花束みたいな恋をした サブカル男女は現実に負けずに好きなこととやりたいことと恋を貫けるか
大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然出会う。
音楽や映画の趣味がほぼ一緒で、映画の半券を栞にする癖など意気投合した二人は瞬く間に恋に落ち、大学卒業後フリーターをしながら同棲を始める。
「好きなものは、押井守と今村夏子」
「やりたくないことはやらなくていい」
お気に入りのベーカリーを見つけ、猫を拾い二人で名前をつけ、好きな漫画や映画や本の話をして好きなことややりたいことのために麦はイラストの請負の仕事を、絹はアイスクリーム店でバイトしながら同棲を続ける。
だが、イラストの請負の単価が下がり始めて生活が厳しくなってくると現実の壁が、二人の前に立ちはだかる。
麦が、生活の安定の為に正社員の仕事を探し始めて、渋谷のパルコが閉店し、長年続いた番組が最終回を迎えても、二人は日々の現状維持を目標に就職活動を続ける。
なんとか正社員の仕事を見つけるが、営業の仕事で心身共にすり減らす麦と「仕事は好きなことをやる為のもの」と割り切って趣味に割く時間を忘れない絹との間で、少しずつズレが生じていく。
脚本家・坂元裕二が、今を生きるすべての人へ贈るため書き下ろした最新作。
好きな小説家や映画や漫画がほぼ同じことから意気投合した大学生の麦と絹は、「安定した仕事につくのが大人」という両親に逆らうように、麦は好きなイラストを、絹は好きな映画の知識を活かせる仕事を探しながらバイトするが、イラストの請負の単価が下がり始めて生活が厳しくなって、麦が営業の仕事で心身共にすり減らして息抜きに漫画や本を読もうとしても頭に入らなかったり、絹と行く約束をした演劇より仕事を優先しようとしたりなど、「やりたいことをやっていく」ために同棲を始めたのに、生活を成り立たせる為の仕事が優先になって好きだった漫画や本や映画の話をしなくなって心が通わなくなっていく二人のズレが生じて価値観がすれ違っていく変化が、絹が「仕事の合間に読んで」と渡した本が麦のサイドテーブルに無造作に積まれていたり、麦がイヤフォンして仕事している時に絹がゲームやっていたりなど丁寧にリアル感ある描写で描かれるので、好きな漫画や音楽や小説や映画などサブカルで繋がっているカップルがどのように現実の壁に価値観のズレが大きくなるかがドキュメンタリーのように目の当たりにする感じで、共通の趣味で意気投合した二人が少しずつ惹かれ合う前半の恋愛描写の甘さが青春している感が満載なので、余計にほろ苦い。
あるあるを絶妙な例えで描く坂元裕二だけに、イヤフォンの話や絹が就職活動で圧迫面接されて麦が言ったセリフが後にブーメランのように絹が麦に言われるなど、絶妙な会話が台詞と掛け合いの練り込みが上手い。
サブカル男女が見ると怖くて切ないけど、サブカル男女は必見の傑作恋愛映画。
P.S
劇中でディスられてる感じの「ショーシャンクのの空に」は、私的には良い映画だし、王道の映画もちゃんと楽しめる素直さを持つサブカル男子でいたい。