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Baby教室シオ

絵本『うさぎとかめ』

2022.03.13 00:00

数ある『うさぎとかめ』の絵本の中で私の一番のお気に入りは童話館出版のこの作品です。2,3歳には難しい言語表現が随所にあるので5歳ぐらいからのスタートが良いかもしれません。この絵本は幼児期から成人までもいろいろな考え方を与えてくれる哲学的絵本だと感じご家庭の本棚に存在し世代を超えて読み繋いでほしい作品です。

童話は出版社違いの同じタイトルの作品を比較し分析をすることで見えてくるものがあります。年齢別に使い分けたり、視覚の情報となる美しい絵を採用しているものや文章表現が美しいと感じるもの、そして国語の学習的なもの、要点や価値観を押し付けているような内容のものなど絵本の良し悪しも見えてきます。

このように比較検討することも必要なのが童話の世界です。いろいろな選択肢を持ち切り口を変えて与えることはセンスが問われます。是非多くの同じタイトルの作品を読み比べをし保育者も思考を深めてほしいと思います。


足に自信のあるうさぎが森の動物たちに競争相手を募ります。すると皆さんご存知のかめが名乗りを上げます。多くの『うさぎとかめ』を読んできた子供はこのシーンで「かめは日頃からうさぎの様子を見ていて、うさぎが驕り高ぶる性格だと分かっていたと思う」などと発言を行う子もいます。どれだけ読み込んできたのかと驚く発言ですが、やはり多くの作品を幅広く読むということは子供の発する言葉も思考も発言さえも大人顔負けになるのは当然です。

この絵本を振り返ると我が子もその時々の年齢で絵本の趣旨をどう捉えるのか変化していました。幼児の頃は「うさぎはなまけものだね。でもかめはコツコツえないね。」と言い、小学生では『能力があっても油断をしてはいけない。多少能力が劣っていても努力をすれば必ず成果がでる。』と説き

中学生になればうさぎとかめの見る先(ゴール)が異なることを捉え自分自身に置き換えて『うさぎのように相手を見て惑わされず、かめのようにゴールを見据えて人知を尽くせ』と考えるようになり

そして高校生になると現実を見極める力が付き『本物の能力のあるうさぎは眠らないし努力を怠らない。中には眠った振りをしつつ実のところ計算尽くしの努力をするものもいる。いずれにせよ、自分より能力の高いうさぎは五万といる。場合によっては人の言葉を鵜呑みにするのではなく言葉の真意はどこにあるのか、時として言葉の裏を読むことも必要』と考えるようになる。

童話1冊を通して子供が成長するその時々で絵本に立ち返ることも必要だなと感じています。我が子は成人していますが帰郷する度に絵本がずらりと並ぶ部屋に入り、「懐かしい」と手に取り読み返して思い出を語ります。そんな姿を見ていると新たな発見をしているのか想像を膨らまし子供の姿ににんまりしてしまいます。

世間という大海原に漕ぎ出す子供に何を伝えるべきかを常に考えることも必要ですが、最終的にどう感じるかの決定権は子供に託すべきだと考えます。

『自分の人生をしっかりと見据えてどう生きるか、何のために自らを活かすのか、どのような貢献ができるのかを考えなさい。』などを絵本が示す哲学を得て人生を歩んで欲しいと常に願っています。

良い絵本というものはこのように読み手の年齢によって、オーバーな言い方ですが人生の分岐点で手にすることで深い学びが得られるものだと考えています。このような糧をあたえるのが童話であり、素敵な作品に出会うことが心の豊かさや思考の深さになり、人生を切り開く手助けになればと思います。書架にあるこの童話館出版の『うさぎとかめ』も我が家で読み継がれる作品だと考えています。