、完了時に上記に準ずる。

 ・引き続き、10万人以上の駅を優先してホームドアの整備を進めていくこととし、10万人未満の駅については、駅の状況等を勘案したうえで、10万人以上の駅と同程度に優先的な整備が必要と認められる場合には、整備を行う。


 

 平成18年12月20日に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」にホームドアの設置基準が盛り込まれたことにより鉄道各社で設置が加速し、最近の10年で300駅以上設置駅が増えています。

 近年は、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開かれることで利用客が増加する駅が増える可能性があることや、視覚障碍者などの転落事故が起きていることから、2020年度までにこれまでの計画よりも100駅弱多い882駅で設置する計画を決定しました。

▽ホームドアの設置駅数の推移(国土交通省より)


3.ホームドアの種類

 ここからは、現在主に関東に設置されているホームドアの種類を見ていきたいと思います。

(1)可動式ホーム柵

▲ホームドア閉時

▲ホームドア開時

 最も一般的なホームドアで、開業当初からこのホームドアを導入する路線も多く存在します。高さが腰上ほどまでしかないので、不注意による転落事故は防げますが、自殺は完全に防ぐことはできません。

 また、ホームドアが重いため、設置する際にはホームへの補強工事が必要になってくる場合があり、着工から稼働開始まである程度時間がかかることもあります。

 さらに、開口部が狭いため、停止位置の大きなズレに対応できないので、TASC(定位置停車装置)などの導入が必要になる場合があります。

(2)昇降式ホーム柵

▲ホームドア閉時

▲ホームドア開時

 ホームドアに設置されたバーが昇降するタイプのホームドアです。開口部が広いため、ドア位置が違う車両が走っている路線(主に特急が走っている路線)でも導入でき、ある程度の停止位置のズレにも対応することができます。

 また、比較的軽いタイプが多いため、可動式ホーム柵のようにホーム補強に高額投資が必要にならず、コストを安く抑えることができます。

 しかし、主に視覚障碍者にとっては、開口部が広いことが災いし、ドア位置を探すのに時間がかかる事態にもなっています。

 その上、写真のようなタイプだと、可動式ホーム柵に比べて外側に出やすくなるため、事故対策としての効果はそれに比べて低くなります。

(3)フルスクリーンホームドア

▲ホームドア閉時

▲ホームドア開時

 駅の天井までを完全に覆うタイプです。車両とホームを完全に隔離することで、転落事故対策や人身事故対策としての効果はもっとも大きくなります。

 ただ、設置費用は3つのホームドアの中では最も高額で、現在ある駅に設置するには大規模な改修工事が必要になるため、設置されている駅は路線開業と同時に設置されたケースがほとんどです。

※固定式ホーム柵

▲側面から

 固定式ホーム柵は、ホーム上に固定してある可動しないタイプの柵です。ホームドアのような機械ではないので、ホームドアと比べると格段にコストが下がります。

 また重量も軽いので、補強工事がほとんど必要なく、多くの駅に設置できます。ただ、列車のドア部分に柵がないので、ホームと線路が完全に隔てられないため、完全な転落事故対策とは言い難く、効果は比較的低いです。

4.ホームドアそのものの問題点

 ここからは、ホームドアそのものの問題点について考えていきたいと思います。

(1)停車時間の増大・駅/列車の混雑

 ホームドアを設置すると、これまでの車両のドア開閉にかかる時間に加えてホームドアのドア開閉にかかる時間が加わり、またドア挟まりなどの安全確認にもより時間を要するので駅停車時間が増大します。そのため、各駅間の所要時間の増大にもつながります。東京メトロは、東西線で全駅にホームドアが設置された場合、「1駅あたり5秒、全体で3分ほど」所要時間が延びると予想しています。

 また駅で停車する時間が延びると、列車の間隔をある程度開けなくてはいけなくなるので、運行本数の減少にもつながり、特にラッシュ時には減便により、駅での混雑や1列車ごとの混雑が増大することも考えられます。

(2)設置費用

 多くの鉄道会社でホームドアの設置が進まない理由の一つに、「ホームドアの設置費用が高い」ということが挙げられます。ホームドア自体の費用に加え、ホームドアを設置するためにホームの補強工事が必要となるケースがあるからです。

 現在可動式ホーム柵が設置されている山手線の場合、1駅あたり平均20億円の工事費がかかっていて、鉄道会社も積極的にホームドアの設置を進められないと考えられます。

(3)安全確認がしにくくなる

 ホームドアが設置されると、ホームドアと車両のドアとの間を車掌・運転士の目視で確認することが未設置の場合よりも難しくなり、ドア挟まり等の事象も見逃してしまう危険性があります。

 例として全駅に可動式ホーム柵が設置されているつくばエクスプレスでは、昨年度はドアに荷物を挟んだまま走行する事象が2016年度で22件発生しています。これはホームドアがドアの前を覆うため、モニターでドア挟まりが見つけにくいということが原因だと思われます。

(4)ドア位置の違い

 これは現在多数派の可動式ホーム柵を設置する際に問題になることですが、設置するホームにドア数の異なる車両が停車した場合、ホームドアがそれに対応できません。

 例えば、大阪~篠山口間のJR宝塚線は、207系や321系の4ドア、223系や225系の3ドア、287系や289系の1~2ドアが混在しており、この路線にホームドアを導入する場合、現在主流の可動式ホームドアでは対応できません。これに対処するため、ホームドア製造会社が主体となって様々な新型ホームドアが研究・開発されています。

