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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

仏王処刑24-「王殺し」フーシェ

2021.08.25 11:14

ルイ16世の死刑投票は、実は賛成票387票のうち、26票は国民投票で決めるという票だった。従って即死刑というのは361のギリギリ過半数である。ルイ弁護団は、このような重大判決を僅差で決めるのはおかしい、と主張したが、モンターニュ派が主導する国民公会はまるで聞く耳もたずだった。

しかも、議場にはモンターニュ派やサンキュロットが詰めかけ、議員には「反対すれば生きて出られると思うな!」という罵声があびせられた。この投票は一人一人が壇上で表明するので、誰が反対したかまるわかりなのである。ということで、イザとなって賛成した議員もままある。

穏健ジロンド派のコンドルセーやドーヌーは罵声の中でも反対と表明した。しかし頭目の一人ヴェルニオーは賛成と表明した。そんな状況で大勢はなかなか決まらない。ここで意見を変えて賛成と表明したのが、この後ナポレオン後まで権力の中心で生きるジョゼフ・フーシェである。

彼は翌日、まるで元から賛成だったとばかりに、パンフレットを発行した。そしてさっそくモンターニュ派に取り入って恐怖政治の手先となる。それからナポレオン政府で警察長官を務め、その後も生き延びる。冷静に勝ち馬に乗る姿はカメレオンと評されたが、生き残れば残るほど「王殺し」の名がつきまとった。