【第607回】西原尚(サウンドアーティスト)/「水の駅」まもなく開幕!
福岡の皆さん、こんにちは。
横浜でサウンドアーティストとして活動しています、西原尚と申します。
現在、福岡で沈黙劇『水の駅』の創作に携わり、滞在しています。
サウンドアーティストというと、聞きなじみのない方もいらっしゃるかもしれません。60年代からインターメディアというアート用語が聞かれるようになりましたが、枠組みとしてはそこに属していると思っています。美術と音楽の間のことを美術の分野でやっていて、音遊び・音そのものを楽しむといったことを表現活動としてやっています。現代音楽や現代美術というと難しく聞こえますが、僕が関心をもっていることは、誰もが持っている感じるチカラで遊ぶということです。
今回福岡で上演される『水の駅』公演では、特殊効果のスタッフとして、舞台上の水を担当しています。舞台上の水は、音響であり、照明であり、小道具です。メディアアートは様々なメディアの混合の美術形態なので、この舞台の稽古で水と格闘し続けていると、いつも考えていることと共通して感じることが多数あります。水音が響き、水の音色が変化し、それに役者やお客様が反応します。水が反射する光は、ときに眩しく輝き、ときに暗く淀みます。水に役者が触れるとき、舞台上から波が広がり世界がゆがむ感覚が伝わってきます。その空気はお客様をも包み込むことでしょう。また、水の量や響きは完全にコントロールすることは非常に難しく、実は、僕自身も水の変化に反応して動いています。役者とお客様、舞台の内外、物と人、時間と空間、劇場と世界、そういった区別が互いに呼応しあい、境界線があいまいになりながら、舞台が進行します。
前回の釜山公演時に水を担当したジョン・マンヨンさんは僕にとって兄貴のような人です。この福岡公演にはコロナの影響で来日できず、マンヨンさんから電話で代打を依頼されました。僕が釜山に滞在した時は、演出のキム・セイルさんのご友人と幾人も会っているようです。また、太田省吾さんの転形劇場で活動されていた俳優さんたちと一緒に公演を行ったりもしています。『水の駅』はビデオを見たことがあり、不思議なほど鮮明に記憶に残っています。こうして、なんだか、強い縁を感じております。
セリフが一切ない沈黙劇です。いろんな想像をしながら、俳優や空間とのコンタクトを取りながら、その過程を楽しみながら観劇されるでしょう。僕は水音を媒介に、舞台袖から楽しみたいと思います。ご来場お待ちしています。
西原尚
1976年生まれ。1998年東京外国語大学中途退学。2009年東京藝術大学音楽環境創造科卒業。2011年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。音の美術、パフォーマンス、録音、音楽制作、楽器制作、翻訳などの活動を続ける。
”沈黙劇”の傑作を福岡で上演!
『水の駅』
2021年9月
4日(土) 18:00
5日(日) 13:00
ももちパレス大ホール
(福岡県立ももち文化センター)
作 │
太田省吾
演出 │
金世一
出演 │
大恵彩乃 酒瀬川真世 進藤祐行 陣内幸史郎 鈴木みらの
竹内真菜 坪内陽子 戸澤真治 富田文子 濱吉清太朗
ひらな唯夏 福田剛昌 福地涼 本家徳久 松永壇
丸林孝太郎 宮本秀明 山下晶 山本由貴 吉田智惠
チケット │
一般前売:3,500円
U22前売:2,500円
(当日券各500円増)
取り扱い │
ローソンチケット(Lコード:82443)
水の駅HP │
https://www.mizunoeki.online/
お問い合わせ │
アートマネージメントセンター福岡
TEL:070-3258-4941
MAIL:mizunoeki.fuk@gmail.com