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#011 採集の暗黙のルールについて―ケナーシズ・ルースト

2021.08.27 01:58

 アズルと一緒に訪れた場所のなかで、ケナーシズ・ルーストは最も足を運んだ回数が多いかもしれない。この日は事情があって二日連続でここを散歩することになった。寝る前にちょっとだけ歩きたいという日や、戦いのあとにクールダウンが必要なときにちょうどいい場所なのだ。

 昔からよく言われることだが、僕はいつも落ち着きがない。どこを歩いていても、見たことのないものや拾って持ち返れそうなものを見つけるとすぐに走り寄ってしまう。とにかくじっとしていることが苦手で、常に手か足か頭(ときどき口)を動かしていないと気が済まないのだ。ではそれが許されない環境に置かれたときはどうするか? 答えはひとつだ。僕はその場で横になって寝る。睡眠は絶対に無駄になることのない素晴らしい活動だ。

 アズルはいつも落ち着きのない僕に最初は手を焼いていたようだが(二人で歩いている最中に彼はよく僕を突然見失っていたようだ)、最近は何も言わなくなった。誰かと継続的な関係を築いたことのない僕は、当然戦闘や旅以外では誰かと行動をともにすることがなかった。アズルのように忍耐強い人でなければ、きっとこの散歩の時間は相手にとって苦痛にしかならなかっただろう。そう考えると、声をかければ僕の旅に同行してくれるハートには感謝しかない。

 ここまで自分のことを書いたが、僕ほどではないもののアズルも何かを拾うことが好きなタイプだ。二人で歩いていて植物や鉱石などの素材を見つけたとき、僕たちのあいだには暗黙のルールがあるように思う。一度ミルがドゥルーワックスを15個ほどダメにして以来、僕は彼のためにシルクをかき集めている。それを知っていて、アズルはシルクを見つけると僕に教えてくれる。それからこれはかなり前からだが、アズルは宝箱をいつも僕に譲ってくれる。「荷物がいっぱいだから」と彼は言うが、多分それは彼のやさしさなのだろうと思う(しかし実際彼はたくさんの荷物を持ち歩いているようだ)。

 代わりにアズルはルベタイトやプラチナの鉱脈を掘ったり、倒木から素材を採ったりしている。僕たちはこれを始めるといつまでも歩き回ってしまう。ケナーシズ・ルーストは心なしかこうした素材も豊富なので、僕たちはただ目的もなくブラブラと海岸を歩きながら、何かを見つけては手に取り、そして時々並んで景色を眺め、ひと時の穏やかな時間を過ごすのだ。