▼JR宝塚線(大阪~篠山口間)に乗り入れる列車でのドア位置比較

<ドア位置が異なる車両が混在しているため(一般的な)可動式ホーム柵の設置は難しい路線>

▽207系・321系


▽223系・225系

▽287系・289系

5.未来のホームドア

(1)大開口ホームドア

▲九段下駅に設置された大開口ホームドア

▲川口元郷駅に設置されたホームドア

 大開口ホームドアは、ドアの位置や幅が違う場合や、ある程度の停止位置のズレに対応できるように開発された新型ホームドアです。次の図のように、ホームドアをさらにドアの中に入れ込むことで、従来のタイプ(有楽町線のタイプだと最大2,480mm)よりも開口部の長さを広げることが可能(最大3,585mm)になりました。

 今後は、東京メトロ東西線の九段下駅や、JR京都線の総持寺駅などで導入される予定です。

▽大開口ホームドアが開くしくみ

①閉まった状態

②外側と内側のドアが同時に開く

③開いた状態


(2)スマートホームドア(コストカットホームドアの一種)

▲ホームドア閉時

▲ホームドア開時

 従来のホームドアよりもコストを抑えたホームドアとして、JR町田駅に2016年12月から導入されました。ドア部分にアルミ製のバーを採用するなどで、従来よりも約3割軽量化され、費用も約半分に抑えることが可能になりました。ホームを大規模に改修する必要がない上にホームドアとしての役割も果たすことから、今後の普及も期待されています。


6.今後のホームドアのあり方に対する提案

(1)朝ラッシュ時間帯のホームドア駅員操作

 ホームドア設置駅では、主に朝ラッシュ時間帯に乗客が滞留するなど安全確認に時間がかかり、しばしば列車の遅れにも影響を与えます。そこで、その時間帯だけホームドアは列車のドアと非連動にして、ドア閉時には、列車が発車した直後にドアを閉めると、ある程度遅延も抑制することができるのではないかと考えます。

 東急田園都市線の宮前平駅では、列車が発車してからドアを閉めています。この操作は宮前平駅の列車のドアとホームドアが離れているために行われている処置ですが、この操作をほかの駅でも実施することで、安全確認も素早く行うことができると考えました。

(2)ホームドアの広告媒体・情報案内としての利用

 ホームドアは、広告媒体としても適しています。列車の待ち時間に広告が正面に位置することになるので、視認性は高く、注目が集まる広告の一つともいえます。しかし、ホームドアが広告媒体として使われているのは東京23区内が中心で、横浜市は市営地下鉄のみでしか実施していません。 ホームドア広告は、鉄道会社にとって収益源の一部になるので、積極的なホームドアの広告媒体としての利用を提案します。

 また、2016年6月から、東急東横線の武蔵小杉駅などにデジタルサイネージがホームドアに搭載された「マルチメディアホームドア」を設置し、実証実験を開始しています。こちらは、ステッカー広告を掲出するときよりも初期コストはかかりますが、映像広告のほかに列車位置情報の案内などを表示することができ、さらなる利便性の向上を図ることも可能になります。


▲マルチメディアホームドアの広告画面

▲マルチメディアホームドアの全体図

7.おわりに

 みなさん、今回の研究はいかがでしたでしょうか。今回は最近設置駅の増加が目立つホームドアについて研究しました。主に転落事故防止のために設置されているので、今後も利用客が多い都市部を中心に設置駅は増えていくものと思われます。ただ、すべての駅において乗客の転落がないよう地方の駅にも(ホームドアを含めて)転落防止のための施策というものは積極的に打っていってほしいと思います。

 今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

8.参考文献・サイト

・国土交通省―駅ホームにおける安全性向上のための検討会

 http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr7_000015.html

・ホームドア設置駅数の推移

 http://www.mlit.go.jp/common/001195039.pdf

・東洋経済ONLINE―ホームドア「取り付け」は難しいわけではない

 http://toyokeizai.net/articles/-/192984

・東京新聞―TXでドア挟み事故多発 ホームドアと車両の間が死角に

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017062002000122.html

・毎日新聞―町田駅に新型ホームドア JR横浜線

 https://mainichi.jp/articles/20161217/k00/00m/040/114000c

・東急電鉄―デジタルサイネージ一体型のマルチメディアホームドアを共同開発

http://www.tokyu.co.jp/company/news/list/Pid=2437.html;jsessionid=F3D84312C5B3C5171EBD297D619ECC85

・東急電鉄―ぞくぞくと、ホームドア いい街 いい電車 プロジェクト

 http://ii.tokyu.co.jp/homedoor/

・JR東日本 http://www.jreast.co.jp/

・東京メトロ http://www.tokyometro.jp/index.html

・東武鉄道 http://www.tobu.co.jp/

・西武鉄道 https://www.seiburailway.jp/

・京急電鉄 http://www.keikyu.co.jp/

・京成電鉄 http://www.keisei.co.jp/

・相模鉄道 http://www.sotetsu.co.jp/

・小田急電鉄 http://www.odakyu.jp/

・京王電鉄 https://www.keio.co.jp/


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。